危険な森で目指せ快適異世界生活!

ハラーマル

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第4章:新たな日々

第156話:森の散策

森の散策に出ることになったが、さすがに私たち6人で行くわけではない。そんなことをすれば、マーカス、レーノ、レーベルに叱られるに決まっているし、私も5人を守れる自信はない。

というわけで、マーカスにその旨伝え、護衛をお願いした。
一緒に行くのは騎士団第2中隊長のアーロンと、第2中隊所属の2個小隊、騎士10人と騎士ゴーレム20体だ。

向かうのは拠点から徒歩で30分の距離にある仮拠点。仮拠点とは、騎士たちが森を散策する場合の拠点として、休憩や補給なんかを行っている場所のことだ。木が倒され、または最初から無いため開けた場所で、魔獣の接近を早期に把握できる場所に設けられている。拠点の近くの仮拠点は、その周辺の地理把握が完了するのと同時にその役目を終えているが、緊急用の換えの武器やテント、松明などの必要物資は今も保管されている。


拠点の東門を出て、仮拠点を目指す。
森を見ながら歩くのが目的なので、マーラたちには乗らず、徒歩で移動している。シャロンは一緒に来ているが、ポーラも歩きだ。
それぞれ自分の武器を携帯し、カイトたち年長組は冒険者の活動をするときの装備を身に付けている。

ご両親が営んでいた商会で知識を身に付けたらしいキアラが、生えている珍しい薬草に驚いたり、見たことのない木の実に興味を示して、みんなで味見をしたりしながら進んでいく。
騎士たちは私たちの前後に1小隊ずつ配置され、魔獣の襲撃に備えている。

私も最近練習している、魔力により周囲を探る索敵方法 —仮称、魔力感知— を試しながら歩いている。この方法は、レーベルに導入部分を教えてもらい、後はひたすら自分で試しながら身に付けようとしている。一番難しいのは、効果範囲を広げること。目に見える範囲はもちろん、ある程度離れていても魔力を感じ取ることは簡単だったが、50メートル、100メートル離れた場所にいる生物の魔力を感じ取ることは容易ではなかった。
それに魔力を感じ取ることができても、それが自分を中心にどの方向にいるのか、距離はどれくらいなのか、正確に感じ取ることはとても難しい。さらに感じ取れた魔力の量から、どんな魔獣なのかを特定するのはもっと難しい。

やること自体は、自分を中心に少量の魔力を放出するだけだ。自分の放った魔力に意識を集中し、自分の放った魔力が他の魔力と接触しないかを探る。自分から放出した魔力に意識を集中すること、それを継続すること、反応を読み取ることを同時に行う必要があり、『龍人化』により角を出して魔力をコントロールしなければ使えない技だった。
レーベル曰く、訓練すればそこまで意識せずとも、他者の魔力を察知できるようになるらしく、ひたすら試行を重ねて、感覚を身に付けているのだ。


そんな私の魔力感知に反応があった。前方に100メートルほど。魔力の強さからして、ファングラヴィットだと思う。
私が感じたのとほぼ同時に、先頭を歩いていたアーロンが全員に合図を出して、進行を止めた。

「コトハ様。前方にファングラヴィットがおります。1羽です。いかがなさいますか?」
「ファングラヴィットなら、狩っていこうか」
「承知」

アーロンがそう答え、騎士たちに指示を出す。
前方に配置されていた小隊から騎士2人と騎士ゴーレム4体、つまり騎士隊が2個、動き出した。騎士が魔獣と戦うのを間近で見るのは久しぶりだし、楽しみだ。カイトたちも興味津々といった感じで、見学している。
・・・・・・いや、フォブスたち3人は、ファングラヴィットと聞いて少し顔色が悪くなっているけど。


騎士隊は左右に分かれ、それぞれ騎士ゴーレムが盾を構えている。ファングラヴィットの背後には大きな木があり、左右から抑え込めば逃げ場がなくなる。

「今だ!」

片方の騎士の合図で、騎士ゴーレムが盾を向けて突進した。ファングラヴィットの左右を盾で塞ぎ、ファングラヴィットの厄介な跳躍力や俊敏性を封じる。ファングラヴィットは負けじと盾の1枚に頭突きを喰らわすが、騎士ゴーレムには効いていない。
そして、動きを封じたのを確認してから、騎士ゴーレムの間から騎士が剣を突き出し、ファングラヴィットの左右から身体を貫いた。

ここまで僅か10秒。
報告は受けていたけど、単体のファングラヴィットごとき、もはや敵ではないか。いや、これは騎士ゴーレムによる封じ込めが上手くいったおかげだ。動きを封じられたファングラヴィットは、盾に向かって頭突きをしていた。いくら、助走を付けられないようにしていても、あの脚力を持つファングラヴィットが繰り出す頭突きはかなりの威力になる。未熟な騎士なら軽く吹き飛ばされる程度には。

騎士ゴーレムが完全に封じ、頭突きを受けても微動だにしない。ファングラヴィットが唯一取れる対抗策を完璧に封じ、魔法武具で切れ味抜群の剣で、身体を貫くことで、ここまでスムーズな狩りが行えるのだ。


その後もファングラヴィットを狩りながら目的地へと進んでいった。
ファングラヴィットであれば、数が増えても問題なく、騎士団が処理していく。途中、カイトたちにせがまれて、カイト、フォブス、キアラの3人で狩りをすることもあったが、危なげなくファングラヴィットを仕留めていた。いや、この時はカイトがしっかり戦っていたから問題はなかったが、フォブスとキアラを中心に据えるのであれば、少し苦戦したかもしれない。

フォブスの魔法の腕前も、剣術の腕前も大したもんだが、それでもこの森で生きていくのに必要なレベルには少し足りない。キアラの剣術は間に合わせだし、魔法はこれからだ。キアラの保有魔力とハイエルフという種族を踏まえると、キアラの方が強くなるのは時間の問題だろう。
フォブスはどちらもこなせるオールラウンダー、カイトは物理特化、キアラは魔法特化だ。そう考えると、バランスのいい3人組な気もする。


そうしている内に、ファングラヴィットよりも強い魔力を感じた。少なくともファングラヴィットよりは強い。
アーロンに伝えると、アーロンが騎士を偵察に向かわせた。

偵察に向かった騎士曰く、目的地の仮拠点で見つけたのは2頭のフォレストタイガー。困ったことに、通り過ぎたのではなく、仮拠点に居着いているように見えたとのこと。

「コトハ様・・・・・・」
「倒すしかないね。どうする? 私がやろうか?」

フォレストタイガーが2頭。森の外に暮らす人々にとっては絶望ものだろうが、私にとっては魔法で簡単に処理できる相手だ。

「・・・・・・先ずは我々が。敵わなかった場合に、お助けいただきたく存じます」

アーロンは少し迷ってから、そう言ってきた。
フォブスやキアラはもちろん、騎士たちにも荷が重いと思うので私がやろうと考えたのだが、アーロンがそう言うのなら任せてみよう。

フォレストタイガーが1頭なら、1個小隊でなんとか対処できる。ただ、フォレストタイガーが2頭。それもどうやらこの2頭は敵対しているわけではないらしい。となると、単純に2個小隊いれば対処可能かというとそういうわけでもない。

とはいえ、アーロンが戦うと決めたのならば、ひとまず任せるのが正解だろう。
何でもかんでも私がやるのは、“領主”という立場においては適切ではない。いつでも介入できるようにしつつ、騎士たちの頑張りを見守るのが正解だろう。

万が一に備え、カイトとポーラにフォブス、ノリス、キアラの3人を守るように伝える。
そして、散開しゆっくりフォレストタイガーを囲い込みながら距離を詰めていく騎士たちを見て、いつでも飛び込めるように準備を整える。

さあ、騎士たちのお手並み拝見といこうかな。

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