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第4章:新たな日々
第136話:新たな日々
「コトハ様、こっちの木にも設置完了しました」
「コトハ様、反対側50メートルの場所にも設置完了しました」
「オッケー。それじゃあ、次のポイントに向かおうか」
「「「はっ!」」」
私は今、領都ガーンドラバルから西へ15キロほどの場所にいる。一緒にいるのは、移住者が増え騎士も増えたことで、騎士25名と騎士ゴーレム50体を配下に持つクルセイル大公領騎士団第1小隊の小隊長のジョナス、そして騎士2名と騎士ゴーレム4体とレーベルにリンだ。
カイトとポーラをバイズ公爵領の領都ガッドへ送り出してから数ヶ月、最初に仕官した騎士やその家族に加えて、数回にわたって騎士やその家族が移住してきた。カイトたちを送りに行ったときに、レーノやジョナスといった最初の移住組から話を聞いたバイズ公爵領の騎士団員の一部が移住を希望したのだ。
本来は騎士という貴重な人員を引き抜くようなことは慎むべきだろう。しかし、クルセイル大公領ができてクライスの大森林関連の魔獣対策の担当が、バイズ公爵領から我が領へ移り、バイズ公爵領は過剰戦力となった騎士を持て余していた。加えてバイズ公爵領は、カーラルド王国唯一の公爵領として、経済拠点としての発展を目指している。そのため、これまで魔獣対策のために多くを割り当てていた予算の見直しを検討していた。そうした理由で、騎士の削減が本格的に検討されていた。
そんな状況の中で、騎士団に属する騎士約20名が移住を希望したので了承されたのだ。
現在のクルセイル大公領騎士団は、マーカスを騎士団長として騎士団を第1小隊、第2小隊に分けている。各小隊には騎士が25名、騎士ゴーレムが50体配属されている。騎士と騎士ゴーレムは基本的に、騎士1人騎士ゴーレム2体を1組 —騎士隊と呼んでいる— の単位で動いている。今は、2つの騎士隊が一緒にいる。
貴族になることを承諾したときは名誉職的に貴族位を受けただけで、領主になるつもりはなかった。領民を受け入れる予定も無かったのだが、気づけば騎士50名とその家族100名ほどを合わせた150名ほどの領民を抱えている。
まあ曖昧な態度をしていた私に責任があるのだし、今の生活はとても楽しい。騎士と一緒に狩りをしたり、レーノが騎士の家族に割り当てた仕事を視察したり手伝ったり、楽しい日々を送っている。そんな私の責任は、領民を守ることだ。今やっている作業も、その1つだ。
今設置しているのは、魔獣や人型種が前を通ると反応するゴーレムだ。命令式として書き込んであるのはそれだけ。ゴーレムには魔力を感知する能力があることが分かったので、落ち葉や倒木に誤反応しないように、「魔力を持つ生命体が前を通った場合に合図を出せ」という命令式が書き込んである。一応、知っている限りの魔獣をイメージして、魔獣とそれ以外とを分けて反応するようにしてある。
このゴーレムの重要な部分は合図を出す相手だ。目の前を魔獣らが通ったのでその場で反応して動いてみても何の意味も無い。このゴーレムにやらせたいのは、警戒網の構築だ。試行錯誤の結果、魔石に命令式を書き込む際に、2つ以上の魔石に魔力が直列に流れるようにすることで、魔力を流した魔石が連動することが分かった。
魔石を連動させると空気中の魔素が媒介し、離れた場所にある魔石同士が連絡を取り合うことができる。つまり、森の中に設置したゴーレムが領都へ接近するものに気づいたとき、領都の騎士団本部に設置してある相方のゴーレムがその反応を受け取って、騎士たちに敵襲の合図を出すことができるのだ。
ゴーレムの構造はできるだけ単純化している。森の中に設置する方のゴーレムは、接近するものに気づければいいので、鉤爪のような形状で木の上に設置できるようにしてある。大きさも両手で簡単に持ち上げられる程度だ。騎士団の本部に設置してあるゴーレムも単純で箱形の本体の中に魔石を設置し、2本の棒を両サイドに付けてある。魔獣が通れば右の棒を、それ以外なら左の棒を上に上げる。
このペアをたくさん作って、領都の周囲に設置している。領都の周辺のどの辺に設置したかを記録してあるので、騎士団の本部にあるゴーレムの棒が上がったのを確認して、迎撃態勢に入るのだ。
騎士団の取り決めとしては、領都から500メートル以内の場所に魔獣が出現すれば対応する。それより遠い場合は様子見となる。一方でその他の棒が上がった場合。この場合は未知の魔獣の可能性が高いが、森に迷い込んだ冒険者の可能性もある。そのため騎士団は直ちに出動する。
冒険者が森に入り迷うことは2、3週間に1回程度あるし、冒険者の死体を発見したことも数度あるので、このような対応となった。
こうした警戒網を、領都を中心にして5キロの範囲には設置してある。ただ、西側にはもう少し広げた方がいいと、マーカスら騎士団やレーノ、レーベルまでもが主張するので設置することになった。その理由は、ダーバルド帝国だ。ダーバルド帝国は最近、ジャームル王国の国境付近への圧力を強めている。仮に侵攻したとして、繋がっている国境線のどこかから侵入する可能性が高いが、クライスの大森林を抜けて奇襲をかける可能性もある。なんでも改良された魔除けの魔道具がダーバルド帝国に流れたらしいのだ。ダーバルド帝国とジャームル王国が戦争しようとどうでもいいが、この奇襲作戦を実行された場合、クルセイル大公領に近づかれる危険があるのだ。どのように対処するかはともかく、全く気がつかずに接近されるのは怖いので、警戒網を広げることにしたのだった。
そんなこんなで、順次ゴーレムを設置しながら領都の西20キロ地点に到達した。私が同行しているのは、ここが初めて訪れる場所だからだ。騎士団が日々、狩りや訓練の一環として領都を中心にその周辺地域の探索を進めている。その中で新たな木の実や薬草を発見したり、小さな洞窟を発見したりしている。ただ、ゴーレムと組むことで戦力が増したとはいえ、ファングラヴィットにも殺される可能性があるので、探索は慎重に行われる。そのため、探索が終わっているのは5キロほどだ。
それより先の地点に行くので、未知の魔獣に遭遇する可能性もある。そのため一応最高戦力である私もついてきたのだ。もちろん、本音はまだ観ぬ場所に行ってみたいという好奇心だ。まあ、基本的に同じ森だったが、川がいくつかあったし、初めて見る魚もいた。おそらく、カーラルド王国とジャームル王国を南北に隔てるクリオラル山から流れてきているのだろう。
今日はそんな川の1つの川岸で野営をしていた。今回のゴーレム設置遠征は、3泊4日の予定だ。今日はその3日目で、全てのゴーレムの設置が終わり、明日帰還する予定となっていた。
道中で狩ったファングラヴィットをレーベルが調理したものをみんなで食べつつ、ふと設置したゴーレムの相方となるゴーレムをリンに出してもらった。すると、ここから数百メートルの距離に設置したゴーレムの相方のゴーレムが左右両方の棒を上げていた。
右は魔獣、左はそれ以外で想定は人。ということは・・・
「みんな! 近くに魔獣と襲われてる人がいるかも! 様子を見に行くよ!」
私が叫ぶと、ジョナスと騎士たちは直ぐに武器を用意し、馬の元へ走った。ゴーレムも指示に従い移動の準備をしている。
「レーベルはここを守って!」
「承知致しました。お気を付けて」
レーベルに野営地の警護を任せ私はマーラに跨がると、ジョナスたちを連れて川を越えて森の方へ向かった。
「コトハ様、反対側50メートルの場所にも設置完了しました」
「オッケー。それじゃあ、次のポイントに向かおうか」
「「「はっ!」」」
私は今、領都ガーンドラバルから西へ15キロほどの場所にいる。一緒にいるのは、移住者が増え騎士も増えたことで、騎士25名と騎士ゴーレム50体を配下に持つクルセイル大公領騎士団第1小隊の小隊長のジョナス、そして騎士2名と騎士ゴーレム4体とレーベルにリンだ。
カイトとポーラをバイズ公爵領の領都ガッドへ送り出してから数ヶ月、最初に仕官した騎士やその家族に加えて、数回にわたって騎士やその家族が移住してきた。カイトたちを送りに行ったときに、レーノやジョナスといった最初の移住組から話を聞いたバイズ公爵領の騎士団員の一部が移住を希望したのだ。
本来は騎士という貴重な人員を引き抜くようなことは慎むべきだろう。しかし、クルセイル大公領ができてクライスの大森林関連の魔獣対策の担当が、バイズ公爵領から我が領へ移り、バイズ公爵領は過剰戦力となった騎士を持て余していた。加えてバイズ公爵領は、カーラルド王国唯一の公爵領として、経済拠点としての発展を目指している。そのため、これまで魔獣対策のために多くを割り当てていた予算の見直しを検討していた。そうした理由で、騎士の削減が本格的に検討されていた。
そんな状況の中で、騎士団に属する騎士約20名が移住を希望したので了承されたのだ。
現在のクルセイル大公領騎士団は、マーカスを騎士団長として騎士団を第1小隊、第2小隊に分けている。各小隊には騎士が25名、騎士ゴーレムが50体配属されている。騎士と騎士ゴーレムは基本的に、騎士1人騎士ゴーレム2体を1組 —騎士隊と呼んでいる— の単位で動いている。今は、2つの騎士隊が一緒にいる。
貴族になることを承諾したときは名誉職的に貴族位を受けただけで、領主になるつもりはなかった。領民を受け入れる予定も無かったのだが、気づけば騎士50名とその家族100名ほどを合わせた150名ほどの領民を抱えている。
まあ曖昧な態度をしていた私に責任があるのだし、今の生活はとても楽しい。騎士と一緒に狩りをしたり、レーノが騎士の家族に割り当てた仕事を視察したり手伝ったり、楽しい日々を送っている。そんな私の責任は、領民を守ることだ。今やっている作業も、その1つだ。
今設置しているのは、魔獣や人型種が前を通ると反応するゴーレムだ。命令式として書き込んであるのはそれだけ。ゴーレムには魔力を感知する能力があることが分かったので、落ち葉や倒木に誤反応しないように、「魔力を持つ生命体が前を通った場合に合図を出せ」という命令式が書き込んである。一応、知っている限りの魔獣をイメージして、魔獣とそれ以外とを分けて反応するようにしてある。
このゴーレムの重要な部分は合図を出す相手だ。目の前を魔獣らが通ったのでその場で反応して動いてみても何の意味も無い。このゴーレムにやらせたいのは、警戒網の構築だ。試行錯誤の結果、魔石に命令式を書き込む際に、2つ以上の魔石に魔力が直列に流れるようにすることで、魔力を流した魔石が連動することが分かった。
魔石を連動させると空気中の魔素が媒介し、離れた場所にある魔石同士が連絡を取り合うことができる。つまり、森の中に設置したゴーレムが領都へ接近するものに気づいたとき、領都の騎士団本部に設置してある相方のゴーレムがその反応を受け取って、騎士たちに敵襲の合図を出すことができるのだ。
ゴーレムの構造はできるだけ単純化している。森の中に設置する方のゴーレムは、接近するものに気づければいいので、鉤爪のような形状で木の上に設置できるようにしてある。大きさも両手で簡単に持ち上げられる程度だ。騎士団の本部に設置してあるゴーレムも単純で箱形の本体の中に魔石を設置し、2本の棒を両サイドに付けてある。魔獣が通れば右の棒を、それ以外なら左の棒を上に上げる。
このペアをたくさん作って、領都の周囲に設置している。領都の周辺のどの辺に設置したかを記録してあるので、騎士団の本部にあるゴーレムの棒が上がったのを確認して、迎撃態勢に入るのだ。
騎士団の取り決めとしては、領都から500メートル以内の場所に魔獣が出現すれば対応する。それより遠い場合は様子見となる。一方でその他の棒が上がった場合。この場合は未知の魔獣の可能性が高いが、森に迷い込んだ冒険者の可能性もある。そのため騎士団は直ちに出動する。
冒険者が森に入り迷うことは2、3週間に1回程度あるし、冒険者の死体を発見したことも数度あるので、このような対応となった。
こうした警戒網を、領都を中心にして5キロの範囲には設置してある。ただ、西側にはもう少し広げた方がいいと、マーカスら騎士団やレーノ、レーベルまでもが主張するので設置することになった。その理由は、ダーバルド帝国だ。ダーバルド帝国は最近、ジャームル王国の国境付近への圧力を強めている。仮に侵攻したとして、繋がっている国境線のどこかから侵入する可能性が高いが、クライスの大森林を抜けて奇襲をかける可能性もある。なんでも改良された魔除けの魔道具がダーバルド帝国に流れたらしいのだ。ダーバルド帝国とジャームル王国が戦争しようとどうでもいいが、この奇襲作戦を実行された場合、クルセイル大公領に近づかれる危険があるのだ。どのように対処するかはともかく、全く気がつかずに接近されるのは怖いので、警戒網を広げることにしたのだった。
そんなこんなで、順次ゴーレムを設置しながら領都の西20キロ地点に到達した。私が同行しているのは、ここが初めて訪れる場所だからだ。騎士団が日々、狩りや訓練の一環として領都を中心にその周辺地域の探索を進めている。その中で新たな木の実や薬草を発見したり、小さな洞窟を発見したりしている。ただ、ゴーレムと組むことで戦力が増したとはいえ、ファングラヴィットにも殺される可能性があるので、探索は慎重に行われる。そのため、探索が終わっているのは5キロほどだ。
それより先の地点に行くので、未知の魔獣に遭遇する可能性もある。そのため一応最高戦力である私もついてきたのだ。もちろん、本音はまだ観ぬ場所に行ってみたいという好奇心だ。まあ、基本的に同じ森だったが、川がいくつかあったし、初めて見る魚もいた。おそらく、カーラルド王国とジャームル王国を南北に隔てるクリオラル山から流れてきているのだろう。
今日はそんな川の1つの川岸で野営をしていた。今回のゴーレム設置遠征は、3泊4日の予定だ。今日はその3日目で、全てのゴーレムの設置が終わり、明日帰還する予定となっていた。
道中で狩ったファングラヴィットをレーベルが調理したものをみんなで食べつつ、ふと設置したゴーレムの相方となるゴーレムをリンに出してもらった。すると、ここから数百メートルの距離に設置したゴーレムの相方のゴーレムが左右両方の棒を上げていた。
右は魔獣、左はそれ以外で想定は人。ということは・・・
「みんな! 近くに魔獣と襲われてる人がいるかも! 様子を見に行くよ!」
私が叫ぶと、ジョナスと騎士たちは直ぐに武器を用意し、馬の元へ走った。ゴーレムも指示に従い移動の準備をしている。
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