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第4章:新たな日々
第171話:ギルドの派出所
冒険者ギルドへの処刑の通達は、特に驚きもなく受け止められた。ガッドの冒険者ギルドのギルドマスターであるソメインさんと話し合いに行ったレーノによれば、クルセイル大公領との関係構築の大切な時期に、はた迷惑な事件を起こした冒険者についてはあまり話題にしたくないようで、一言二言で終了したらしい。
恩情を与えた若い2人、トムソンとベラリオについては、厳重注意処分とされたほかは、特にお咎め無しということに落ち着いたそうだ。それに、彼らに同情的であった先輩冒険者たちが気に掛けてくれているらしく、冒険者への復帰はできそうだ。
彼らにはそれぞれ金貨10枚の罰金を科した。これは大公の名で私が科した罰金であり、支払を怠ると新たな罪になる。とはいえ、無理を強いるつもりもないので、分割払いとした。毎年金貨1枚、これを10年間納めることになっている。もちろん、冒険者として順調に成長し、問題なく支払えるようになれば繰り上げて支払うことも可能だ。それに、冒険者として一生懸命活動していれば、どこかのタイミングで残りを免除してもいいと考えている。そのため、半年に1回は必ず出頭することを厳命しておいた。逃げられるのだけは避ける必要があるしね。
レーノによれば、ソメインさんは私の2人への寛大な対応に深く感謝していたらしい。それこそ領主によっては、というより一般的には、2人の事情に関係なく処刑されてもおかしく無い事案だったわけだしね。一応今回の処分については、無闇に口外しないことは頼んでおいた。事情を知る人たちや、2人の境遇を知ってる冒険者たちが変な誤解をするとは思えないが、変に甘い処分をしたとの噂が広がるのも困るから。
そして、レーノがソメインさんと話し合った結果、砦に冒険者ギルドの支部が設置されることになった。扱いとしてはガッドにある冒険者ギルド支部の派出所になるらしい。なんでも正式に“支部”とすると、ギルドマスターを置いたり、依頼の処理業務を行えるようにしたり、登録・昇格審査が行えうるようにしたりと、必要となる機能が多いらしい。それには当然、多くのギルド職員が必要となり、ギルド本部の許可や他のギルド支部との調整も必要になる。結果、設置までにかなりの時間を要することになる。
しかし、そんな悠長なことは言ってられない。クライスの大森林関連の依頼は日に日に数を増し、それを受ける冒険者の数も増えている。2ヶ月後の建国式典に合わせて、多くの貴族や商人が王都へ移動するため、その護衛として雇われたり、単に物見遊山に出向いたりと、数が減るとは予測されるが、それでもしばらくはこの状態が続くだろうとのこと。
そう考えたとき、砦に冒険者ギルドの派出所があることはとても大きい。冒険者たちはクライスの大森林の入り口付近で薬草や木の実を採集したり、魔獣を狩ったりする。当然、それらをガッドのギルド支部まで運ぶ必要があるのだが、限度がある。そのため、クライスの大森林関連の依頼を受ける冒険者が増えたとはいえ、依頼の数には追いついていない状態だった。
砦に派出所ができれば、冒険者たちは派出所に採集した薬草や木の実、狩った魔獣を持ち込むことができる。支部ではないので、依頼達成の処理はできないが、納品証明書は発行されるので、ガッドの支部に戻れば依頼は達成となる。そのため、ガッドの支部で複数の依頼を受け、クライスの大森林で活動し、適宜砦にある派出所に納品するというサイクルで活動することができるようになる。その結果、各冒険者がこなせる依頼の数が増えることになるわけだ。
派出所に納品された薬草や木の実、魔獣は、毎日ガッドへ向けて走らせる馬車に積み込まれる。冒険者が自前の馬と馬車を用意するのは大変だが、ギルドであればそれくらいは可能なので、冒険者が砦の派出所に納めた物品をガッドへ輸送することができるわけだ。
だがこのプランには、1つだけ欠点があった。それは、うちの領が税金を受け取ることができないことだ。
冒険者ギルドは、国と契約を結んでいる。国はギルドに種々の特権を認め、各冒険者が税金を納めることを免除している。一方で、冒険者ギルドは支部を通して一定割合の税金を領に納付する。冒険者が納めるべき税金は、ギルドを通して支払われているわけだ。そしてギルドが納める税金について、ギルドの“支部”が置かれている領に、ギルドの収入の一定割合を納めることと定められている。
つまり、“支部”ではなくガッドの支部の派出所を置いているに過ぎないクルセイル大公領は、ギルドから税金を受け取ることができない。一方で冒険者の保護やギルドの尊重といった国に課せられている義務は、国の一部として当然守る必要がある。
この点について、レーノが持ち帰り検討した。ギルドとしては、この税金を免れることが“支部”ではなく派出所を置く目的では無いので、どうにか策を考えたいとのこと。うちの領としては、そう簡単に税を取りっぱぐれるわけにはいかない。
少し時間がかかったが、当面の間はギルドがうちの領から素材を買い取る際に相場より高値で買い取り、ゆくゆくは派出所をギルド支部とすることで話がついた。ギルドとしては、税金以外で直接お金を支払うわけにはいかないらしく、買取額の上乗せという形で、受取金額自体は税金を支払っているのと同じになった。うちの領としても、建前はともかく、結果的に受け取るべきものは受け取ったと言えるので、最低限の面目は立つ。
こうして種々の取り決めを、数回のやり取りを重ねて行い、砦にガッドの冒険者ギルド支部の派出所の設置が決定した。なお、盗賊騒動の反省も踏まえて、砦を拡張し、冒険者など外部の者が訪れる区域と、うちの騎士団の本部や魔法武具を保管する倉庫、調理場などがある区域とを分けた。前者は、これまで通りのあまり威圧感のない警備体制を。後者は、ゴーレムが大量に徘徊している状態 —といっても、うちの領民にとっては見慣れた光景だが— の警備体制を敷いた。
♢ ♢ ♢
冒険者ギルドとの交渉も終わり、派出所の運用も始まって少しして、砦に初めての公式な来客があった。バイズ公爵領の騎士団長オランドさんを筆頭に騎士団の面々だ。お隣さんの騎士団同士、盗賊や魔獣対策の一環として、交流を図ろうというものである。といっても、うちの騎士団の幹部たちのほとんどが、元々はバイズ公爵領の騎士団に所属していた者たちだ。そのため、向こうの思惑としてはうちの騎士団の力量チェックの面が強いのだろう。
こちらとしても、バイズ公爵領の騎士団には騎士ゴーレムを含めたうちの騎士団の戦力をお披露目、というか見せつける機会を探していたので、この提案に応じたのだ。それにうちの騎士団の幹部たちは、部下を率いて戦うのは初めてな者も多い。そこで、騎士団としての練度では遠く及ばないであろうバイズ公爵領の騎士団との交流は、うちの騎士団にとっても得るものは多いと思う。
そんなわけで、バイズ公爵領の騎士団の訪問を受ける当日。一応挨拶くらいはと思い、私も砦を訪れていたところ、思わぬ同行者がいた。
「ラムスさん!? 騎士団の訪問と聞いていたんですけど・・・」
「お久しぶりです、コトハ殿。事前の連絡も無く訪れた無礼をお詫びさせてください」
「それはいいんですけど・・・」
まさかラムスさんも来るとは。砦に来ておいてよかった・・・
私がラムスさんと言葉を交わす間、マーカスとオランドさんが騎士団長同士言葉を交わしている。騎士たちもそれぞれ顔馴染みと挨拶を交わしている。しかし、バイズ公爵家の騎士団はみんな、チラチラと後ろに控え整列している騎士ゴーレムの方に視線をやっている。ラムスさんもだ。
「それではラムスさん。それにバイズ公爵領の騎士団のみなさんも。クルセイル大公領の砦へようこそ。歓迎します」
そう言って、砦の中へと案内した。
恩情を与えた若い2人、トムソンとベラリオについては、厳重注意処分とされたほかは、特にお咎め無しということに落ち着いたそうだ。それに、彼らに同情的であった先輩冒険者たちが気に掛けてくれているらしく、冒険者への復帰はできそうだ。
彼らにはそれぞれ金貨10枚の罰金を科した。これは大公の名で私が科した罰金であり、支払を怠ると新たな罪になる。とはいえ、無理を強いるつもりもないので、分割払いとした。毎年金貨1枚、これを10年間納めることになっている。もちろん、冒険者として順調に成長し、問題なく支払えるようになれば繰り上げて支払うことも可能だ。それに、冒険者として一生懸命活動していれば、どこかのタイミングで残りを免除してもいいと考えている。そのため、半年に1回は必ず出頭することを厳命しておいた。逃げられるのだけは避ける必要があるしね。
レーノによれば、ソメインさんは私の2人への寛大な対応に深く感謝していたらしい。それこそ領主によっては、というより一般的には、2人の事情に関係なく処刑されてもおかしく無い事案だったわけだしね。一応今回の処分については、無闇に口外しないことは頼んでおいた。事情を知る人たちや、2人の境遇を知ってる冒険者たちが変な誤解をするとは思えないが、変に甘い処分をしたとの噂が広がるのも困るから。
そして、レーノがソメインさんと話し合った結果、砦に冒険者ギルドの支部が設置されることになった。扱いとしてはガッドにある冒険者ギルド支部の派出所になるらしい。なんでも正式に“支部”とすると、ギルドマスターを置いたり、依頼の処理業務を行えるようにしたり、登録・昇格審査が行えうるようにしたりと、必要となる機能が多いらしい。それには当然、多くのギルド職員が必要となり、ギルド本部の許可や他のギルド支部との調整も必要になる。結果、設置までにかなりの時間を要することになる。
しかし、そんな悠長なことは言ってられない。クライスの大森林関連の依頼は日に日に数を増し、それを受ける冒険者の数も増えている。2ヶ月後の建国式典に合わせて、多くの貴族や商人が王都へ移動するため、その護衛として雇われたり、単に物見遊山に出向いたりと、数が減るとは予測されるが、それでもしばらくはこの状態が続くだろうとのこと。
そう考えたとき、砦に冒険者ギルドの派出所があることはとても大きい。冒険者たちはクライスの大森林の入り口付近で薬草や木の実を採集したり、魔獣を狩ったりする。当然、それらをガッドのギルド支部まで運ぶ必要があるのだが、限度がある。そのため、クライスの大森林関連の依頼を受ける冒険者が増えたとはいえ、依頼の数には追いついていない状態だった。
砦に派出所ができれば、冒険者たちは派出所に採集した薬草や木の実、狩った魔獣を持ち込むことができる。支部ではないので、依頼達成の処理はできないが、納品証明書は発行されるので、ガッドの支部に戻れば依頼は達成となる。そのため、ガッドの支部で複数の依頼を受け、クライスの大森林で活動し、適宜砦にある派出所に納品するというサイクルで活動することができるようになる。その結果、各冒険者がこなせる依頼の数が増えることになるわけだ。
派出所に納品された薬草や木の実、魔獣は、毎日ガッドへ向けて走らせる馬車に積み込まれる。冒険者が自前の馬と馬車を用意するのは大変だが、ギルドであればそれくらいは可能なので、冒険者が砦の派出所に納めた物品をガッドへ輸送することができるわけだ。
だがこのプランには、1つだけ欠点があった。それは、うちの領が税金を受け取ることができないことだ。
冒険者ギルドは、国と契約を結んでいる。国はギルドに種々の特権を認め、各冒険者が税金を納めることを免除している。一方で、冒険者ギルドは支部を通して一定割合の税金を領に納付する。冒険者が納めるべき税金は、ギルドを通して支払われているわけだ。そしてギルドが納める税金について、ギルドの“支部”が置かれている領に、ギルドの収入の一定割合を納めることと定められている。
つまり、“支部”ではなくガッドの支部の派出所を置いているに過ぎないクルセイル大公領は、ギルドから税金を受け取ることができない。一方で冒険者の保護やギルドの尊重といった国に課せられている義務は、国の一部として当然守る必要がある。
この点について、レーノが持ち帰り検討した。ギルドとしては、この税金を免れることが“支部”ではなく派出所を置く目的では無いので、どうにか策を考えたいとのこと。うちの領としては、そう簡単に税を取りっぱぐれるわけにはいかない。
少し時間がかかったが、当面の間はギルドがうちの領から素材を買い取る際に相場より高値で買い取り、ゆくゆくは派出所をギルド支部とすることで話がついた。ギルドとしては、税金以外で直接お金を支払うわけにはいかないらしく、買取額の上乗せという形で、受取金額自体は税金を支払っているのと同じになった。うちの領としても、建前はともかく、結果的に受け取るべきものは受け取ったと言えるので、最低限の面目は立つ。
こうして種々の取り決めを、数回のやり取りを重ねて行い、砦にガッドの冒険者ギルド支部の派出所の設置が決定した。なお、盗賊騒動の反省も踏まえて、砦を拡張し、冒険者など外部の者が訪れる区域と、うちの騎士団の本部や魔法武具を保管する倉庫、調理場などがある区域とを分けた。前者は、これまで通りのあまり威圧感のない警備体制を。後者は、ゴーレムが大量に徘徊している状態 —といっても、うちの領民にとっては見慣れた光景だが— の警備体制を敷いた。
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冒険者ギルドとの交渉も終わり、派出所の運用も始まって少しして、砦に初めての公式な来客があった。バイズ公爵領の騎士団長オランドさんを筆頭に騎士団の面々だ。お隣さんの騎士団同士、盗賊や魔獣対策の一環として、交流を図ろうというものである。といっても、うちの騎士団の幹部たちのほとんどが、元々はバイズ公爵領の騎士団に所属していた者たちだ。そのため、向こうの思惑としてはうちの騎士団の力量チェックの面が強いのだろう。
こちらとしても、バイズ公爵領の騎士団には騎士ゴーレムを含めたうちの騎士団の戦力をお披露目、というか見せつける機会を探していたので、この提案に応じたのだ。それにうちの騎士団の幹部たちは、部下を率いて戦うのは初めてな者も多い。そこで、騎士団としての練度では遠く及ばないであろうバイズ公爵領の騎士団との交流は、うちの騎士団にとっても得るものは多いと思う。
そんなわけで、バイズ公爵領の騎士団の訪問を受ける当日。一応挨拶くらいはと思い、私も砦を訪れていたところ、思わぬ同行者がいた。
「ラムスさん!? 騎士団の訪問と聞いていたんですけど・・・」
「お久しぶりです、コトハ殿。事前の連絡も無く訪れた無礼をお詫びさせてください」
「それはいいんですけど・・・」
まさかラムスさんも来るとは。砦に来ておいてよかった・・・
私がラムスさんと言葉を交わす間、マーカスとオランドさんが騎士団長同士言葉を交わしている。騎士たちもそれぞれ顔馴染みと挨拶を交わしている。しかし、バイズ公爵家の騎士団はみんな、チラチラと後ろに控え整列している騎士ゴーレムの方に視線をやっている。ラムスさんもだ。
「それではラムスさん。それにバイズ公爵領の騎士団のみなさんも。クルセイル大公領の砦へようこそ。歓迎します」
そう言って、砦の中へと案内した。
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