危険な森で目指せ快適異世界生活!

ハラーマル

文字の大きさ
215 / 370
第4章:新たな日々

第190話:敵の規模

スーンを出発した私たちは、目的の魔獣・魔物の群れがいる荒野を目指して進んでいた。
馬車が5台に30以上の騎馬からなる討伐軍だ。ただ、予想されている敵の規模からするとこちらの戦力は少なく見える。そのため、私たちを見送ったサイル伯爵領の騎士団の騎士たちや招集された兵士たちの目には、不安や戸惑いが見てとれた。

サーシャと一緒に来ているサイル伯爵領の騎士団の部隊、10人の騎士からなる部隊の騎士たちも似たような様子だった。ただ、部隊を率いる隊長さんのノバクさんは、どうやら私たちやシャロン、ホムラを見て何やら感じ取ったようで、騎士たちに声をかけて黙らせていた。

私の馬車には、サーシャとポーラ、レビンとサーシャさんお付きのベスさんというメイドさんが乗り込んでいる。

「ねえ、コトハ。本当にポーラちゃんも戦うの?」
「ん?」
「いや、だって。どう見てもポーラちゃんは元気な女の子にしか見えないから・・・」
「ああ。気持ちはわかるけどね。けど、ポーラも結構強いよ。ね、ポーラ」
「うん! サーシャ姉ちゃん、心配しないで! コトハ姉ちゃんには勝てないけど、ポーラも魔法得意だから」
「そ、そう。いや、お節介だったわね・・・」
「ううん。そう思うのは普通だと思うから。大丈夫だ・・・・・・よ」
「・・・コトハ?」

え? 何これ。

「ちょっとごめん。一回集中させて」

よく分からない様子のサーシャたちを無視して、私は感覚を研ぎ澄ます。
意識の先は、私たちの目的地。魔獣・魔物が街道にも多く出没しているとのことで、魔力感知を発動させて警戒していた。その魔力感知に突如としてもの凄い数の魔力の反応を感知したのだ。

すぐに『龍人化』を発動させ角を出す。

「それがコトハの種族の・・・」

サーシャがなんか反応しているが構っている余裕はない。サーシャやサイル伯爵家の人たちには私たちの種族を説明してあるが、目の前で『人間』には無い部分を出せば、やはり驚くのだろう。

『龍人化』の角により魔力のコントロール精度を高め、慎重に魔力を読み取っていく。クライスの大森林での訓練やここまでの道中で魔法感知を使い続けた結果、私の魔力感知の精度はかなり高くなっている。魔力感知自体は、レーダーのように魔力反応がある場所までの距離や方角を示すわけではないが、試行回数を重ねることで大まかな距離や方角は把握できるようになっている。それに魔力の強さから、魔獣・魔物の種類も分かるようになってきた。まあ、初見の相手では無理だが。

そんな私の魔力感知には、200、300どころではない数の反応があった。ざっくり数えて1000は超えている。距離は私たちの進行方向に2キロほど。種類としてはオークやゴブリン、ウルフ系がいるのは確認できた。あとは知らないのも多くいる。
そしてその先。一番遠いところに、フォレストタイガーの魔力よりも強い魔力を感じる。これが支配階級ってやつ?

私は馬車の窓から顔を出し、マーカスを呼んだ。

「お呼びでしょうか、コトハ様」
「マーカス、一旦みんなを止めて。ちょっと予定が変わった」
「え? ・・・承知しました。おい、一旦止めろ!」


馬車を止めて、指揮官たちで集まる。私にカイトたち、マーカスにジョナス、サーシャにノバクさんだ。

「それでコトハ様。予定が変わったとは?」
「うん。正確な数は分からない。けど、この先にいる敵の数は200、300なんてもんじゃない。少なくとも1000。それ以上いるかもしれない」
「「「なっ」」」
「そ、それは本当なのですか。報告では・・・」

当然の疑問を口にしたのはノバクさんだ。昨日トメライさんが説明してくれた情報は、サイル伯爵領の騎士が、文字通り命がけで調査した内容だ。だからこそ、それがあっさり否定されるのは驚きなのだろうが・・・

「うん。詳しくは説明できないけど、間違いない。どう考えてももっといる。それに奥にはかなり強いのも。少なくともフォレストタイガーよりは強い」
「支配階級・・・」
「たぶんね。種族は分かんないけど、圧倒的に強いのは確か」

私の説明に、一同は言葉を失っている。いや、失っているのはサーシャとノバクさんか。荒野の敵が予想の数倍以上いる。それ即ち、私たちの作戦が失敗し、領を救えないことが近づくからだ。

しかし、マーカスたちはそうではない。

「して、コトハ様。どのようになさるおつもりですか?」
「そうだねー・・・」
「待ってコトハ。戦うの?」
「そりゃあ、私たちの担当だし。あんな大見え切ったんだから責任もって対処するよ」
「・・・・・・コトハ」
「とはいえ、やり方は変える必要があるよね。元々は、私、ポーラ、ホムラが魔法で大雑把に道を開きながら討ち漏らしを騎士たちが始末する予定だったけど・・・」
「1000体もいたらそれは難しいよね」
「うん。カイトの言うように、討ち漏らしの数が多くなり過ぎる。そうすると騎士団の負担が増えるし、危険も増す。そんなわけで、最初に私たち3人で魔法を撃ちまくる。空中から下に向かってひたすら魔法を撃ち込む。これでどれだけ減らせるかは分かんないけど、対処可能な数までもっていきたい」
「僕たちが戦うのはその後ってこと?」
「うん。空中から魔法をばら撒くのは、敵の数が多いことを利用してとにかく威力重視で狙いは適当にやる。そうすると、味方にも当たりかねないから」
「では我々は・・・」
「敵が集まってる場所の立地がよく分かんないんだけど、逃げられないようにできないかなって」
「そうですな。数はともかく、個々の魔獣・魔物の強さは一般的なものであるとすれば、コトハ様方の放つ魔法が降り注げば逃げ出す個体がいても不思議ではないですな。いや、かなりの数になるでしょう。そうすると、多くの討ち漏らしが生じる・・・」
「そゆこと。昨日の会議では、荒野の大まかな地形は説明されたけど・・・。この先2キロ地点の地形って分かる?」
「ノバク殿。どうでしょうか」
「はい。大まかな距離と1000体もの敵がいることを考えると、荒野の中心部にある大きな窪みだと思います。荒野は岩山が連なる地形ですが、その中心部には楕円形状の大きな窪みがあります」
「昨日、支配階級がいるかもって言ってた洞窟に繋がる?」
「仰る通りです。窪みへ降りるには3つの道があったと記憶しております。その他にも、細い道が複数ありますが、大きな魔獣・魔物が通れるのは3つかと」
「・・・逆に言えば、ゴブリン程度が逃げる道はたくさんある?」
「・・・はい」
「マーカス」
「そうですな。とりあえず、その3つの道は騎士団とカイト様方が分かれて対処するほかないでしょう。細かい道については・・・・・・」

諦めるしかない、か。
幸い逃げられそうなのはゴブリンやグレーウルフくらい。できることなら始末したいが、逃げられても被害が少ない相手だといえる。
私たちが諦めムードになっていると、

「あ、あの。私の魔法で細い道を塞ぐことはできないでしょうか」

サーシャがそんなことを言い出した。
確かに道を塞ぐことで逃げられる敵の数を減らせるけど・・・

「道を塞ぐって、『土魔法』で?」
「うん。昨日言った得意な魔法って『土魔法』なの。あとは『風魔法』。ゴブリンが通れないように道を塞ぐくらいはできるわ」
「・・・それなら。マーカス、騎士にも『土魔法』使える人いたよね」
「はい。今回同行している中では・・・4人です」
「よし。それじゃあ、サーシャとうちの4人の騎士で細い道を塞いで回ろう。カイトたちもお願い。戦う体力や魔力は残すように注意してね。全部塞ぐのは難しいし、そもそも壁をよじ登られる可能性もあるから討ち漏らしを完全には防げないけど、数は減らせるはず。カイト、マーカス準備して。サーシャもお願い」
「分かった!」
「はっ!」
「うん!」

とりあえず道筋は見えた。作戦としては穴が多いだろうし、どこまで計画通りに行くか分かんないけど、やれるだけのことをやるしかない。
細い道をどれだけ塞げるか、それが逃げ狂う魔獣・魔物の攻撃にどれだけ耐えられるかは分からない。ただ、1体でも多く始末するために、全力でやるしかない。
とりあえず、私も準備しないと・・・

感想 126

あなたにおすすめの小説

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~

ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国辺境でただ静かに生き延びたいだけの少年・ヴァン。 彼に正義感はない。あるのは、母が遺したノートに記された、物理法則を応用した「高圧魔力」の理論と、徹底した費用対効果至上主義だけだ。 敵国三千の精鋭が灰燼城に迫る絶望的状況。ヴァンは剣を振るわず、心理戦と補給線攪乱だけで、たった三日で敵軍を撤退させる。 この効率的すぎる勝利は帝国の中枢に届き、彼は最高峰の帝国軍事学院への招待状を手に入れる。 「英雄になりたいわけじゃない。ただ、母の死の真相と父の秘密を知るため、生き残らなきゃならないだけだ」 無口最強の仮面メイド・シンカク、命を取引に差し出した狼耳少女・アイリ。彼は常にコスパの高い道を選び、母の遺したノートの謎、そして生まれて一度も会ったことのない父・帝国大元帥のいる帝都の闇へと踏み込んでいく。 正義も英雄も、損をするなら意味がない。合理主義が英雄譚を侵食していく、反英雄ミリタリー学園ファンタジー。

本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい! ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット” ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで? 異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。 チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。 「────さてと、今日は何を読もうかな」 これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。 ◆小説家になろう様でも、公開中◆ ◆恋愛要素は、ありません◆

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。 転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。 - 週間最高ランキング:総合297位 - ゲス要素があります。 - この話はフィクションです。