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幕間:ガッドでの新生活
幕間②:初めての依頼
~カイト視点~
初めての依頼を受けた僕とフォブスは、領都の北門から外へ出た。ギルドで調べたグレートボアが多く生息している場所は、ここから徒歩で1時間ほどのところにある小さな湖の近くだ。そこまで、魔獣や魔物を警戒しながら歩いて行く。
少しして、フォブスが口を開いた。
「なあ、カイト。カイトは魔獣と戦ったことあるんだよな?」
「うん。クライスの大森林に住んでたからね。訓練も兼ねてよく狩りはしてたよ」
「それって、ファングラヴィットとかを相手にか?」
「んー、一番多いのはファングラヴィットかな。後はフォレストタイガーとか」
「マジかよ。何回も聞いてるけど凄い生活だよな。ポーラちゃんも一緒に狩りしてたのか?」
「うん。むしろポーラが狩りに誘ってきた感じかな」
「ポーラちゃんも強いからなー。だけど、コトハさんはそれ以上なんだろ?」
「うん。コトハお姉ちゃんは別格だよ。僕やポーラじゃ倒せない大きくて強い魔獣も、簡単に倒しちゃうから」
「凄いよなー。あんな美人なのに、強いとか反則だろ」
フォブスはコトハお姉ちゃんに魔法を教えてもらってから、ことあるごとにコトハお姉ちゃんを褒める。そりゃコトハお姉ちゃんは強いし凄いけど、フォブスがここまで言うのもよく分からない。あげく、コトハお姉ちゃんの趣味とか普段の生活のこととかまで聞いてくる。
無駄話をしながら、目的地に到着した。湖では1頭のグレートボアが水を飲んでいた。グレートボアは大きい個体だと3メートルを超えるけど、目の前にいるのは2メートルを少し超えたくらい。最初の獲物としてはちょうどいい。
「よし、カイト。あれを狩るぞ」
「うん。作戦は?」
「俺が魔法で注意を引くから、カイトが懐に入って倒してくれ。お前の方が俊敏だから、近づくのも得意だろ?」
「オッケー。魔法に怒ってグレートボアが突進してくるかもしれないから気を付けて」
「おう」
湖の近くには木が生えている場所があるので、ひとまず木の陰に隠れるようにしてグレートボアに近づいていく。
できる限り近づいたら、僕は腰に差している2本の剣を抜く。一般的なロングソードやダガーと呼ばれる小型のナイフも試したが、長さが50センチくらいで少し反った剣を2本使う —双剣術という珍しい剣術らしい— のが、一番戦いやすかった。騎士団の中に、双剣術を身に付けた騎士がいたのは幸運だったと思う。
僕に双剣術が合っていたのは、スキルを使うときに全身をバネのようにして、動き回り跳び回る戦い方をするからだと思う。ヒットアンドアウェイの要領で敵に近づいては複数回切りつけて離脱する。これを繰り返すのだ。特に最近は、『人龍化』の練習をして、少しだけど飛行することもできるようになっていたので、尚更、双剣術が適していた。
視線を交わし、合図を出し合う。僕がグレートボアの横側から走り出したのと同時に、フォブスがグレートボアの顔を目掛けて『ウォータボール』を放つ。フォブスの『ウォータボール』の威力はそれほど高くはない。一度被弾したことがあったけど、少しよろけただけだった。だけど、今、それは関係ない。必要なのは気を引くこと。
『ウォータボール』がグレートボアの顔に命中し、水球が弾けた。グレートボアは弾けた水が目に入ったようで、頭を振って視界を取り戻そうとしている。視界を取り戻したグレートボアは、水球の飛んできた方向、つまりフォブスのいる方を睨んで威嚇している。今にも全速力で突進しそうな雰囲気だ。
だけど、そうはさせない。僕は元々グレートボアの視界に入っていないし、グレートボアは冷静さを失ってしかもフォブスを狙っている。そんなグレートボアの懐に入ることは、『身体強化』や『人龍化』を使わなくても容易いことだった。
右手の剣で、グレートボアの首筋を切りつけ毛皮を裁つ。そして左手の剣で毛皮を切り開いた首筋を狙い、グレートボアの首を深く切り裂いた。剣が短く、僕の力と技術がまだまだだったので、首を切り落とすことはできなかったが、グレートボアの息の根を止めるには十分だった。
グレートボアは首から血を噴き出して倒れた。警戒しながら抜剣したフォブスが近づいてくる。
「やった、のか?」
「うん。倒したよ」
「おお! これで初めての依頼は達成だな!」
「うん。まあ、解体して持って帰らないとだけどね」
「・・・あ、忘れてた。解体かー・・・」
「この前習ったでしょ?」
「・・・習ったけど」
「指示出すから、手伝って」
「おう。それなら任せとけ」
確かに解体について習ったときのフォブスの目は死んでた気がする。僕にとっては今更だけど、普通の貴族の子どもが魔獣の解体をする機会はない。フォブスが解体を習ったのは、彼がバイズ公爵家の人間だからだ。バイズ公爵領の立地上、領内を巡るにしろ、王都キャバンへ行くにしろ、他の貴族領へ行くにしろ、多くの魔獣や魔物が生息している地域を通る。当然、護衛の騎士がいるが、彼らとはぐれたり、彼らが死んだりしたときに、自分で魔獣を狩って生き延びる必要がある。そのための生存訓練として、野営の方法と一緒に解体も習ったのだ。
コトハお姉ちゃんよりはマシだけど、ポーラよりもひどい手際のフォブスに指示を出しながら、なんとか解体することができた。今回は徒歩だし、グレートボアの全身を持ち帰ることはできない。依頼にあった脚を1本と、価値の高い部位のお肉を少し、それと魔石を持ち帰ることにして、残りは掘った穴に埋めておく。
脚や肉は血を抜いてあるし、僕も一応使える『水魔法』で氷を作って冷やしてあるので、そこまで神経質にならなくても持ち帰れるだろう。とはいえ、ゆっくりしていると日が沈んでしまうので、帰ることにした。
領都ガッドへ戻り、ギルドの受付にグレートボアの脚を提出する。お肉はお土産に持って帰る予定で、魔石はフォブスの初依頼兼狩りの記念として、彼が持って帰ることになった。
アーマスさんのお屋敷に戻り、オランドさんやグレイさんに依頼の内容と狩りについて報告する。お肉や魔石を見せて、解体まできちんとできたことを褒めてもらった。まあ、解体の話の時は、フォブスが少しそわそわしてたけど・・・
その日の夕食は、グレートボアのお肉を使ったステーキが出された。グレートボアはそれほど珍しくないが、倒すのが少し大変で初心者ランクでは難しい魔獣なので、それほど安くもない。領主のお屋敷の食事として出されるのも、それほど頻繁というわけではないので、ポーラやノリス君は喜んでいた。
フォブスは、今日の狩りの様子を、父親のラムスさんや母親のミシェルさん、ノリス君に自慢げに語っていた。それを聞いて、ポーラとノリス君が、今度は一緒に行くと宣言していたけど、それは難しいんだろうなー
明日もギルドへ行き、依頼を受けることを確認して、今日は早く寝ることにした。
初めての依頼を受けた僕とフォブスは、領都の北門から外へ出た。ギルドで調べたグレートボアが多く生息している場所は、ここから徒歩で1時間ほどのところにある小さな湖の近くだ。そこまで、魔獣や魔物を警戒しながら歩いて行く。
少しして、フォブスが口を開いた。
「なあ、カイト。カイトは魔獣と戦ったことあるんだよな?」
「うん。クライスの大森林に住んでたからね。訓練も兼ねてよく狩りはしてたよ」
「それって、ファングラヴィットとかを相手にか?」
「んー、一番多いのはファングラヴィットかな。後はフォレストタイガーとか」
「マジかよ。何回も聞いてるけど凄い生活だよな。ポーラちゃんも一緒に狩りしてたのか?」
「うん。むしろポーラが狩りに誘ってきた感じかな」
「ポーラちゃんも強いからなー。だけど、コトハさんはそれ以上なんだろ?」
「うん。コトハお姉ちゃんは別格だよ。僕やポーラじゃ倒せない大きくて強い魔獣も、簡単に倒しちゃうから」
「凄いよなー。あんな美人なのに、強いとか反則だろ」
フォブスはコトハお姉ちゃんに魔法を教えてもらってから、ことあるごとにコトハお姉ちゃんを褒める。そりゃコトハお姉ちゃんは強いし凄いけど、フォブスがここまで言うのもよく分からない。あげく、コトハお姉ちゃんの趣味とか普段の生活のこととかまで聞いてくる。
無駄話をしながら、目的地に到着した。湖では1頭のグレートボアが水を飲んでいた。グレートボアは大きい個体だと3メートルを超えるけど、目の前にいるのは2メートルを少し超えたくらい。最初の獲物としてはちょうどいい。
「よし、カイト。あれを狩るぞ」
「うん。作戦は?」
「俺が魔法で注意を引くから、カイトが懐に入って倒してくれ。お前の方が俊敏だから、近づくのも得意だろ?」
「オッケー。魔法に怒ってグレートボアが突進してくるかもしれないから気を付けて」
「おう」
湖の近くには木が生えている場所があるので、ひとまず木の陰に隠れるようにしてグレートボアに近づいていく。
できる限り近づいたら、僕は腰に差している2本の剣を抜く。一般的なロングソードやダガーと呼ばれる小型のナイフも試したが、長さが50センチくらいで少し反った剣を2本使う —双剣術という珍しい剣術らしい— のが、一番戦いやすかった。騎士団の中に、双剣術を身に付けた騎士がいたのは幸運だったと思う。
僕に双剣術が合っていたのは、スキルを使うときに全身をバネのようにして、動き回り跳び回る戦い方をするからだと思う。ヒットアンドアウェイの要領で敵に近づいては複数回切りつけて離脱する。これを繰り返すのだ。特に最近は、『人龍化』の練習をして、少しだけど飛行することもできるようになっていたので、尚更、双剣術が適していた。
視線を交わし、合図を出し合う。僕がグレートボアの横側から走り出したのと同時に、フォブスがグレートボアの顔を目掛けて『ウォータボール』を放つ。フォブスの『ウォータボール』の威力はそれほど高くはない。一度被弾したことがあったけど、少しよろけただけだった。だけど、今、それは関係ない。必要なのは気を引くこと。
『ウォータボール』がグレートボアの顔に命中し、水球が弾けた。グレートボアは弾けた水が目に入ったようで、頭を振って視界を取り戻そうとしている。視界を取り戻したグレートボアは、水球の飛んできた方向、つまりフォブスのいる方を睨んで威嚇している。今にも全速力で突進しそうな雰囲気だ。
だけど、そうはさせない。僕は元々グレートボアの視界に入っていないし、グレートボアは冷静さを失ってしかもフォブスを狙っている。そんなグレートボアの懐に入ることは、『身体強化』や『人龍化』を使わなくても容易いことだった。
右手の剣で、グレートボアの首筋を切りつけ毛皮を裁つ。そして左手の剣で毛皮を切り開いた首筋を狙い、グレートボアの首を深く切り裂いた。剣が短く、僕の力と技術がまだまだだったので、首を切り落とすことはできなかったが、グレートボアの息の根を止めるには十分だった。
グレートボアは首から血を噴き出して倒れた。警戒しながら抜剣したフォブスが近づいてくる。
「やった、のか?」
「うん。倒したよ」
「おお! これで初めての依頼は達成だな!」
「うん。まあ、解体して持って帰らないとだけどね」
「・・・あ、忘れてた。解体かー・・・」
「この前習ったでしょ?」
「・・・習ったけど」
「指示出すから、手伝って」
「おう。それなら任せとけ」
確かに解体について習ったときのフォブスの目は死んでた気がする。僕にとっては今更だけど、普通の貴族の子どもが魔獣の解体をする機会はない。フォブスが解体を習ったのは、彼がバイズ公爵家の人間だからだ。バイズ公爵領の立地上、領内を巡るにしろ、王都キャバンへ行くにしろ、他の貴族領へ行くにしろ、多くの魔獣や魔物が生息している地域を通る。当然、護衛の騎士がいるが、彼らとはぐれたり、彼らが死んだりしたときに、自分で魔獣を狩って生き延びる必要がある。そのための生存訓練として、野営の方法と一緒に解体も習ったのだ。
コトハお姉ちゃんよりはマシだけど、ポーラよりもひどい手際のフォブスに指示を出しながら、なんとか解体することができた。今回は徒歩だし、グレートボアの全身を持ち帰ることはできない。依頼にあった脚を1本と、価値の高い部位のお肉を少し、それと魔石を持ち帰ることにして、残りは掘った穴に埋めておく。
脚や肉は血を抜いてあるし、僕も一応使える『水魔法』で氷を作って冷やしてあるので、そこまで神経質にならなくても持ち帰れるだろう。とはいえ、ゆっくりしていると日が沈んでしまうので、帰ることにした。
領都ガッドへ戻り、ギルドの受付にグレートボアの脚を提出する。お肉はお土産に持って帰る予定で、魔石はフォブスの初依頼兼狩りの記念として、彼が持って帰ることになった。
アーマスさんのお屋敷に戻り、オランドさんやグレイさんに依頼の内容と狩りについて報告する。お肉や魔石を見せて、解体まできちんとできたことを褒めてもらった。まあ、解体の話の時は、フォブスが少しそわそわしてたけど・・・
その日の夕食は、グレートボアのお肉を使ったステーキが出された。グレートボアはそれほど珍しくないが、倒すのが少し大変で初心者ランクでは難しい魔獣なので、それほど安くもない。領主のお屋敷の食事として出されるのも、それほど頻繁というわけではないので、ポーラやノリス君は喜んでいた。
フォブスは、今日の狩りの様子を、父親のラムスさんや母親のミシェルさん、ノリス君に自慢げに語っていた。それを聞いて、ポーラとノリス君が、今度は一緒に行くと宣言していたけど、それは難しいんだろうなー
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