危険な森で目指せ快適異世界生活!

ハラーマル

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第4章:新たな日々

第169話:盗賊の処遇

最初に口を開いた男の子がなんとか持ち直し、再び口を開いた。

「そ、その。僕たちは、初心者ランクの冒険者です・・・。一緒に捕まった2人と、死んだ1人に誘われて、少し前にパーティを組みました」
「2人はその前から知り合いなの?」
「は、はい。同じ村の出身です。一緒に冒険者になるために、ガッドに来ました」
「それで?」
「べ、ベラリオが少し魔法を使えるんです。それで、ベラリオが誘われて。ベラリオが僕も一緒ならって言ってくれたので、5人でパーティになりました」

ベラリオというのは、今は話していない方の男の子。まだ、私に怯え続けている子だ。今話している子の名前はトムソンというらしい。

「それで、どうしてこんなことを?」
「そ、その。4日前に、依頼の合間にここを訪れたんです。その帰り道に近くにいた商人が、『あの魔法武具は高く売れる』って言ってたのを、シャークさんが聞いて。それで・・・・・・」
「盗もうって考えたの?」
「・・・・・・はい。盗んだ魔法武具を商人に売ったら大儲けできるって、シャークさんたちが盛り上がって・・・」

どうやらシャークというのは、死んだ男のことらしい。シャークが、5人のリーダー的存在で、受ける依頼を決めたり、方針を決めたりしていたらしい。そんなシャークが、今回の件を思いついたとか。

「誰も反対しなかったの?」
「さ、3人が同意したら、僕たちには反対することなんてできなくて・・・・・・」
「でも、犯罪・・・というか、悪いことだってのは分かってたんでしょ?」
「は、はい」
「捕まったらどうしよう、とか考えなかったの?」
「その、シャークさんが、砦は小さいし、騎士の数も少ないから、捕まることは無いって・・・。それで・・・」
「捕まらないならいいって?」
「い、いえ。その・・・。反対することが、できなくて・・・・・・」
「なるほどねー」

話を聞くかぎり、魔法を使えるベラリオに目を付けたシャークたちが、2人を勧誘。年齢やランク、実力を盾に、2人をこき使っていたのだろう。前にカイトに、冒険者にとっていかに魔法を使える存在が有用であり貴重であるか教えてもらった。『火魔法』が使えれば野営の際に役立つし、『水魔法』が使えれば飲み水に困らない。なので、少しでも魔法が使えると、引く手あまたなそうだ。


私が2人の境遇に少し同情していると、トムソンが

「た、大公様! 本当に申し訳ありませんでした」

と立ち上がり、頭を下げてきた。それを見たベラリオもそれに続く。
はぁー。どうしたもんかねー。2人の言うように、逆らえない状況で、今回のやらかしに参加させられたのなら、同情の余地がある。2人は最初から謝り倒していたようだし、反省・・・というか、後悔が見て取れる。


ふぅー・・・・・・。心の中で息を吐いたつもりが、外へ出ていたようで、私の次の言葉を待っている2人や側にいる騎士たちの視線が一気に私へ向かい。

「とりあえず、もうしばらくは身柄を拘束します。ただ、先程までの監房ではなく、宿泊施設の部屋に滞在してもらいます。当然、自由に行動することは禁止。見張りもつけます。武器等の携帯も認めません。それからベラリオ。魔法の使用も禁止します」

私が少し堅くそう言うと、2人は驚いたようにしながらも、何度も返事をして頷いた。
驚いていたのはうちの騎士たちやマーカス、レーノもだ。

「こ、コトハ様。この2人は・・・」

代表してレーノが聞いてくるので、

「処分を決めるのは保留にするわ。2人の話が本当なら、汲むべき事情もあるしね。確認するまでは、宿泊施設に軟禁しておいて」
「承知致しました」

レーノは少し不満げながらも頷き、指示を出している。
2人が騎士に連れられ、退出してから、

「それからマーカス。下の2人に話を聞いてもらえる? あいつらの言い訳じゃなくて、この2人のことをね」

とマーカスに指示を出す。

「分かりました。それと、冒険者ギルドにも話を聞きに行きたいのですが・・・」
「ギルドに? なんで?」
「有望な新人を無理矢理パーティに入れることは、長年問題となっていました。ギルドは何度も警告しておりましたが、残念ながら絶えません。そこで、問題が起きた場合に備えて、ギルドではそういった事情のパーティには特に目を光らせているのです。もしかしたら、冒険者ギルドにこれまでの5人についての情報があるかもしれません」
「・・・なるほど。おっけー。お願いね」


 ♢ ♢ ♢


翌朝、私は領都へ戻った。
それから数日してマーカスも帰ってきた。レーノも一緒だ。

マーカスに調べた内容を聞いてみると、

「まあ、なんといいますか。典型的なクズ冒険者と不運な新人冒険者といった構図ですね。地下牢の2人に聞けば、『役立たずを使ってやった』とか、『俺たちのおかげでここまでやってこれた』とか、『魔法が使えない方も仲間に入れてやったのだから感謝しろ』とかなんとか・・・」
「うん。すごく想像通りの答えね」
「はい。ギルドや馴染みの冒険者に聞いたところでは、年長の3人が、若い2人をこき使っている場面を度々目撃していたそうです。余りにも目に余るため、近々ギルドの方から指導することが検討されていたと。間に合わなかったことを後悔しているようでした」
「そっかぁー・・・・・・。レーノ?」
「2人は部屋で大人しくしていましたよ。魔獣の解体はできるようなので、騎士団が狩ってきた魔獣の解体をさせていました。というか、何もせずに食事を貰うのは忍びないとかで、何か手伝いをしたいと、向こうから申し出てきました。まあ、日々の様子を見る限りは、地下牢のゴミ2人とは違うようです」
「・・・・・・恩情を与えることには賛成?」
「賛成・・・・・・とは言い切れませんが、反対は致しません」
「あなたがそう言うのなら、それで十分かな。マーカス。ギルドの処分は?」
「地下牢の2人と死んだ男は除名が既に決定していました。正式に処分が下るのは、領主の裁定後ですが。若い2人の処分は決めかねているようでした。おそらく、私が話を聞きに来たことと合わせて、コトハ様がどのような判断をするのかを待っているのでしょう。コトハ様が恩情を与えられたのに、ギルドが重い処分をするわけにはいかないので」
「冒険者を続けられるの?」
「おそらくは。他の冒険者もあの2人には同情的でしたので」
「分かった。じゃあ、あの2人は厳重注意ってことで」

私がそう言うと、

「コトハ様。さすがに軽すぎます。せめて、いくらかの罰金を科すべきかと」

と、レーノに止められた。罰金ねー。金額が分からないんだけど・・・

「いくらくらい?」
「そうですね・・・。金貨10枚でしょうか。一般的には軽いとは思いますが、彼らが初心者ランクの冒険者であることに鑑みれば、十分な罰になるかと」

金貨10枚というと、だいたい100万円くらいか。新卒のサラリーマンではポンっと支払えない金額だと思うし、初心者ランクの冒険者には厳しいんじゃない?

「マーカス。金貨10枚って初心者ランクの冒険者に払えるの?」
「無理ですな。初心者ランクで受けられる依頼の相場が銀貨2、3枚。2人は冒険者になって半年ほどらしいですし、パーティを組んでからの収入はそれ以下のようでしたから。金貨10枚を支払えるとはとても思えません」
「・・・・・・うーん。まあ、とりあえず、金貨10枚にしようか。定期的にこっちに顔を出すようにしてもらって、その後の態度次第では免除って感じかな。私は別に未来ある若者に重荷を課したいわけじゃ無いしね。もちろん悪い奴ならいいけど、あの2人は被害者の面もあるからね」
「はい」
「・・・承知致しました」

マーカスは嬉しそうに、レーノは少し不満げに頷いた。
まあ、マーカスの気持ちは分かるし、レーノの気持ちも分かる。だからこそ、この2人に意見を貰うのが大切なのだ。

「それで、コトハ様。地下牢の2人はいかがなさいますか?」

レーノが思い出したように聞いてくる。

「え、死罪でいいんじゃない? それとも犯罪奴隷?」

私が何でも無いように答えると、2人は少し驚いたような表情をする。
いや、別にクズを処分することを躊躇ったりはしないよ?

「し、承知致しました。犯罪奴隷は需要があるかによりますので、一度バイズ公爵領の方に確認なさるのがよろしいかと」
「分かった。じゃあ、それを聞いてみて、需要があれば犯罪奴隷。なければ処刑で」
「「はっ!」」

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