危険な森で目指せ快適異世界生活!

ハラーマル

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第4章:新たな日々

第173話:滞在場所

明けましておめでとうございます。
本年も、よろしくお願いします。


~以下、本文~

応接室に入り、森で採れた葉を用いたお茶が出された。
それを受け取り、互いに味わってから、ラムスさんが話を始めた。

「まずは、元々お話ししようと考えていた内容から。約2ヶ月後に王都キャバンにて行われる建国式典ですが。コトハ殿、クルセイル大公殿下もご出席いただけますでしょうか?」
「うん。約束していたし、そのつもりだよ。レーノの指示で、いろいろ準備を始めていて、1ヶ月後くらいには出発する予定」
「ありがとうございます。安心しました。それに関連していくつかお伺いします。まず、王都での滞在場所に、心当たりはありますか?」

滞在場所。これは、レーノと2人で相当悩んだ問題だ。基本的に領地を持つ貴族は、領地にある屋敷の他に複数の屋敷を所有している。当然、爵位や財力によってその数や大きさは異なるが、必ず1つは領地外に屋敷を持つ。そしてほとんどが王都になる。

今回の式典は少し例外だが、領地を治める貴族が王都へ行く必要がある場面は、それなりに出てくる。王城から呼び出しがあったときはもちろん、複数の貴族と交渉するときや大きな商会と交渉するとき、そして貴族の社交シーズンなどだ。そうして王都に向かった貴族は、王都にある屋敷に滞在する。

しかしクルセイル大公領には、王都に屋敷など無い。王都キャバンへは初めて行くし、そもそもクルセイル大公領ができたばかりだから。そのため、今回王都へ向かった際に、今後に備えてお屋敷を1つ、購入する予定であった。幸いお金はあるしね。しかし、それまでは先に王都へ行かせた騎士に、宿を取っておいてもらおうかと考えていたのだが・・・

「それはオススメしません」

私たちの計画は、ラムスにすげなく却下された。
というのも、

「現在、王都に屋敷が無い貴族はそれなりにいます。旧ラシアール王国の王都には屋敷があったわけですが、それまではカーラ侯爵領の領都に過ぎなかったキャバンに屋敷を持っていたのは、よほど関係の強かった貴族のみです。加えて、今回、法衣貴族から領地持ちの貴族へ至った者も多くおります。正式な叙爵はまだですが、ほとんどが各領地での仕事を始めています。ですので、コトハ殿と同じく、王都に屋敷が無く、宿に宿泊することを考えている貴族は多いのです。そして、経済都市であったキャバンには宿が多かったのですが、現在、王都として大規模な改修作業中で、休業している宿が多くあります。そのため、宿をとるのが極めて難しいかと思われます」

・・・・・・なるほど。
貴族の事情はなんとなく理解していて、考えてもいた。しかし、想定よりも同じ状況の貴族が多いようだ。
貴族の移動となると、それなりの規模での移動になる。うちの場合も、以前レーノに諭されたように、私だけが飛んでいくなんてことはできず、騎士団や文官組、レーベルらも一緒に行くことになる。そうすると、宿は直ぐに一杯になるわけだ。

加えて、建国式典という一大イベントなだけあって、国の内外から冒険者や商人が物見遊山や商売に訪れる。彼らもまた、宿を利用する。
到着次第、屋敷を購入するというのも、王都の改修に伴い、貴族の屋敷が多く集まるであろう、いわゆる貴族街を整備中なため、難しい。

いきなり、かなりの難題を突きつけられたのだが、

「そこでコトハ殿には、2つ、提案させていただきたく思います」
「提案?」
「はい。1つは、バイズ公爵領の屋敷に滞在するという案です。バイズ公爵家は、カーラルド王家、元はカーラ侯爵家と古くより結び付きが強い間柄でした。そのため、キャバン内にいくつも屋敷を保有しており、改修に関係しない、といいますか、うちの屋敷が貴族街の中心になっております。またそれなりに広さもありますので、クルセイル大公領の皆様が滞在することもできるかと」
「・・・なるほど」
「2つ目は王城です」
「王城!?」
「はい。王城と言いましても、領主の屋敷があった場所の周辺を大規模に買い上げ、王城を作っている最中ですが。しかし、式典を行う大広間を含め、既に完成しているものも多数あります。その中に、来客用の建物もあり、そこに滞在するという案です。ちなみに、これは国王陛下と宰相である父からの提案です」

なんとも、まあ、大それた提案をしてくるもんだ。
もう少し聞いてみたところ、両案ともに一長一短であった。
バイズ公爵家のお屋敷を借りる案では、王城とは違い過ごすのは楽そうだ。しかし、仮にも大公である私が、爵位的には下位である公爵家の屋敷を借りるというのは、貴族的には恥ずかしいことになるらしい。
では、王城はどうか。王城には、日夜大勢の来客が訪れる。そして、国王や有力貴族へ会おうと画策してくる。大公であれば、その対象になるのは必然だ。一方で、大公位の者が王城に滞在するのは変ではない。というのも、「大公」という爵位は、一国の主となっていても不思議ではないほど高い爵位であり、王家と同格か近しい扱いを受けることも珍しくない。そのため、王城の来客用の建物への滞在は、貴族的には常識的な話になるわけだ。


ラムスさんに断って、少し離れたところでレーノ、レーベルと相談した。
2人とも、王城を勧めてきた。その理由として一番は、他の貴族からどう見られるか、だ。大変面倒くさいが、その観点で見れば王城一択だろう。加えて、バイズ公爵家にあまり借りを作りすぎるのも良くないとのこと。もちろんアーマスさんやラムスさんと揉めるつもりはないが、どう転ぶか分からないのが貴族だ。いたずらに世話になるのは避けるべきだという。

そんなわけで、「王城で」とお願いすると、レーノやレーベルからそう助言されることを読んでいたのか、驚いた様子もなく、「父に伝えておきます」と言われた。


それから、王都へ向かう道中の話や、建国式典の大まかな内容、他国からの来客の予定などを説明された。
これに関してラムスさん、というかアーマスさんから2つ頼み事をされた。

1つ目は道中の話。私たちにはできるだけ戦力を見せつけてほしいとのこと。騎士団はもちろん、マーラたちやシャロンなど私たちの従魔も同行し、とにかく強大な戦力をアピールしてほしいと言われた。大公である私には他の新しい貴族よりもインパクトが欲しいのに加えて、カーラルド王国最高戦力であるクルセイル大公の武威を示してほしいとのことだ。騎士団の運用に金が必要ならそれは国で負担するとまで言われたし、その予定ではあったので「できるかぎり」と答えておいた。
うちにはホムラがいるし、普通の馬の1.5倍以上の体躯を誇るマーラたちや、ポーラの従魔だが見るからに上位生物のシャロンもいる。ただ、パニックになる気もするけど・・・

2つ目は式典について。私はいくつかの式典に出ればいい。何か話す必要も無い。唯一、爵位を授与される場面で、下手に出る必要は無いが、「これからよろしく」的な言葉を国王であるハールさんに返してほしいとのこと。それくらいは構わないので、応じておいた。まあ、レーノが「後ほど文言を考えます」と耳打ちしてきたけど・・・

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