危険な森で目指せ快適異世界生活!

ハラーマル

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幕間:ガッドでの新生活

幕間①:勉強と訓練の日々

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時間軸としては第3章と第4章の間、カイトとポーラがバイズ公爵領の領都ガッドで生活してるところです。
更新は第4章と並行して行いますので、是非ご覧ください。第4章以下に関わってくる内容も多く含む予定です。



~カイト視点~

バイズ公爵領の領都ガッドで生活を始めて1ヶ月が経った。ここでの生活にも大分慣れてきたと思う。
僕はポーラと、ラムスさんの長男のフォブス、その弟のノリス君と一緒に勉強し、訓練を受けている。
午前中は読み書きや計算の訓練に加えて、政治や経済に歴史、他の国のことや貴族のルールなんかを学んでいる。貴族のルールとか、面倒でくだらないものばかりだったけど、コトハお姉ちゃんが気にしないことを考えると、最低限僕は知っておく必要があると思う・・・

僕には昔学んだものがあるのでそこまで大変ではないと思っていたけど、全然知らないことばかりで、最初はかなり苦労した。
ポーラには読み書きや計算は教えていたけど、それ以外は教える時間も能力も無かったので、ポーラは一から勉強している。ただ、昔からそうだけどポーラはとにかく物覚えがいいし要領がいい。なので、そこまで苦労している感じはしなかった。

午後は、戦闘関連の訓練をしている。剣術を習ったり、体術の上達を目指したりだ。バイズ公爵領の騎士団の騎士との模擬戦は、とても得るものが多い。『人龍化』や『身体強化』を発動すれば、一瞬で倒せはするけど、それを使わず自分の技術で勝負しようとすると、全く歯が立たなかった。

一緒に勉強しているフォブスは、悔しいけどこれまでの積み重ねがあるのに加えて、とても賢い。一度習ったことはその場で覚えてしまうみたいで、いつもいろいろ質問して教えてもらってる。一方でスキルを使わない戦闘でも、技術は僕の方が上だと思う。ただフォブスは最近、魔法の練習の成果が出てきて、水球を作り出して相手に向けて発射する『ウォータボール』やコトハお姉ちゃんがよく使う『ストーンバレット』を使えるようになっているので、油断はできない。

ポーラとノリス君はとても気が合うみたいで、勉強や訓練のとき以外も一緒にいることが多い。この2人も、勉強はノリス君が上で、戦闘はポーラが上といった感じ。コトハお姉ちゃんが、アーマスさんに呪文の詠唱に関することを教えたみたいで、最近はバイズ公爵領の魔法師団に所属する魔法使いが、ポーラに魔法の実演を頼んでいるのをよく見る。ポーラの魔法はかなり威力が高く精度もいいので、いい手本になっているみたい。


 ♢ ♢ ♢


そんな風に過ごしていたある日、いつもの様に午後の訓練を終え休憩していると、最近、父親のオリアスさんからバイズ公爵領騎士団長の座を引き継いだオランドさんに呼ばれた。
普段は、オランドさんが指名した剣術の教官や体術の教官の指導を受け、週に2、3回の頻度で、オランドさんと模擬戦をしている。今日は模擬戦の日ではないはずだけど・・・

「フォブス、カイト。明日から少し違う訓練をすることになったぞ」
「少し違う訓練?」

フォブスが首をかしげながら聞くのに同意して、僕もオランドさんの方を向く。オランドさんは、訓練モードのときは、僕たちを他の騎士と同様に呼び捨てで呼ぶことになっている。敬語も使わない。これは僕たちが、「教官に敬語を使われるのはやりにくい」と言って、お願いしたものだった。コトハお姉ちゃんとの生活で丁寧な口調から離れていた僕や、次期当主の長男という立場で常に窮屈な思いをしているフォブスにとって、自分たちを鍛えてくれる人に敬語を使われるのは嫌だったのだ。


「ああ。これまで1ヶ月間は、剣術や体術、魔法の訓練と、総合的な模擬戦をしてきた。そろそろ実戦訓練をするべきだろう」

・・・・・・実戦訓練? 貴族がある程度の戦闘力を身に付けるのは、自分の身を守るためであり、戦争の時に戦う可能性があるから。なので、実戦と言われてもピンとこないのだけど・・・


「実戦と言っても、戦争するわけじゃない。カイトは冒険者登録してるだろ? フォブスも冒険者登録して、依頼を受けてこい」

なるほど。冒険者として活動するってことか。でも、どうして・・・?

「冒険者の活動をするのが、実戦訓練になるのですか?」
「ああ。依頼と言っても様々だ。人捜しに物探し、薬草や木の実の採集に、魔獣や魔物の討伐。それに盗賊の討伐なんかもある。お前ら2人なら、クライスの大森林にでも入らん限り魔獣や魔物にも遅れはとらんだろうし、いい経験になるだろう。それに、貴族の男児は、家を継ぐ前に冒険者として活動していることが多い。ラムスは昔から、戦闘はからきしだったから、部隊を指揮する能力だけ身に付けて後は諦めていたが、アーマス様は元シルバーランクの冒険者だ。アーマス様の先代が若くして亡くならなければ、ゴールドやプラチナも狙えただろうな」
「・・・知らなかった」
「アーマスさんは結構強いとは思っていましたけど・・・」
「まあ、俺もほとんど親父から聞いた話だからな。だが、貴族は冒険者と関わる機会が多いし、活動した経験は有益だ。これからしばらくは、午後にやってた訓練の代わりに、冒険者ギルドで依頼を受けてこい。依頼によってはその日に帰れないだろうが、前に野営の訓練もしたからそれも問題ないだろう。グレイやラムス様とも相談済みだから遠慮はいらん」
「「分かりました」」

正直嬉しい。依頼のために、領都ガッドの外に出ていろいろな場所を巡れるのは楽しみだ。僕の知ってる世界は、かすかに記憶にある昔の王都暮らしや村暮らしを除いて、クライスの大森林とガッド周辺のみ。それ以外の場所に行けるのはとてもワクワクした。


「あー、それからカイト。お前が本気を出せば、魔獣の討伐なんて簡単だろう。だがそれでは訓練にならん。お前らの身に危険が迫るまでは、これまでの模擬戦と同じ縛りでやってくれ。一応、遠巻きに護衛の騎士を配備しておくが、基本的に助けは無い前提でやってくれ」
「分かりました」
「・・・確かにカイトが本気出したら、俺暇だもんなー」

フォブスは言い過ぎだと思うけど、僕も訓練にならないからね。


「とりあえず、今からフォブスの登録に行ってこい。推薦状を書いておいたから、フォブスも審査なしでアイアンランクに登録できるはずだ」
「「はーい」」




 ♢ ♢ ♢


フォブスの冒険者登録も無事に終わり、翌日の午後から早速、依頼を受けてみることにした。ポーラやノリス君も着いてきたがったが、それはオランドが認めなかった。まあポーラは問題ないだろうけど、ノリス君はまだそこまで戦えない。だからといってポーラ1人を連れてくるわけにもいかない。ここ1ヶ月で、2人をセットで考えるようになっていた。


フォブスと2人で冒険者ギルドに入る。多くの冒険者は、朝一で依頼を受けて出発するので、この時間はあまり人はいない。前にコトハお姉ちゃんは、なぜか冒険者ギルドで先輩冒険者に絡まれることを期待していた感じだったけど、そんなトラブルも起こらない。

フォブスと依頼が張られているボードの前に行く。僕たちはともにアイアンランクなので、1つ上のランクのブロンズランク向けの依頼まで受けることができる。今日は初回なので、日帰りできる依頼にする予定だった。

依頼ボードを眺めていると、フォブスが1つの依頼票を手に取った。

「カイト、これなんかどうだ?」
「どれ?」

フォブスの選んだのは、「グレートボアの脚の納品」だった。推奨ランクはアイアンランク。納品依頼は、書かれている魔獣や魔物、薬草の現物をギルドに提出する。大型の魔獣や魔物の場合は、部位ごとに依頼が出されている場合もある。
確かグレートボアは、全長に3メートルほどの大きなイノシシ型の魔獣だから、1頭丸ごとの納品は難しい。リンでもいれば別だけどね・・・


「いいんじゃない? グレートボアってガッドの周りには結構いるんでしょ?」
「ああ。それに魔法は使えないし、真っ直ぐ突進してくるだけだから、戦いやすいって習った」
「うん、じゃあそれで。早く受注して外に行こ」

僕たちは早速受注して、ガッドの外へと向かった。僕たちは歩きだ。最初はスティアに乗ってこようかと思ったのだけど、スティアを見ると弱い魔獣は逃げてしまう。マーラほどではないけど、スティアもかなり大きいし威圧感たっぷりだからね。というわけで、とりあえず徒歩で町の外へ向かった。

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