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第4章:新たな日々
第143話:お墨付きと計画
第3章と第4章の間に、「幕間:ガッドでの新生活」として、カイトやポーラの日々を描いたエピソードを投稿しています。こちらも順次更新していきますので、是非ご覧ください。
時系列としては、第3章と第4章の間の数ヶ月間のお話になります。
現在「幕間⑥:アジト制圧」まで更新しています。第4章の前に追加しているため、更新されたことが分かりにくくなっているようです。申し訳ありません。
幕間の方も更新していきます(第4章よりもペースを早くし、先に終わらせる予定です)ので、確認していただけると嬉しいです。
~以下本文~
マーカスとレーノの了承をもらった私とドランドは、魔法武具の開発・研究と並行しながら、騎士団の装備の改良の検討に入った。
この場合、特に重要なのは、レーノの了承というか「許可」、だ。
魔法武具の開発には、多くの魔石や魔獣の素材を使う。それに武具を作るのだから当然、バイズ公爵領の領都ガッドで買い集めてきた鉄や鋼といった金属も使う。それらの多くは、騎士団が日々森を警戒し探索している中で、あるいは訓練の一環として狩りをしている中で仕留めた魔獣を解体して得られたものだ。また、それを売った資金で購入したものだ。つまり、領の財産になる。
カーラルド王国では、旧ラシアール王国と同様に、領主を担う貴族家と領の財産をきちんと峻別することが法律で定められている。領主は、領民や商会からの税収や各種ギルドから納められる金銭から国へ納める金銭を控除し、残りを定められた割合に分割し、領主家としての私財と領の財産とに分ける。そして、領の財産を用いて領の運営をするわけだ。
領主家の財産となったものは自由に使えるので、贅沢を極めてもいいし、商会や新たな技術の開発、遺跡の発掘などに投資してもいい。しかし、領の財産に手を付けることは禁じられている。ちなみにカイトとポーラの実家であるマーシャグ子爵家のように、領地を持たない法衣貴族と呼ばれる貴族は、領からの収入が無い代わりに国から一定額の金銭の交付を受ける。
また、アーマスさんのように宰相など国の特別な役職に就いている場合には、別途その報酬が支払われる。この報酬は、領ではなく領主家の財産となる。
区別が微妙なのは、領主の屋敷の建築、維持・管理に関する費用だ。領主の屋敷は、領主家の人たちが住んでいるため、領主の私財で切り盛りするべきにも思える。しかし、アメリカのホワイトハウスが大統領の住居であり仕事場でもあるように、領主が仕事をする場所でもあるし、多くの場合、文官もそこで働いている。そのため、領の財産を使うことが認められているそうだ。
そんな感じの、思っていたより厳格なルールが定められている。我がクルセイル大公領もカーラルド王国の一部であり、クルセイル大公もその一貴族である。なので、この法律を守る必要がある。当然、領主といえど領の財産の管理・使用に関しては、文官トップのレーノを無視できず、というかレーノの許可が無いとできない仕組みになっている。
まあ領民200人弱の村に毛が生えた程度の小さな領であり、領民に税を納めさせることもしていない。それにうちは国に納めるべき金銭もない。なので、そこまで神経質になる必要は無いが、レーノはきちんとやっている。日々、私が気まぐれに狩ってきたものと騎士団が任務として狩ってきたものを分け、価値を計算し、それぞれの財産として分配している。レーノは今後、領民がさらに増え、税のシステムや報酬の管理その他の財政面が他の領と同じになる場合に備えているらしいので、彼に丸投げしている。
ただ今回は、レーノが管理している領の財産を使わないと先に進めない。そのため、私の財産の範囲で成果を出して、レーノに領の財産を使う許可をもらう予定だったのだが、思ったより簡単に許可が出た。
そんなわけで、私とドランドはほくほく顔で素材を保管してある保管庫 —前に使っていた宝物庫という名前の倉庫には魔石や金貨類が収められている— に向かい、選んでいる。そして、道中で騎士団の訓練を見学し、新装備の構想を練り、騎士ゴーレムの武器についても考えながら工房へと戻った。
工房に戻った私は早速ドランドと相談を開始する。
「魔法武具を作る基礎となる部分の確認は終わったよね」
「そうだな。細かい条件はともかく、従来通りの方法で俺が武器を作り、失敗したものは嬢ちゃんが後から魔法武具へと至らせる。この工程を繰り返せば、魔法武具の量産が可能だ」
「うん。領外へ売るのであれば、付与される特殊効果は別にバラバラでもいいからね。・・・・・・安全のためにも、どんな特殊効果なのかは確認するべきだろうけど」
「そうだな。ダーバルド帝国なんかに流れる可能性も考慮せにゃならん」
「うん。だからとりあえず、うちの騎士団の装備を充実させようよ。その過程でも、いろいろ検証はできるし」
「そうだな。騎士団の装備って言うと、剣に槍、それと盾か?」
「・・・それさ、鎧はどうなの?」
「・・・・・・ん?」
「いや、だから。鎧は魔法武具にできないのかなーって」
「・・・・・・・・・・・・いや、すまん。正直、考えたことが無かった。聞いたことも無かったしな。だがよく考えたら、鎧もアリだな
「うん。・・・・・・たぶん、これまで聞かなかったのは、貴重な素材を使うわけだし、剣や盾の方が需要があったからじゃない?」
「だろうな。だが、鎧は大切だな。使う金属の量が増える分、当然ながら必要な魔石や素材も増えるが・・・」
「そこはさ。レーノに許可貰ったし」
「だな」
♢ ♢ ♢
こうして私とドランドは、騎士団の装備を強化するべく、剣・槍や盾だけでなく、騎士が身に付ける鎧にも特殊効果を付与できないか試すことになった。
マーカスや騎士たちに事情を説明し、どんな特殊効果が付与されていると助かるかを聞いて回った。実際に武具を身に付ける騎士の声を参考にするのが、必要性の観点からも適切だろう。ロマンを詰め込んだ武具を作るのは、私とドランドは楽しいが、レーノに怒られるに決まっているし・・・
その結果、剣はオーソドックスな切れ味が向上するタイプが最も求められていた。特にうちの騎士団は、魔獣を相手にすることが多く、それも防御を騎士ゴーレムに委ね、騎士は攻撃を担うことが多い。ファングラヴィットでさえ剣を入れる角度や槍を突き刺す角度を誤れば、その堅い毛皮に弾かれてしまう。
そのため、剣や槍の切れ味を向上させることで、攻撃する有効角度を増やせると助かるとのことだった。それからマーカスには、斬撃が飛ぶタイプの剣と槍の生産もお願いされた。やはり遠距離攻撃ができることは魅力らしく、特に一度や二度使ったくらいでは対処できないであろう魔獣対策には有効とのことだった。あれは私も納得してはいないし、斬撃が残る射程を伸ばせるように実験しようと思った。
次に盾だ。マーカスの盾は魔力を流すことで、その強度が増すというものだった。だからこそ、カイトの数回の攻撃で盾がひしゃげたことに驚いていたのだが、私には単に強度を上げるだけでは物足りなく思えた。
盾の強度を上げても、結局は盾で攻撃を受けることになるので、盾へのダメージ自体は重なりその耐久性は落ちていく。であるならば、盾が直接攻撃を受けないようにすればいい。
考えていたのは、『自動防御』だ。今では私の『自動防御』は“極”になっていて、魔素でできた薄い膜が絶えず私の身体を覆っている。だが以前は、攻撃が来ると自動的に攻撃が来る方向に魔素でできた壁が出現し、その攻撃を受け止めていた。
今回、私が盾に付与したいのはこれだ。魔力を流すことで、魔素の壁が盾の前に出現する。攻撃はその壁が受け止めるわけだ。仮に魔素の壁が破壊されたときは、盾自体が攻撃を受け止める二段構えになる。もちろん盾自体も、ドランドお手製の高品質だ。魔素が壁を作るのも、それが壊れるのも何度も見ているので、イメージもしやすい。
時系列としては、第3章と第4章の間の数ヶ月間のお話になります。
現在「幕間⑥:アジト制圧」まで更新しています。第4章の前に追加しているため、更新されたことが分かりにくくなっているようです。申し訳ありません。
幕間の方も更新していきます(第4章よりもペースを早くし、先に終わらせる予定です)ので、確認していただけると嬉しいです。
~以下本文~
マーカスとレーノの了承をもらった私とドランドは、魔法武具の開発・研究と並行しながら、騎士団の装備の改良の検討に入った。
この場合、特に重要なのは、レーノの了承というか「許可」、だ。
魔法武具の開発には、多くの魔石や魔獣の素材を使う。それに武具を作るのだから当然、バイズ公爵領の領都ガッドで買い集めてきた鉄や鋼といった金属も使う。それらの多くは、騎士団が日々森を警戒し探索している中で、あるいは訓練の一環として狩りをしている中で仕留めた魔獣を解体して得られたものだ。また、それを売った資金で購入したものだ。つまり、領の財産になる。
カーラルド王国では、旧ラシアール王国と同様に、領主を担う貴族家と領の財産をきちんと峻別することが法律で定められている。領主は、領民や商会からの税収や各種ギルドから納められる金銭から国へ納める金銭を控除し、残りを定められた割合に分割し、領主家としての私財と領の財産とに分ける。そして、領の財産を用いて領の運営をするわけだ。
領主家の財産となったものは自由に使えるので、贅沢を極めてもいいし、商会や新たな技術の開発、遺跡の発掘などに投資してもいい。しかし、領の財産に手を付けることは禁じられている。ちなみにカイトとポーラの実家であるマーシャグ子爵家のように、領地を持たない法衣貴族と呼ばれる貴族は、領からの収入が無い代わりに国から一定額の金銭の交付を受ける。
また、アーマスさんのように宰相など国の特別な役職に就いている場合には、別途その報酬が支払われる。この報酬は、領ではなく領主家の財産となる。
区別が微妙なのは、領主の屋敷の建築、維持・管理に関する費用だ。領主の屋敷は、領主家の人たちが住んでいるため、領主の私財で切り盛りするべきにも思える。しかし、アメリカのホワイトハウスが大統領の住居であり仕事場でもあるように、領主が仕事をする場所でもあるし、多くの場合、文官もそこで働いている。そのため、領の財産を使うことが認められているそうだ。
そんな感じの、思っていたより厳格なルールが定められている。我がクルセイル大公領もカーラルド王国の一部であり、クルセイル大公もその一貴族である。なので、この法律を守る必要がある。当然、領主といえど領の財産の管理・使用に関しては、文官トップのレーノを無視できず、というかレーノの許可が無いとできない仕組みになっている。
まあ領民200人弱の村に毛が生えた程度の小さな領であり、領民に税を納めさせることもしていない。それにうちは国に納めるべき金銭もない。なので、そこまで神経質になる必要は無いが、レーノはきちんとやっている。日々、私が気まぐれに狩ってきたものと騎士団が任務として狩ってきたものを分け、価値を計算し、それぞれの財産として分配している。レーノは今後、領民がさらに増え、税のシステムや報酬の管理その他の財政面が他の領と同じになる場合に備えているらしいので、彼に丸投げしている。
ただ今回は、レーノが管理している領の財産を使わないと先に進めない。そのため、私の財産の範囲で成果を出して、レーノに領の財産を使う許可をもらう予定だったのだが、思ったより簡単に許可が出た。
そんなわけで、私とドランドはほくほく顔で素材を保管してある保管庫 —前に使っていた宝物庫という名前の倉庫には魔石や金貨類が収められている— に向かい、選んでいる。そして、道中で騎士団の訓練を見学し、新装備の構想を練り、騎士ゴーレムの武器についても考えながら工房へと戻った。
工房に戻った私は早速ドランドと相談を開始する。
「魔法武具を作る基礎となる部分の確認は終わったよね」
「そうだな。細かい条件はともかく、従来通りの方法で俺が武器を作り、失敗したものは嬢ちゃんが後から魔法武具へと至らせる。この工程を繰り返せば、魔法武具の量産が可能だ」
「うん。領外へ売るのであれば、付与される特殊効果は別にバラバラでもいいからね。・・・・・・安全のためにも、どんな特殊効果なのかは確認するべきだろうけど」
「そうだな。ダーバルド帝国なんかに流れる可能性も考慮せにゃならん」
「うん。だからとりあえず、うちの騎士団の装備を充実させようよ。その過程でも、いろいろ検証はできるし」
「そうだな。騎士団の装備って言うと、剣に槍、それと盾か?」
「・・・それさ、鎧はどうなの?」
「・・・・・・ん?」
「いや、だから。鎧は魔法武具にできないのかなーって」
「・・・・・・・・・・・・いや、すまん。正直、考えたことが無かった。聞いたことも無かったしな。だがよく考えたら、鎧もアリだな
「うん。・・・・・・たぶん、これまで聞かなかったのは、貴重な素材を使うわけだし、剣や盾の方が需要があったからじゃない?」
「だろうな。だが、鎧は大切だな。使う金属の量が増える分、当然ながら必要な魔石や素材も増えるが・・・」
「そこはさ。レーノに許可貰ったし」
「だな」
♢ ♢ ♢
こうして私とドランドは、騎士団の装備を強化するべく、剣・槍や盾だけでなく、騎士が身に付ける鎧にも特殊効果を付与できないか試すことになった。
マーカスや騎士たちに事情を説明し、どんな特殊効果が付与されていると助かるかを聞いて回った。実際に武具を身に付ける騎士の声を参考にするのが、必要性の観点からも適切だろう。ロマンを詰め込んだ武具を作るのは、私とドランドは楽しいが、レーノに怒られるに決まっているし・・・
その結果、剣はオーソドックスな切れ味が向上するタイプが最も求められていた。特にうちの騎士団は、魔獣を相手にすることが多く、それも防御を騎士ゴーレムに委ね、騎士は攻撃を担うことが多い。ファングラヴィットでさえ剣を入れる角度や槍を突き刺す角度を誤れば、その堅い毛皮に弾かれてしまう。
そのため、剣や槍の切れ味を向上させることで、攻撃する有効角度を増やせると助かるとのことだった。それからマーカスには、斬撃が飛ぶタイプの剣と槍の生産もお願いされた。やはり遠距離攻撃ができることは魅力らしく、特に一度や二度使ったくらいでは対処できないであろう魔獣対策には有効とのことだった。あれは私も納得してはいないし、斬撃が残る射程を伸ばせるように実験しようと思った。
次に盾だ。マーカスの盾は魔力を流すことで、その強度が増すというものだった。だからこそ、カイトの数回の攻撃で盾がひしゃげたことに驚いていたのだが、私には単に強度を上げるだけでは物足りなく思えた。
盾の強度を上げても、結局は盾で攻撃を受けることになるので、盾へのダメージ自体は重なりその耐久性は落ちていく。であるならば、盾が直接攻撃を受けないようにすればいい。
考えていたのは、『自動防御』だ。今では私の『自動防御』は“極”になっていて、魔素でできた薄い膜が絶えず私の身体を覆っている。だが以前は、攻撃が来ると自動的に攻撃が来る方向に魔素でできた壁が出現し、その攻撃を受け止めていた。
今回、私が盾に付与したいのはこれだ。魔力を流すことで、魔素の壁が盾の前に出現する。攻撃はその壁が受け止めるわけだ。仮に魔素の壁が破壊されたときは、盾自体が攻撃を受け止める二段構えになる。もちろん盾自体も、ドランドお手製の高品質だ。魔素が壁を作るのも、それが壊れるのも何度も見ているので、イメージもしやすい。
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