危険な森で目指せ快適異世界生活!

ハラーマル

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第4章:新たな日々

第149話:大量雇用

カイトとポーラを迎えに行ったのだが、かなりの大所帯になって帰宅することになった。
まずはフォブス、ノリスの2人。アーマスさんとラムスさんの提案で、うちに滞在しバイズ公爵領の領都ガッドではできない体験をするために来た。まあ実際は、カイトたちとこれまで通り仲良く暮らしてくれたらそれでいい。あの後聞いた話では、アーマスさんとラムスさんは半年後の建国式典に向けて、厄介な連中の処理に奔走することになるため、念の為2人を避難させておきたいとの思惑もあるそうだ。

そしてキアラ。カイトとフォブスが助けたエルフの女性で、その後は一緒に冒険者の活動をしていた人だ。2人と離れると困るだろうし、エルフという種族も相まってトラブルに巻き込まれていたようなので、うちに来ることを提案したのだ。ポーラやノリスとも打ち解けているようだし、一緒に来ることに4人は大喜びだった。


そして、騎士がたくさんだ。これは少しややこしいというか、騎士によって事情が異なる。

まずはマーカスたちと同じく移住することを希望した者たちだ。私は無制限に領民を増やすつもりはない。まだ村か小さな町レベルの広さの拠点に、少ない人数が居住しているだけの領都で、多くの人が住むことを想定した作りにはなっていない。それは拠点という外枠だけでなく、領内の各種制度の設計もだ。徴税はしていないし、食事はほとんど配給というかみんなで食べる感じ、仕事はそれなりに分担しているが給料は払われていない。そんな中で領民を増やせば、混乱するだけだ。

一方で、この前の奴隷商人の騒ぎに、今回のダーバルド帝国の話。近い将来何らかの戦争に巻き込まれる可能性が高いことを踏まえると、戦力増強は急務だった。もちろんゴーレムを増産することはできるけど、防衛を完全にゴーレムに任せるのはまだ心許ない。やはり思考面では、訓練された騎士や冒険者には敵わないのだ。

そのため、マーカスやレーノの審査をクリアした者を随時騎士として受け入れていた。どうやら先の騒ぎで、死を覚悟していた騎士やマーカスを慕っていた冒険者たちにとって私は英雄や救世主みたいな扱いらしく、私の下で働きたいという者は多いらしい。そういった人たちの中で、能力的にも人間的にも問題のない者を受け入れている。


次にバイズ公爵領の騎士団から出向してきた者たちだ。この人たちの大まかな事情は新たに雇うことになった騎士と変わらない、違うのは、その希望を今回初めて上司やマーカスやレーノに伝えたという点だ。最初から移住を決めていた者たちと違って、所属していた騎士団との調整が終わっていない。とはいえ、それを終えてから自分たちで向かうのは危険が大きい。

というわけで、とりあえず出向扱いにして、後日手続きを済ませることにしたのだ。形は出向であり、うちでの生活が肌に合わなければバイズ公爵領の騎士団に戻ることができる。そのため秘密保持との関係でレーノが唸っていたが、どうせ近いうちに公表するのだからと、受け入れることになったのだ。


そして最後は、バイズ公爵領以外の騎士団に所属していた者や騎士団入りを志望する冒険者だ。現在のカーラルド王国は、各貴族が移転したり、拡張または縮小されたりした領地の安定化を急いでいる。また爵位の変動も固まったことで、爵位が上がることとなった貴族は地位に見合った騎士団を備えようと、下がった貴族は費用を抑えるために騎士団の縮小的再編をしようとしている。結果、若く地位も低い騎士が大勢、新たな職を求めて移動する事態になっていた。また冒険者たちも、自由だが安定しない冒険者から、自由は少ないが固定給で安定した騎士への転職を希望する者は一定数おり、このタイミングは騎士になるチャンスであった。

そうした中で、新たに興った大公領が騎士団を整備しようとしているとの噂は広まっており、ガッドの騎士団の詰め所や冒険者ギルドには、うちの領で騎士になりたい者が多く詰めかけていた。その中から、前職や冒険者のランクを考慮し、紹介状などがある者を優先にマーカスとレーノが面接を行い、採用する者を決めていた。今回の滞在期間は少なかったので、このルートでの採用は多くなかったが、日程的に面接できなかった者はバイズ公爵領の騎士に志願したり、別の街を目指したりするそうで、問題はなさそうだった。


 ♢ ♢ ♢


大所帯での移動は時間がかかった。特に今回は、全員分の馬があるわけではない。というか新たに採用した騎士は、自前の馬を所有していた冒険者出身の者以外はみんな徒歩だ。さすがにバイズ公爵領で新たに軍馬を購入することもできなかったしね。

なので、同行していたうちの騎士団が分かれて、いくつかの集団に分けた新任騎士たちを率いている。私やカイトたちは分かれて先に帰ることになっている。私たちがいると護衛のことを考えなきゃいけないし、移動速度はこちらが圧倒的だし、一緒に行動する必要は無いのだ。


というわけで、1週間くらいぶりに帰ってきた。カイトとポーラは約半年ぶり、3人は初めてだ。
うちの領では初めて見るものが多いとは思うけど、手始めにこれからいこう。

「じゃあ、うちの領都に入るんだけど・・・。見ててねー」

そう言いながら、門番をしていた騎士に、合図を出す。すると合図を受けた騎士が、領都を囲っている防壁とは色が異なる壁の1カ所を軽く叩いた。
次の瞬間、領都の入り口を塞いでいた大きな壁が、そのまま上に移動した。・・・・・・いや、立ち上がった。

3人の方を見ると、予想通り唖然としている。なぜかカイトとポーラも驚いている気がする。・・・・・・あれ?


「お姉ちゃん。これって前から試してたゴーレム?」
「うん。そうだよ。・・・・・・ってあれ? カイトたちが向こうに行ってから完成したんだっけ?」
「うん・・・。初めて見たよ」

あちゃー。忘れてた。カイトたちが旅立ってから、ドランドたちを救うまでの数ヶ月の間にいろいろ実験して作ったゴーレムの1つだったか。成功も失敗もたくさんしたし、レーベルのやってる農業を専門的に手伝うゴーレムとか、魔獣の運搬用に台車みたいなゴーレムとかいろいろ作ってたから、どれをカイトたちに紹介したか忘れてたよ・・・


「ごめんごめん。では改めて、我が領都の各門に配備されて、門を守っているゴーレムです。基本的にどの門にも騎士がいるから、その騎士に合図したら中に入れてもらえるけど、一応知っておいてね。それと、間違って攻撃しちゃうと、危ないから気をつけてね」

と言って、ゴーレムを紹介した。

ゴーレムを作れるようになってから長いこと考えていた入り口に配備するゴーレムは、よく考えるとそこまで必要性は無かった。いや、騎士ゴーレムを量産し、騎士団を整備した今となっては、かな。

とはいえ、いろいろ考えていたので作ってみたい気持ちもあった。ガッドのような城塞都市の出入り口には、ゲートと両開きの扉タイプであったり、上から金属製の鉄柵が降ってくるタイプであったり、と出入口用の門とそれを塞ぐ設備がある。それらは基本的に人力で開閉が行われるため、それなりの人手が必要となる。まあそれが面倒だから、大きな門扉の下側に人が通れるような扉が設けられていたりするわけだけどね。

まだまだ人手が足りない我が領にとって、開閉に多くの人手を要する設備は望ましくない。一方で、いくら馬車が訪れる機会が無いとはいえ、領都の顔となる門を人が通れる程度の粗末なものにしておくのも避けておきたかった。というか、レーノから、「とりあえず正門となる北側くらいは、ある程度派手に豪華にしたい」と言われた。

そこで、人手が不要な豪華な門、要するに自動ドアを設置することにしたのだ。もちろん日本の自動ドアみたくセンサー式で、電動式なんて無理だ。なので、稼働する部分をゴーレムにすることで、開閉動作をゴーレムの自立行動に任せることにした。
門番を務める騎士は、ゴーレムに開閉の指示を出すだけでいいので、通常の警備ローテーションで足りるわけだ。

ゴーレムの構造はとても簡単だ。さきほど騎士がゴーレムを軽く叩いたように、特定の場所を特定の方法で叩くと、ゴーレムが立ち上がる。ゴーレムの構造は大きな一枚の板だ。板の両端には足が付いており、普段は壁である身体の中に隠れている。ゴーレムは合図を確認すると、真っ直ぐ上に立ち上がる。
そして今度は足に付いている合図を受ける用の場所を叩くと、ゴーレムは座り、門が閉ざされるわけだ。

それからこのゴーレム自体に攻撃能力はない。というか、移動もできない。ただ、合図を出す用の場所以外に衝撃を受けると、普段は壁に収納されている無数の大きな棘が身体を覆う。

このゴーレムが攻撃を受ける可能性が一番高いのは、魔獣の体当たりだ。魔獣は一点集中で何度も体当たりをして、穴を開けようとしてくる。そこで、一度攻撃を受けた後、二度目の攻撃を受ける前に棘が飛び出て、魔獣の身体に突き刺さることになるわけだ。実際に、数日に一体程度の割合で、魔獣の串刺しができていた。

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