危険な森で目指せ快適異世界生活!

ハラーマル

文字の大きさ
256 / 370
第5章:建国式典

第230話:信じ難い事情

~ミィーナ視点~

『ブラッドウルフ』が本当に去ったことを確認し、救助した4人を確認する。
コニーたちが、依然周囲を警戒している。

「えっと、大丈夫ですか?」

私の声かけに対して、

「は、はい。ありがとうございます」

答えたのは黒髪の女性。瞳の色も黒なのは珍しい。
他の2人も同じく黒髪に黒い瞳だ。1人だけ、茶髪の女の子がいる。年齢は同い年くらい? ちなみに私は24歳だ。そろそろ結婚しないと危険な年齢に差し掛かっている・・・

それはともかく、彼女たちだ。彼女たちはどう見ても冒険者ではない。武器も持っていないし、防具も身に付けていない。2人が紺色の服を着ている。だがそのスカートは・・・、短くない? 膝より短いスカートなんて・・・
残りの2人は、1人が黒っぽい服なんだけど、下はズボンだ。元は白だと思うシャツの上に、黒い服を着ている。最後の1人は、ワンピースのような感じ。貴族のお嬢さんとかお金持ちの子が夜に着ているような感じだ。どう考えても外出する、ましてや町から出るときにする格好ではない。


こんなところに留まるのは、得策ではない。『ブラッドウルフ』が戻ってくるかもしれないし、別の魔獣・魔物が出てくるかもしれない。けど、彼女たちのことを聞かずに連れて行くわけにも行かない。

「えっと、私はミィーナ。それから、コニー、フーラ、メイル、カナラ。・・・それで、あなたたちは?」

とりあえず自己紹介をしつつ、名前を聞いてみる。

「あ、はい。私は長峰結葉です。こっちが藤嶋佳織。それと、田中碧さんに、安藤美緒さんです」

と名乗ってくれた。くれたんだけど・・・
名字!? それも全員!?

「し、失礼しました! 貴族様だとは知らず」

慌てて頭を下げたのだが、

「あ、頭を上げてください。貴族なんかじゃないです! すいません、私たちの住んでいたところでは、名字もあるのが当たり前だったんです」
「そ、そうなんですか?」
「はい」

話している感じ、この長峰結葉さんという女性が、4人のリーダーみたいだった。それぞれ、ユイハさん、カオリさん、アオイさん、ミオさんと呼ぶことになった。どうやら本当に名字に特別な意味があるわけではないようで、こちらに合わせて名前だけで呼ばせてもらうことになった。


それからユイハさんたちの事情を聞いたのだが・・・・・・・・・、にわかには信じ難いものだった。「ダーバルド帝国によって異世界から召喚され、逃げてきた」、要約すればこんな感じなんだけど・・・

「えっと、そしたら、ダーバルド帝国から逃げてきて・・・、クライスの大森林を抜けたってこと・・・ですか?」
「はい、そうです」
「それで、カーラルド王国に保護を求めたい・・・、と?」
「はい。ここはカーラルド王国、なんですよね?」
「そうです。カーラルド王国の王家直轄領の端っこです」
「そ、そうですか。よかったぁー・・・」

そう言ってヘナヘナと触り込むユイハさん。他の3人も安堵の表情を浮かべている。
ダーバルド帝国から脱出し、クライスの大森林の中を3週間近く彷徨った。そして、クラリオル山からクライスの大森林に流れる川に沿って北上し、どうにか森から抜け出した。それに安堵し、人や町を探していたところで、森の出入口付近を縄張りにしている『ブラッドウルフ』に見つかり、どうにかここまで逃げてきた、ということらしい。

納得、というか正直理解が追いついていないが、とりあえず事情は確認できた。

「それで、ユイハさん。これからどうしますか?」
「それは・・・・・・。私たちは、カーラルド王国に逃げて、そこで兵士さんとか役人さんに事情を話して保護してもらおうと考えていたんですけど・・・」
「・・・うーん。今の話をどこまで信用してもらえるか微妙だと思います。正直に言えば、私も完全に信じることができていないので・・・。証拠とかって無いですよね?」
「はい・・・。このまま逃げてきましたから。食料とかは使い切ってしまって・・・。森を抜けるための道具を貰ったんですけど、それも壊れてしまって」
「そうですか・・・」
「あの。ここから一番近い町は、どこになるんですか?」
「山の方に行けば、砦があるんですけど、冒険者でもないと入ることはできないですね・・・。町となると、徒歩で1日くらいの距離にオーバンという町があります。それほど大きい町ではないですけど。オーバンから馬車で1日くらいで、王都に行くことができます」
「そうですか。そのオーバンという町で、事情を説明できそうな人は・・・」
「うーん、どうだろう・・・。冒険者ギルドのギルドマスターであれば、話は聞いてくれると思いますけど、そこから国の方に話が上がるかどうかって言われると・・・」
「・・・」

どうすればいいんだろう・・・。ユイハさんの話をギルマスに伝えたとして、彼がコネを使って知り合いの貴族に伝えてくれるかは分からない。彼は優秀な人だし、こっちの話をきちんと聞いてくれる人ではある。貴族の子息と一緒に旅をしていたこともあるらしく、貴族への人脈もある。けれど、彼といえどもここまで突飛な話を、貴族に伝えようとしてくれるかは・・・

「ユイハさん。とりあえず、オーバンに行きませんか? ギルマスが話を信じてくれるか、貴族に話してくれるかは分からないですけど、希望はあります。それに、とりあえず町に行って衣服を揃えて、今後のことを考えた方が・・・」
「そう、ですね。そうします。町に行ってから考えてみます」

どのみち私たちも、オーバンへ帰る予定だった。歩みは少し遅くなるが、彼女たちの案内兼護衛として、オーバンまで連れて行くことにした。


 ♢ ♢ ♢


通常の1.5倍ほどの時間を掛けて、オーバンに帰ってきた。
いつもなら、顔馴染みの門番に冒険者のカードを見せて簡単に中に入るのだが、今日は少し違う。ユイハさんたちを中に入れる必要があるが、当然彼女たちはカードを持っていない。カードを持っていない人、例えば初めて村から出てきた人なんかは、税を払えば町に入ることができる。しかし、見るからに事情がありそうなユイハさんたちを、簡単に町に入れてくれるとは思えない。

「こんにちは、デント」

私が代表して門番の男に声を掛けた。

それに対して門番のデントが、

「おお、赤き英雄じゃねぇか。予定よりも帰りが遅かったな」
「ええ。少しね。そのことで相談があるのよ。ボンダンさんはいる?」
「隊長か? ちょっと待ってろ」

そう言うと、デントは奥へと入っていく。もちろんユイハさんたちのことは認識していたが、私の話というのが彼女たちについてであると悟り、何も言わずに奥に向かった。

少ししてデントと、年配の男性が奥から出てくる。ここの入り口を守る兵をまとめるボンダンさんだ。

「ミィーナが用があるっていうから来たが・・・、後ろの嬢ちゃんたちについてか?」
「はい。相談がありまして・・・」
「・・・いいだろう。付いてこい」

そう言って詰め所の奥にある部屋に通される。
ここは怪しい訪問者が来たときに、話を聞くための部屋だ。何を隠そう、最初にこの町に来たときにも私たちはここに通された。結論から言えば誤解だったのだが、当時暗躍していた盗賊に風貌が似ていたらしく、その聴取だったわけだ。その際は、同じラヴァの村出身の騎士が、私たちの身元を保証してくれたので事なきを得たし、件の盗賊はそれから直ぐに討伐された。


「よし。ミィーナ。説明を」
「はい」

それから私は、ユイハさんたちの事情を説明した。「召喚された」という部分を除いて。

感想 126

あなたにおすすめの小説

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~

ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国辺境でただ静かに生き延びたいだけの少年・ヴァン。 彼に正義感はない。あるのは、母が遺したノートに記された、物理法則を応用した「高圧魔力」の理論と、徹底した費用対効果至上主義だけだ。 敵国三千の精鋭が灰燼城に迫る絶望的状況。ヴァンは剣を振るわず、心理戦と補給線攪乱だけで、たった三日で敵軍を撤退させる。 この効率的すぎる勝利は帝国の中枢に届き、彼は最高峰の帝国軍事学院への招待状を手に入れる。 「英雄になりたいわけじゃない。ただ、母の死の真相と父の秘密を知るため、生き残らなきゃならないだけだ」 無口最強の仮面メイド・シンカク、命を取引に差し出した狼耳少女・アイリ。彼は常にコスパの高い道を選び、母の遺したノートの謎、そして生まれて一度も会ったことのない父・帝国大元帥のいる帝都の闇へと踏み込んでいく。 正義も英雄も、損をするなら意味がない。合理主義が英雄譚を侵食していく、反英雄ミリタリー学園ファンタジー。

本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい! ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット” ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで? 異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。 チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。 「────さてと、今日は何を読もうかな」 これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。 ◆小説家になろう様でも、公開中◆ ◆恋愛要素は、ありません◆

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。 転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。 - 週間最高ランキング:総合297位 - ゲス要素があります。 - この話はフィクションです。