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第5章:建国式典
第207話:図書館
さすがは王城ということもあり、私たちの滞在している部屋から図書館まではかなりの距離があった。王城は大きく「口」の字型の4階建ての建物があり、その中心にはカイトたちが訓練をしている広い庭がある。他にもうちとは別の騎士団が訓練をしているのが見える。
そして「口」の字の各辺のうち、正門を入って直ぐの場所には、多くの部屋がある。その広さは大小様々だが、昨日私たちが使った応接室をはじめ、会談用の部屋や上層階には私たちが借りている客間もある。
その両サイド、正門から見て右手に軍部、左手に財務部等の文官が詰める区画がある。その
奥にあるのが、謁見の間やそれに続く国王の執務室、会議室、各大臣や貴族の執務室などだ。
そしてその更に奥にあるのが、王家のプライベート空間。ここは、王家と王家の世話をする者、近衛騎士などごく一部の者を除き入ることができない。もちろんそれは貴族であっても関係ない。
私が向かっている図書館は、王城の左手の奥にある。そのため、滞在している客間から文官が詰める場所を突っ切っているのだ。
とはいえ1階に降りてから進んでいるので、働いている文官と出会うことはあまりなく、たまに貴族やその従者と思しき人とすれ違う程度だった。すれ違った貴族たちは、私のことを不思議そうに見ていたが、近衛騎士が先導しているのを見て、触れてはいけないと判断したのか、足早に立ち去っていった。
しかし、そんな貴族たちとは異なる行動を取った者がいた。
貴族の令嬢っぽい真っ赤なフリフリのドレスに身を包み、綺麗な金髪を高い位置で2つ結びにした同い年くらいの女性とすれ違ったときだった、
「あ、あの。失礼ながら、貴方様がクルセイル大公殿下であらせられますか?」
と、声を掛けてきたのだ。
面識は無いと思うし、私のことを知っている貴族もほとんどいないと思うんだけど・・・
「うん、私がクルセイル大公だけど・・・。あなたは?」
「失礼いたしました。私はメアリ・フォン・シャルガムと申します。シャルガム侯爵の長女にございます。私からお声かけをいたしましたご無礼、平にご容赦ください」
と言って頭を下げてきた。
そういえば、地位が下の者が上の者に声を掛けるのはマナー違反なんだっけ?
別に私は気にしないけど、それに対するお詫びってことね・・・
「それは別に構わないんだけど・・・。何かご用?」
「は、はい。昨日の兄の非礼をお詫びいたしたく思います」
兄・・・・・・?
この人、メアリさんはシャルガム侯爵の長女って言ってたっけ? ということは・・・・・・・・・・・・、グレイブさんの妹さんになるのか。ギリギリ覚えてたな・・・
「えっと、グレイブさんのこと?」
「はい。昨日は、我が兄が、クルセイル大公殿下に対し、無礼な発言をしたとのこと。兄に代わり、心からお詫び申し上げます」
と言って、再び深く頭を下げた。
事情はともかく、大貴族の令嬢に頭を下げさせるのは、居心地の悪いものがある。私はともかく、彼女のことを知っている人は多いのだろうし、少し注目を集めている。
「バンさん。どこか空いてる部屋ってあります?」
先導してくれていた近衛騎士の1人、バンさんに聞いてみた。ちなみにバンさんは、ギブスさんの三男だ。そういえば王都で近衛騎士として働いていると聞いていた気がする。見ず知らずの者より、知り合いの関係者の方が気も楽だろうとアーマスさんの気遣いで、私たちの護衛に回してくれたのだ。
「はっ。ご案内いたします」
そう言って私たちとメアリさんを案内してくれた。
部屋に入った私たちはソファーに向かい合って座る。この部屋も、昨日ほどではないが豪華な部屋だった。
「それじゃあ、改めて。コトハ・フォン・マーシャグ・クルセイルよ。大公位に就いているわ」
「は、はい。メアリ・フォン・シャルガムにございます」
「うん、よろしくね。それで先に言っておくけど、昨日のお兄さんの件は全く気にしてないから大丈夫だよ。グレイブさんの言葉にも一理あったしね。だから、気にしなくて大丈夫」
「は、はい。ありがとうございます。クルセイル大公殿下の寛大なお心遣いに感謝申し上げます」
「うん。ああ、コトハでいいよ。私もメアリさんって呼んでいい?」
「はい、もちろんでございます。コトハ様」
「・・・まあ、いいや。それより、メアリさんは、何か用事があったんじゃないの?」
「あ、そ、そうでした・・・」
「私も用事があるし、今日はこれで。また今度ね」
「はい。改めて、ありがとうございました」
そう言って再び頭を下げるメアリさんに別れを告げて、図書館へと向かった。
♢ ♢ ♢
図書館に到着した私は、その本の多さに驚いていた。
多くの本棚が立ち並び、その全てにたくさんの本が収められている。
「コトハ様。お探しの本はどういった本なのですか?」
そうマーカスに聞かれた。
ちなみに、近衛騎士2人とうちの騎士2人は図書館の入り口で待機している。大人数で入っても迷惑になると思ったのだ。
「うん。いろいろあるけど、常識っていうか、人々の暮らしに関する本かな。それと、魔法に関する本。私はそういった常識に疎いし、魔法も独学だからさ。一度、きちんと学んでみたいなって」
「承知しました。暮らしに関する方は、貴族の初等教育に用いられる本があったかと思います。魔法に関しては、魔法師団の訓練に用いられる本があります。それらを探して参ります」
「うん、お願い。私も少し見て回るから、机に集めといてね」
「はっ」
想像していたよりも多くの本が並べられているのに驚きながら見て回る。
分類は結構細かく、旧ラシアール王国の伝説や歴史に関する本、暮らしに関する本、戦争に関する本など、多くの本が並べられていた。
歴史に関する本を見てみたが、前にカイトから聞いたラシアール王国建国に関する伝説について書かれた本だった。試しに読んでみたが、どう考えても旧ラシアール王国の良いように創られた話に思える。よく考えれば、表現の自由など無いわけで、自由な内容の本が出回るわけないか・・・
試しに私のご先祖、『古代龍族』に関する本がないかと思ったが、見当たらなかった。そもそも、『古代龍族』について知ってる人すらいなさそうだし、『古代龍族』が滅んだのは10万年以上も前だという。書物に残っていなくても不思議じゃないか。
一通り図書館を見て回ったところで、机が置かれている場所に向かった。
既にマーカスが本を集めてくれており、5冊ほどの本が置かれていた。
「マーカス、集まった?」
「はい。こちら2冊が、民の暮らしを知るために、貴族の子女が勉強の最初に読むことが多い本になります。そしてこちらの3冊が、魔法について書かれた本になります。こちらが、魔法の原理に関する本。こちら2冊が、呪文と発動させる魔法を纏めた、魔法の辞典になります」
「おお。ありがとう。そういえばこの本って借りられるの?」
「はい。一定以上の地位にある者であれば借りることができるそうです」
「そっか。私は大丈夫・・・だよね?」
「はい。コトハ様が無理なら、可能な者など王族くらいになりますし・・・。バン殿に頼んで、図書館を管理している者にコトハ様のことを紹介してもらい、借りるとしましょう」
バンさんに頼んで、私が大公であることを証明してもらった。
図書館の司書さんは、私が大公だとしって仰天していたが、直ぐに気を取り直して手続をしてくれた。
バンさんたちに付いてきてもらって助かった。
部屋に戻り、読んでみることにした。
生活に関する本は、さすがは平民の暮らしを知らない貴族向けの本ということもあって、物の価値に関する話や仕事の話、農業や狩りについてなど、多くのことが書かれていた。この世界の常識に疎い私は、学びたての貴族と変わらないかそれ以下なのだろうから、丁寧な説明の本は助かった。
そして「口」の字の各辺のうち、正門を入って直ぐの場所には、多くの部屋がある。その広さは大小様々だが、昨日私たちが使った応接室をはじめ、会談用の部屋や上層階には私たちが借りている客間もある。
その両サイド、正門から見て右手に軍部、左手に財務部等の文官が詰める区画がある。その
奥にあるのが、謁見の間やそれに続く国王の執務室、会議室、各大臣や貴族の執務室などだ。
そしてその更に奥にあるのが、王家のプライベート空間。ここは、王家と王家の世話をする者、近衛騎士などごく一部の者を除き入ることができない。もちろんそれは貴族であっても関係ない。
私が向かっている図書館は、王城の左手の奥にある。そのため、滞在している客間から文官が詰める場所を突っ切っているのだ。
とはいえ1階に降りてから進んでいるので、働いている文官と出会うことはあまりなく、たまに貴族やその従者と思しき人とすれ違う程度だった。すれ違った貴族たちは、私のことを不思議そうに見ていたが、近衛騎士が先導しているのを見て、触れてはいけないと判断したのか、足早に立ち去っていった。
しかし、そんな貴族たちとは異なる行動を取った者がいた。
貴族の令嬢っぽい真っ赤なフリフリのドレスに身を包み、綺麗な金髪を高い位置で2つ結びにした同い年くらいの女性とすれ違ったときだった、
「あ、あの。失礼ながら、貴方様がクルセイル大公殿下であらせられますか?」
と、声を掛けてきたのだ。
面識は無いと思うし、私のことを知っている貴族もほとんどいないと思うんだけど・・・
「うん、私がクルセイル大公だけど・・・。あなたは?」
「失礼いたしました。私はメアリ・フォン・シャルガムと申します。シャルガム侯爵の長女にございます。私からお声かけをいたしましたご無礼、平にご容赦ください」
と言って頭を下げてきた。
そういえば、地位が下の者が上の者に声を掛けるのはマナー違反なんだっけ?
別に私は気にしないけど、それに対するお詫びってことね・・・
「それは別に構わないんだけど・・・。何かご用?」
「は、はい。昨日の兄の非礼をお詫びいたしたく思います」
兄・・・・・・?
この人、メアリさんはシャルガム侯爵の長女って言ってたっけ? ということは・・・・・・・・・・・・、グレイブさんの妹さんになるのか。ギリギリ覚えてたな・・・
「えっと、グレイブさんのこと?」
「はい。昨日は、我が兄が、クルセイル大公殿下に対し、無礼な発言をしたとのこと。兄に代わり、心からお詫び申し上げます」
と言って、再び深く頭を下げた。
事情はともかく、大貴族の令嬢に頭を下げさせるのは、居心地の悪いものがある。私はともかく、彼女のことを知っている人は多いのだろうし、少し注目を集めている。
「バンさん。どこか空いてる部屋ってあります?」
先導してくれていた近衛騎士の1人、バンさんに聞いてみた。ちなみにバンさんは、ギブスさんの三男だ。そういえば王都で近衛騎士として働いていると聞いていた気がする。見ず知らずの者より、知り合いの関係者の方が気も楽だろうとアーマスさんの気遣いで、私たちの護衛に回してくれたのだ。
「はっ。ご案内いたします」
そう言って私たちとメアリさんを案内してくれた。
部屋に入った私たちはソファーに向かい合って座る。この部屋も、昨日ほどではないが豪華な部屋だった。
「それじゃあ、改めて。コトハ・フォン・マーシャグ・クルセイルよ。大公位に就いているわ」
「は、はい。メアリ・フォン・シャルガムにございます」
「うん、よろしくね。それで先に言っておくけど、昨日のお兄さんの件は全く気にしてないから大丈夫だよ。グレイブさんの言葉にも一理あったしね。だから、気にしなくて大丈夫」
「は、はい。ありがとうございます。クルセイル大公殿下の寛大なお心遣いに感謝申し上げます」
「うん。ああ、コトハでいいよ。私もメアリさんって呼んでいい?」
「はい、もちろんでございます。コトハ様」
「・・・まあ、いいや。それより、メアリさんは、何か用事があったんじゃないの?」
「あ、そ、そうでした・・・」
「私も用事があるし、今日はこれで。また今度ね」
「はい。改めて、ありがとうございました」
そう言って再び頭を下げるメアリさんに別れを告げて、図書館へと向かった。
♢ ♢ ♢
図書館に到着した私は、その本の多さに驚いていた。
多くの本棚が立ち並び、その全てにたくさんの本が収められている。
「コトハ様。お探しの本はどういった本なのですか?」
そうマーカスに聞かれた。
ちなみに、近衛騎士2人とうちの騎士2人は図書館の入り口で待機している。大人数で入っても迷惑になると思ったのだ。
「うん。いろいろあるけど、常識っていうか、人々の暮らしに関する本かな。それと、魔法に関する本。私はそういった常識に疎いし、魔法も独学だからさ。一度、きちんと学んでみたいなって」
「承知しました。暮らしに関する方は、貴族の初等教育に用いられる本があったかと思います。魔法に関しては、魔法師団の訓練に用いられる本があります。それらを探して参ります」
「うん、お願い。私も少し見て回るから、机に集めといてね」
「はっ」
想像していたよりも多くの本が並べられているのに驚きながら見て回る。
分類は結構細かく、旧ラシアール王国の伝説や歴史に関する本、暮らしに関する本、戦争に関する本など、多くの本が並べられていた。
歴史に関する本を見てみたが、前にカイトから聞いたラシアール王国建国に関する伝説について書かれた本だった。試しに読んでみたが、どう考えても旧ラシアール王国の良いように創られた話に思える。よく考えれば、表現の自由など無いわけで、自由な内容の本が出回るわけないか・・・
試しに私のご先祖、『古代龍族』に関する本がないかと思ったが、見当たらなかった。そもそも、『古代龍族』について知ってる人すらいなさそうだし、『古代龍族』が滅んだのは10万年以上も前だという。書物に残っていなくても不思議じゃないか。
一通り図書館を見て回ったところで、机が置かれている場所に向かった。
既にマーカスが本を集めてくれており、5冊ほどの本が置かれていた。
「マーカス、集まった?」
「はい。こちら2冊が、民の暮らしを知るために、貴族の子女が勉強の最初に読むことが多い本になります。そしてこちらの3冊が、魔法について書かれた本になります。こちらが、魔法の原理に関する本。こちら2冊が、呪文と発動させる魔法を纏めた、魔法の辞典になります」
「おお。ありがとう。そういえばこの本って借りられるの?」
「はい。一定以上の地位にある者であれば借りることができるそうです」
「そっか。私は大丈夫・・・だよね?」
「はい。コトハ様が無理なら、可能な者など王族くらいになりますし・・・。バン殿に頼んで、図書館を管理している者にコトハ様のことを紹介してもらい、借りるとしましょう」
バンさんに頼んで、私が大公であることを証明してもらった。
図書館の司書さんは、私が大公だとしって仰天していたが、直ぐに気を取り直して手続をしてくれた。
バンさんたちに付いてきてもらって助かった。
部屋に戻り、読んでみることにした。
生活に関する本は、さすがは平民の暮らしを知らない貴族向けの本ということもあって、物の価値に関する話や仕事の話、農業や狩りについてなど、多くのことが書かれていた。この世界の常識に疎い私は、学びたての貴族と変わらないかそれ以下なのだろうから、丁寧な説明の本は助かった。
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