危険な森で目指せ快適異世界生活!

ハラーマル

文字の大きさ
170 / 370
第4章:新たな日々

第148話:帰宅は一緒に

結局、成り行きに任せるほか無いとの結論だった。
カイトやポーラの将来は、2人がじっくり考えればいい。馬鹿が出ればその時に対処することになる。

正直、貴族を辞めてしまえばこんな面倒を背負い込むことはないのだろう。
しかし、ある程度の面倒に直面するのは覚悟の上だった。というのも、私はともかく、カイトとポーラが人間社会で生活することを想定すると、私が貴族である方がいいと思う。

貴族でなくても町で生活は送れる。しかし、戦闘力を利用しようと囲い込まれる可能性や、下手すりゃ奴隷にされてしまう可能性もある。
もちろん、最終的には『人間』ごときに自由を奪われるようなことにはならないだろう。けど、初めから暴力前提では、楽しい社会生活を送ることはできない。そう考えると、身を守るためにも、多少の面倒を我慢しつつ、貴族としての特権を最大限利用する方がベターだと思うのだ。


結婚に関して言えば、私もカイトもポーラも、『人間』よりは遥かに長命だ。現状は、『人間』と同じように背も伸びて顔つきも大人っぽくなりつつあるけど、今後どのように成長するのか分からない。

繋がりさえできればいい政略結婚なら気にしないのだろうけど、私たちが『人間』と結婚すればその相手は必ず先に死ぬ。いや、私たちの寿命のレベルで見れば、相手が生きている時間など一瞬に過ぎないかもしれない。それも踏まえて、どうするかを決められるのは本人だけだろう。


重たい、というか不快な話はここまでになった。
私からは、カイトとポーラのここでの生活や勉強していた内容について聞いてみた。2人ともここで学ぶべき内容は一通り終わっているようで、今後どのような道に進むにしても、困ることはないだろうとのことだった。

確かに2人の将来というか進路はどうなるのだろう。自由にしてくれればいいと思うが、将来的にはカイトに領主を任せてポーラと旅に出よう、と前は話していた。私たちに子どもができるのは遠い先になるかもしれないので、交替で領主を務めればいいと思うのだ。そもそも、今も実際はレーノに任せているしね。


アーマスさんとラムスさんに感謝を伝えているとアーマスさんが、提案があると言ってきた。

「提案?」
「ああ。カイト殿とポーラ殿はこの後、コトハ殿と一緒に帰る予定なのだよな?」
「うん、その予定だよ」
「カイトはともかく、ポーラは終盤、帰りたそうにしているときがありましたね」
「みたいだね。あの年の女の子がそれでいいのか分かんないけど、シャロンと一緒に森で狩りをしたいみたいだね」
「コトハ殿と一緒にいたいのですよ」

ラムスさんにそう諭されたけど、それが本当なら嬉しい。本音を言えば、私も2人がいない生活は寂しかったし・・・


「それで、提案は?」

話が逸れてしまったので、改めて聞いてみる。

「ああ。提案・・・というか頼みだな。フォブスとノリスも一緒に連れて行ってはくれないか?」
「え!? ・・・・・・えーっと、それはつまり、フォブス君とノリス君をうちの領都に。クライスの大森林の中にあるクルセイル大公領の領都に連れて行くってこと?」
「そうだ」

アーマスさんは頷き、ラムスさんもこちらを真っ直ぐ見ている。どうやら、アーマスさんの独断では無くて、2人の意見らしい。

「2人を預かるのはいいんだけど、なんで?」

私がそう聞くと、今度はラムスさんが口を開いた。

「フォブスとノリスをしばらくの間、この町から出したいのですよ」
「えーっと・・・」
「2人は、座学はもちろん必要な戦闘能力もある程度は身に付いたと言って良いでしょう。年齢的にまだ領の仕事に関わらせるのは早いですし、領の運営は現在父上から引き継いでいる最中で、息子たちに仕事を教えていく余裕はないのです。となると、この町では暇を持て余すわけで。他の町に出し、見聞を広げさせようかと考えていたのです」
「その行き先がうちってことですか? 森しか無いですよ?」
「はい。残念ながら他領の都市では、目立った特徴はありません。情勢的に国外は難しい。となれば、こことは全く違う生活を送ることができるであろう、コトハ殿のところがいいと考えました。幸いカイトとポーラとも打ち解けていますしね」
「危険だとは思わないんですか?」
「どこであろうと危険は付きものです。ならば、私の知る限り、最も強い3人が一緒にいる場所が、安心できますよ」

ラムスさんて、アーマスさんと違って慎重で丁寧なイメージだけど、こういうところは似てるよね。大胆というか、面白いというか・・・


「私としては2人を預かるのは問題ないよ。魔獣とかも、基本的に危険は無いし」
「・・・それはそれで凄いのだがな」
「けど、何か特別な経験をさせてあげられるかというと・・・」
「いえ。お気になさらず、普段通りの生活をしていただければ結構です。可能であれば、その中に2人を組み込んでいただければ」
「それなら、まあ。行くのは2人だけ?」
「はい。半端な護衛は邪魔でしょうし。最低限の自分の世話はできるように教育していますので」
「ん、了解」
「半年後、コトハ殿が王都に向かわれる際に、一緒にこの町に寄っていただければと思います」


こうして、フォブスとノリスも一緒に連れて行くことが決まった。
領都に連れて行くと、領にある秘匿技術・・・・・・、ゴーレムと魔法武具を見られることになる。だけどまあ、フォブス君とノリス君にどこまで理解できるのかは不明だし、特に魔法武具については量産できる目処も立ったので、国内の貴族に売り出すことをレーノが計画していた。半年後に王都に行くときに、ついでにアーマスさんに売り込むことにすれば、問題ないだろう。

ゴーレムについても、売る気は無いが、公開しても構わない。というか、さっきのダーバルド帝国を警戒することを考えると、うちの戦力としてアーマスさんたちに伝えることは問題ないだろう。作り方を隠せばいいし、というかドランドでもまだ失敗続きなんだから、『人間』の技術者には無理だろう。


 ♢ ♢ ♢


その後、フォブス君とノリス君にアーマスさんとラムスさんが「クルセイル大公領で学んでくるように」と告げると、大喜びで準備に走っていた。
ミシェルさんだけは少し寂しそうにしていたが、相変わらずノリス君とポーラがくっつくことを願っているようで、ノリス君に何かを吹き込んでいた。そういえば、ポーラがノリス君と結婚すると宣言したらしいけど、どうやら面倒くさくなって適当に言ったらしく、そういうわけではなさそうだった。
まあなんか、それこそラムスさんとミシェルさんみたいに、この後も一緒にいる時間が長くなれば、そのままって気もするけどね。

それからキアラさんも一緒に行くことになった。キアラさんはカイトとフォブス君と一緒に活動していたらしいし、2人がいなくなると活動も大変になるだろう。それに、彼女の境遇を聞くかぎり、せっかく打ち解けている2人と離ればなれにさせてしまうのは忍びなかった。

それとキアラさんには気になることもある。彼女はエルフだ。綺麗な顔つきに、少し長く尖った耳、スラリとしたスタイルは、イメージしていた『エルフ』そのままだった。だが、『エルフ』といえば、魔法が得意なイメージがある。実際、この世界の『エルフ』も魔法が得意だと聞いていた。しかし、彼女は魔法が使えない。魔力はかなり多いし、謎ではあるのだが、これまでの経験上、魔素が豊富なクライスの大森林に行けば、魔法が使えるようになるかもしれない。

そんなわけで翌朝、私とカイト、ポーラ、マーカス以下一緒に来ていた騎士たち、フォブス、ノリスとキアラと一緒に帰ることになった。
ちなみに、カイトとポーラの姉なのだからという理由で、フォブスたち3人を呼び捨てで呼ぶことになった。また、ラムスさんに倣ってアーマスさんも、カイトとポーラのことを呼び捨てで呼ぶようになった。

感想 126

あなたにおすすめの小説

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~

ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国辺境でただ静かに生き延びたいだけの少年・ヴァン。 彼に正義感はない。あるのは、母が遺したノートに記された、物理法則を応用した「高圧魔力」の理論と、徹底した費用対効果至上主義だけだ。 敵国三千の精鋭が灰燼城に迫る絶望的状況。ヴァンは剣を振るわず、心理戦と補給線攪乱だけで、たった三日で敵軍を撤退させる。 この効率的すぎる勝利は帝国の中枢に届き、彼は最高峰の帝国軍事学院への招待状を手に入れる。 「英雄になりたいわけじゃない。ただ、母の死の真相と父の秘密を知るため、生き残らなきゃならないだけだ」 無口最強の仮面メイド・シンカク、命を取引に差し出した狼耳少女・アイリ。彼は常にコスパの高い道を選び、母の遺したノートの謎、そして生まれて一度も会ったことのない父・帝国大元帥のいる帝都の闇へと踏み込んでいく。 正義も英雄も、損をするなら意味がない。合理主義が英雄譚を侵食していく、反英雄ミリタリー学園ファンタジー。

本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい! ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット” ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで? 異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。 チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。 「────さてと、今日は何を読もうかな」 これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。 ◆小説家になろう様でも、公開中◆ ◆恋愛要素は、ありません◆

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。 転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。 - 週間最高ランキング:総合297位 - ゲス要素があります。 - この話はフィクションです。