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第5章:建国式典
第236話:会議
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結葉さんたち4人は、うちの騎士とラヴァの娘の護衛付きで、借りている部屋に向かった。ラヴァの娘の5人にも2部屋貸したので、そこで休んでもらいつつ、護衛をお願いしよう。
まあ、さすがに王城の中で襲われるとは思えないけどね。
私たちも部屋に戻る。
部屋ではポーラがホムラとシャロンと戯れていた。
「ただいま、ポーラ」
「コトハ姉ちゃん! 大丈夫だった?」
と、開口一番聞いてくるポーラ。
そういえば、ポーラには事情を説明してなかったっけ?
「うん、大丈夫だよ。心配掛けてごめんね。それと、今日なんだけどさ・・・」
「お仕事?」
「う、うん。ちょっと、報告しないといけなくてね」
ポーラと出かける約束だったので、大変心が痛いが、さすがにこの話は早くする必要があると思う。
「大丈夫! それじゃあ、私がシャロンとホムラを連れて、王都の外に行ってくるよ! いい?」
と、ポーラが言い出す。
・・・・・・正直、私も一緒に行きたい。出かけたい、というのと、ポーラを1人にしたくはないという気持ちが共にある。
けれど、どれだけ時間がかかるかも分からないし、明日以降はちょくちょく予定が入っていると聞いている。
「・・・分かった。ジョナスと一緒にね。ホムラとシャロンをお願いね」
「任せて!」
と、ポーラ1人での外出を許可した。
それを聞いて、後ろではマーカスが早速、ジョナスと段取りの相談に入っていた。
「レーノ。ダンさんに、至急話があるの。ダーバルド帝国のことでね。なるべく早く会って話がしたいって伝えてくれる?」
「承知しました」
そう言うと、レーノも部屋から出て行く。
♢ ♢ ♢
ポーラは、ホムラにシャロン、護衛のジョナスと一緒に出かけていった。
それと入れ違いに、レーノが帰って来た。
「お帰り、レーノ。早かったね」
思っていたよりも戻ってくるのが早かったので聞いてみると、
「はっ。それが、ダン王子殿下もコトハ様に何やら用があるようでして。殿下の側近の方と、途中で会いまして。早速これから、ということになったのですが・・・」
「今から? いいよ、分かった」
そんな急だとは思っていなかったが、早く伝えるに越したことはないし、丁度いい。
マーカスとレーノと一緒に、指定された場所を訪れた。
部屋に入ると、
「待っていました、コトハ殿」
と、ダンさんが出迎えてくれた。
その部屋は、これまでの応接室とは違い、長方形型のテーブルが置かれており、その最奥に2つの空席があった。そして、テーブルの両サイドには、20人近くの貴族が座っており、立ち上がっている。
「えーっと、これは?」
私はダンさんとの個別の会談だと思っていたのだけど・・・
「これから、軍部の会議でして。ダーバルド帝国に関する重要な話もいくつかありますので、コトハ殿をお呼びした次第です」
ああ、なるほど。
ダンさんの話ってのは、この場に参加してってことか・・・
結葉さんたちの話をこの場でするのは憚られるので、それは後にして、とりあえず話を聞こうかな。
ダンさんに案内され、空いていた席の片方に座る。テーブルの上座には、ダンさんが座り、私はその横に座った。
まあ、こだわりも無いし、見知らぬ人の近くに座らされても困るので、黙って座ることにしよう。
最初は、出席している貴族の自己紹介から始まった。
私向けなのか分からないが、数人を除き見知らぬ人だったので、ありがたく聞いていた。ただ、間違っても覚えられたわけではない。
紹介が終わると、早速会議が始まった。
まず始めに、
「皆も聞いておろうが、我が国のダーバルド帝国対策は、コトハ殿、クルセイル大公が担当する。役職としては、『南方方面担当軍部顧問』になる。爵位はもちろん、軍部での役職としても、貴殿らの上に立つことになる」
と、ダンさんが宣言する。
さすがに一昨日のことを覚えているのか、文句を言う貴族はいない。というか、あの場で感じた不快な視線を感じることも無かった。そういえば、マーカスに調査を頼んだ、貴族たち。あの場で私に殺意や不快な視線を向けていた貴族たちは、この場にはいなかった。
ダンさんがこちらを見て、発言を促すので、
「ということなので、よろしく」
と挨拶しておく。
次に、
「では、早速。皆を集めた本題に入るとしよう」
と、話し出すダンさん。
そして、部屋の隅に座っていた1人の男性に目を向ける。
「メルト伯爵。報告を」
部屋の壁際には、それぞれの貴族の従者が多く座っている。うちのマーカスとレーノ、ダンさんのお付きの人なんかは、直ぐ側に座っているが、出席している貴族全員がそうすると、かなり窮屈だ。そこで、私たち以外の貴族のお付きの人は、部屋の隅で待機し、用事があるときだけ主人に近づき耳打ちなどをしている。
だが、メルト伯爵、と呼ばれたその男性の気配を感じ取ることができていなかった。いや、厳密には他の従者と同様に感知の対象にはなっていたのだろうが、本来の気配とはまるで違うものを感じ取っていた。
ダンさんに呼ばれ、ダンさんと私の座る上座の反対側に移動するメルト伯爵。それと同時に、彼の本来のオーラを感じることができた。待機していたときは、オーラを隠していたのだと分かるほどに、彼のオーラは強大だった。
移動しダンさんと私に向かって深々と頭を下げるメルト伯爵。
そして、
「ダン王子殿下、ありがとうございます。クルセイル大公殿下には、お初にお目にかかります。ご出席の皆々様方も」
そう挨拶する。
状況が理解できていない私に向かってダンさんが、
「コトハ殿。メルト伯爵は、バイズ公爵の下で実質的に諜報部を取り仕切っている。本人も、諜報や暗殺に長けた男だ」
と教えてくれた。
確か、諜報部は宰相の下に位置しており、アーマスさんが管理していると聞いていた。だが、実際はこのメルト伯爵が取り仕切っているのだろう。
そして、本人も諜報や暗殺に長けている、か・・・。先ほどのオーラについても、本来はそれなりに強大な自分のオーラを、完璧に隠しているということだろう。全く感じられないというのも不自然だから、他の人と同程度には気配を醸し出しているのかな?
気を取り直して、メルト伯爵の話に注目する。
私とダンさんの視線が向いたのを確認して、メルト伯爵が話し始める。
「それでは、2つ、報告がございます。ダン王子殿下には概略だけ説明いたしましたが、詳しくご説明いたします」
「ああ、頼む」
ダンさんに促され話し始めるメルト伯爵。
「まずは、ジャームル王国に潜入させている諜報員からの報告です。およそ2週間前、ダーバルド帝国の攻撃により、ジャームル王国の国境沿いの町、ノイマンが陥落しました」
「「「なっ!?」」」
いきなりの爆弾発言に、その場は騒然となる。
驚く貴族たちを無視してメルト伯爵が説明したところによると、城塞都市としてかなりの防御力を誇っていると思われていたノイマンという町が、たった数時間で陥落したそうだ。
みんながどうにか情報を咀嚼している中、私たちの近くにいた貴族、私が面識のある数少ない貴族の1人であるバール侯爵が質問する。
「メルト伯爵よ。儂の記憶では、ノイマンの防御力はかなりのものであったはず。ダーバルド帝国は、かなりの大軍で攻め入ったのか?」
「いえ。そうではないようです。何でも、常識を覆すような威力の魔法を使う魔法師団員が参戦したようです。その魔法師団員の攻撃によって、城塞都市の強固な防壁が破壊され、敵の侵入を許したとのことです。他にも、腕が3本以上ある者や、人のものとは思えない太く長い脚で町中を駆け回り、一帯を破壊する者など、異形の姿をした兵士が複数参戦していたとの情報です」
そこまで聞いて、思わず立ち上がってしまった。
みんなの視線が私に集まるのを無視して、確認する。
「その異形の姿をした兵士ってのは、他の生き物の部位を取り付けたり、改造されたりしたような感じだった?」
「は、はい。報告者が直接見たわけではないようで、詳細については不明ですが、『まるで、複数の生物を融合したような、歪な姿であった』とのことです」
その話が本当なら、間違いない。サイル伯爵領で出会った、ミリアさん。ダーバルド帝国で奴隷にされ、改造の人体実験に使われたエルフの女性。彼女と同じ目に遭った人たちが、ダーバルド帝国の戦力としてノイマンの町を攻撃するのに投入されたんだ。
まあ、さすがに王城の中で襲われるとは思えないけどね。
私たちも部屋に戻る。
部屋ではポーラがホムラとシャロンと戯れていた。
「ただいま、ポーラ」
「コトハ姉ちゃん! 大丈夫だった?」
と、開口一番聞いてくるポーラ。
そういえば、ポーラには事情を説明してなかったっけ?
「うん、大丈夫だよ。心配掛けてごめんね。それと、今日なんだけどさ・・・」
「お仕事?」
「う、うん。ちょっと、報告しないといけなくてね」
ポーラと出かける約束だったので、大変心が痛いが、さすがにこの話は早くする必要があると思う。
「大丈夫! それじゃあ、私がシャロンとホムラを連れて、王都の外に行ってくるよ! いい?」
と、ポーラが言い出す。
・・・・・・正直、私も一緒に行きたい。出かけたい、というのと、ポーラを1人にしたくはないという気持ちが共にある。
けれど、どれだけ時間がかかるかも分からないし、明日以降はちょくちょく予定が入っていると聞いている。
「・・・分かった。ジョナスと一緒にね。ホムラとシャロンをお願いね」
「任せて!」
と、ポーラ1人での外出を許可した。
それを聞いて、後ろではマーカスが早速、ジョナスと段取りの相談に入っていた。
「レーノ。ダンさんに、至急話があるの。ダーバルド帝国のことでね。なるべく早く会って話がしたいって伝えてくれる?」
「承知しました」
そう言うと、レーノも部屋から出て行く。
♢ ♢ ♢
ポーラは、ホムラにシャロン、護衛のジョナスと一緒に出かけていった。
それと入れ違いに、レーノが帰って来た。
「お帰り、レーノ。早かったね」
思っていたよりも戻ってくるのが早かったので聞いてみると、
「はっ。それが、ダン王子殿下もコトハ様に何やら用があるようでして。殿下の側近の方と、途中で会いまして。早速これから、ということになったのですが・・・」
「今から? いいよ、分かった」
そんな急だとは思っていなかったが、早く伝えるに越したことはないし、丁度いい。
マーカスとレーノと一緒に、指定された場所を訪れた。
部屋に入ると、
「待っていました、コトハ殿」
と、ダンさんが出迎えてくれた。
その部屋は、これまでの応接室とは違い、長方形型のテーブルが置かれており、その最奥に2つの空席があった。そして、テーブルの両サイドには、20人近くの貴族が座っており、立ち上がっている。
「えーっと、これは?」
私はダンさんとの個別の会談だと思っていたのだけど・・・
「これから、軍部の会議でして。ダーバルド帝国に関する重要な話もいくつかありますので、コトハ殿をお呼びした次第です」
ああ、なるほど。
ダンさんの話ってのは、この場に参加してってことか・・・
結葉さんたちの話をこの場でするのは憚られるので、それは後にして、とりあえず話を聞こうかな。
ダンさんに案内され、空いていた席の片方に座る。テーブルの上座には、ダンさんが座り、私はその横に座った。
まあ、こだわりも無いし、見知らぬ人の近くに座らされても困るので、黙って座ることにしよう。
最初は、出席している貴族の自己紹介から始まった。
私向けなのか分からないが、数人を除き見知らぬ人だったので、ありがたく聞いていた。ただ、間違っても覚えられたわけではない。
紹介が終わると、早速会議が始まった。
まず始めに、
「皆も聞いておろうが、我が国のダーバルド帝国対策は、コトハ殿、クルセイル大公が担当する。役職としては、『南方方面担当軍部顧問』になる。爵位はもちろん、軍部での役職としても、貴殿らの上に立つことになる」
と、ダンさんが宣言する。
さすがに一昨日のことを覚えているのか、文句を言う貴族はいない。というか、あの場で感じた不快な視線を感じることも無かった。そういえば、マーカスに調査を頼んだ、貴族たち。あの場で私に殺意や不快な視線を向けていた貴族たちは、この場にはいなかった。
ダンさんがこちらを見て、発言を促すので、
「ということなので、よろしく」
と挨拶しておく。
次に、
「では、早速。皆を集めた本題に入るとしよう」
と、話し出すダンさん。
そして、部屋の隅に座っていた1人の男性に目を向ける。
「メルト伯爵。報告を」
部屋の壁際には、それぞれの貴族の従者が多く座っている。うちのマーカスとレーノ、ダンさんのお付きの人なんかは、直ぐ側に座っているが、出席している貴族全員がそうすると、かなり窮屈だ。そこで、私たち以外の貴族のお付きの人は、部屋の隅で待機し、用事があるときだけ主人に近づき耳打ちなどをしている。
だが、メルト伯爵、と呼ばれたその男性の気配を感じ取ることができていなかった。いや、厳密には他の従者と同様に感知の対象にはなっていたのだろうが、本来の気配とはまるで違うものを感じ取っていた。
ダンさんに呼ばれ、ダンさんと私の座る上座の反対側に移動するメルト伯爵。それと同時に、彼の本来のオーラを感じることができた。待機していたときは、オーラを隠していたのだと分かるほどに、彼のオーラは強大だった。
移動しダンさんと私に向かって深々と頭を下げるメルト伯爵。
そして、
「ダン王子殿下、ありがとうございます。クルセイル大公殿下には、お初にお目にかかります。ご出席の皆々様方も」
そう挨拶する。
状況が理解できていない私に向かってダンさんが、
「コトハ殿。メルト伯爵は、バイズ公爵の下で実質的に諜報部を取り仕切っている。本人も、諜報や暗殺に長けた男だ」
と教えてくれた。
確か、諜報部は宰相の下に位置しており、アーマスさんが管理していると聞いていた。だが、実際はこのメルト伯爵が取り仕切っているのだろう。
そして、本人も諜報や暗殺に長けている、か・・・。先ほどのオーラについても、本来はそれなりに強大な自分のオーラを、完璧に隠しているということだろう。全く感じられないというのも不自然だから、他の人と同程度には気配を醸し出しているのかな?
気を取り直して、メルト伯爵の話に注目する。
私とダンさんの視線が向いたのを確認して、メルト伯爵が話し始める。
「それでは、2つ、報告がございます。ダン王子殿下には概略だけ説明いたしましたが、詳しくご説明いたします」
「ああ、頼む」
ダンさんに促され話し始めるメルト伯爵。
「まずは、ジャームル王国に潜入させている諜報員からの報告です。およそ2週間前、ダーバルド帝国の攻撃により、ジャームル王国の国境沿いの町、ノイマンが陥落しました」
「「「なっ!?」」」
いきなりの爆弾発言に、その場は騒然となる。
驚く貴族たちを無視してメルト伯爵が説明したところによると、城塞都市としてかなりの防御力を誇っていると思われていたノイマンという町が、たった数時間で陥落したそうだ。
みんながどうにか情報を咀嚼している中、私たちの近くにいた貴族、私が面識のある数少ない貴族の1人であるバール侯爵が質問する。
「メルト伯爵よ。儂の記憶では、ノイマンの防御力はかなりのものであったはず。ダーバルド帝国は、かなりの大軍で攻め入ったのか?」
「いえ。そうではないようです。何でも、常識を覆すような威力の魔法を使う魔法師団員が参戦したようです。その魔法師団員の攻撃によって、城塞都市の強固な防壁が破壊され、敵の侵入を許したとのことです。他にも、腕が3本以上ある者や、人のものとは思えない太く長い脚で町中を駆け回り、一帯を破壊する者など、異形の姿をした兵士が複数参戦していたとの情報です」
そこまで聞いて、思わず立ち上がってしまった。
みんなの視線が私に集まるのを無視して、確認する。
「その異形の姿をした兵士ってのは、他の生き物の部位を取り付けたり、改造されたりしたような感じだった?」
「は、はい。報告者が直接見たわけではないようで、詳細については不明ですが、『まるで、複数の生物を融合したような、歪な姿であった』とのことです」
その話が本当なら、間違いない。サイル伯爵領で出会った、ミリアさん。ダーバルド帝国で奴隷にされ、改造の人体実験に使われたエルフの女性。彼女と同じ目に遭った人たちが、ダーバルド帝国の戦力としてノイマンの町を攻撃するのに投入されたんだ。
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