危険な森で目指せ快適異世界生活!

ハラーマル

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第5章:建国式典

第243話:許されざる行い

ムルゼイスの話は、予想通り・・・、ではなく、予想を遥かに上回る酷いものだった。
まずは2組の親子。彼女たちは、フェルト商会とライバル関係にある商会の、商会長や幹部の妻や娘らしい。彼女たちを誘拐し、そのことを仄めかす。そして、フェルト商会に有利な内容での取引を強制したり、情報を話させたりしていたそうだ。

被害者たちは、フェルト商会が誘拐していることは分かっていながらも、彼女たちの身を案じ、また貴族との関係が深いフェルト商会を告発すれば、貴族からも目を付けられ、結果的に人質が危険に晒される。それを恐れて、言いなりになっていたんだとか。
それも、彼女たちは誘拐されて既に半年以上が経過していたそうだ。

怒りの余りその場で殺しそうになったが、とにかく冷静に、商会の名前を聞いた。
1つは聞いたことが無かったが、もう1つはトレイロ商会だった。トレイロさんの奥さんや娘さんではなく、王都にあるトレイロ商会のお店を取り仕切っている番頭の奥さんと娘さんだったらしい。
グランフラクト伯爵を通して、急いでその番頭さんに伝えるように手配した。

そしてメイジュちゃん。
彼女は、予想通り奴隷だった。いや、奴隷にするために捕らわれていた。両親を亡くし、小さな町の孤児院にいたメイジュちゃんが『魔族』だと知り、孤児院から攫ったそうだ。
だが、驚くべきはその売り先だった。てっきり、ダーバルド帝国に売る予定だったのかと思ったのだが、

「売り先は・・・・・・、その、ある貴族、だ」

と、ムルゼイスは話した。

「名前は?」

そう問い詰めるが、口を開かない。

「分かってるの? 喋らなければ、地獄を見せるわよ?」

そう脅しても、動じず、口を開かない。
我慢の限界で、『龍魔法』を放って右脚の膝から下を焼き切った。

「ぐぬぁぁぁぁぁ!」

と呻き声を上げるが、それでも目が死んではいない。
どうやら、完全に屈服させることはできてはいないようだ。私よりも、その売主のが恐ろしいのだろう。

仕方がない。
私は、入り口で待機していた人物に手招きをする。
綺麗な動作で歩み寄ってくる、レビン。

「レビン。メイジュちゃん、こいつらが捕らえていた『魔族』の女の子を、どの貴族に売ろうとしていたのか、吐かせて。手段は問わないから」
「畏まりました」

優雅に礼を返すレビン。
私の合図で、近衛騎士が牢の入り口を解錠する。それに会釈し、レビンが中へと入った。


 ♢ ♢ ♢


以前、ドランドたちを助けた際。一緒に捕らえた奴隷商人を、レーベルが拷問して、いろいろ吐かせていた。同じ『悪魔族』のレビンなら、拷問の心得もあるのでは?と思い、聞いてみたところ、案の定、得意とのことだった。

美しい顔で、薄ら笑みを浮かべながら応じたレビンに、私の方が怖いと感じてしまったくらいだ。けれど、考えてみればそれも当然。フェイやレビンは、ポーラの保護者、というか古代龍族の血を引く私を敬ってくれているし、命令も聞いてくれる、けれど、彼女たちが直接仕えるのはカイトでありポーラだ。故に、ポーラを襲った主犯であるムルゼイスは、ポーラに仕えるレビンを完全に激怒させたわけだ。

近衛騎士の詰め所にあるオフィスで、マーカスやグランフラクト伯爵と集めた証拠を確認していると、レビンが地下牢から出てきた。その後ろには、レビンの様子を見張って・・・、見守っていたのであろう近衛騎士が、顔色を悪くしながら着いてきている。

「お帰りレビン。吐いた?」
「はい、コトハ様。メイジュ様の売り先はドムソン伯爵邸だそうです。ドムソン伯爵の長男であるボンデンという男が、『魔族』の奴隷を欲していたとか。これまでにも、2人、売ったそうです」

レビンの説明に場が凍りつく。

「その、以前売られたというのは、どれくらい前の話?」
「最後に売ったのが数ヶ月前だとか」
「・・・・・・生きてる?」
「残念ながら。その奴隷の子が亡くなったため、代わりが欲しいとの注文が入ったと・・・」
「そう・・・・・・」

怒りで、どうにかなりそうだった。
それは私だけではなく、マーカスもグランフラクト伯爵も。この場にいる、うちの騎士や近衛騎士もだ。

「ありがとうレビン。一応聞くけど、あいつは?」

どんな拷問をしたのかに興味は無い、というか知ったところで私には実践できないだろう。最初は自分でやろうとしたが、今後は慣れた人に任せることにしようと思う。
けれど、生きているかは確認が必要だ。

「生きておりますよ。まあ、生きていること自体が、やつにとっては拷問かもしれませんが」

そう、微笑みながら返すレビンは、やはり怖かった。
だが、苦しんでいるのならそれでいい。


必要な話は聞けたので、ムルゼイスへの興味は失せた。
だが、やるべきことができた。ドムソン伯爵の長男ボンデンを始末する。誰がなんと言おうが、そいつだけは必ず殺す。ついでに、そんなクズを生み出し、放置していたドムソン伯爵にも落とし前を付けさせる。

私がそう宣言すると、マーカスもグランフラクト伯爵も賛同してくれた。
てっきり、先ほどのレーノと同じように止められるのかと思っていたので、少し驚いた。
念のため聞いてみると、

「クルセイル大公殿下は、ダン王子殿下より本件の処理を委ねられております。それが貴族の処理であろうと、同じかと。ムルゼイスの証言も、そちらのメイドに同行していた近衛騎士が聞いておりますれば、クルセイル大公殿下が動かれるのに、何ら問題はございません」
「・・・そうなの?」 
「はい。ですが、念のために、ダン王子殿下とバイズ公爵閣下には、状況の報告をしておいた方が無難かと。少なくとも、ドムソン伯爵家は消え失せるのですから」
「そうだね・・・。近衛騎士の誰かに、連絡を頼んでもいい?」
「無論です」

そう言うと、グランフラクト伯爵は部下の近衛騎士に指示を出し始めた。
私もマーカスに、うちの騎士と騎士ゴーレムの準備を命じる。先ほどの騒動で、フェルト商会に近衛騎士団が突入したことは知られている。ドムソン伯爵たちが証拠隠滅や逃亡に出る可能性は高い。時間との勝負なのだ。


 ♢ ♢ ♢


最低限の連絡と準備を終えると、私たちは急ぎドムソン伯爵邸を目指した。
整備が進む貴族街の端っこに位置するその家は、まだ庭の整備などが行き届いてはおらず、資材が積んである状態だった。

屋敷の門扉の前に到着したところで、警備をしていた男がこちらに誰何してくる。

「ここはドムソン伯爵家の屋敷の前である。何者かお聞かせ願いたい!」

そう怒鳴る男に対して、グランフラクト伯爵が馬車から降りながら告げる、

「私は近衛騎士団長のグランフラクト伯爵だ。ドムソン伯爵を重大な犯罪行為により拘束する。門を開けよ」

その宣言と同時に、うちの馬車からは騎士ゴーレムが飛び出し、展開する。屋敷の裏ではマーカス率いる別働隊が、同じく準備をしていることだろう。

それを確認し、私も馬車から降りる。
馬車からぞろぞろ降りてくる騎士や騎士ゴーレムの姿に門番は驚き、そしてどうしたらいいか分からないといった様子だった。

「ねえ、ここを開けてくれる?」

そう問いかけるも、応答が無い。
こちらも大人しく待っているわけにもいかないし、万が一にも逃がすわけにはいかない。ここまで来れば、ドムソン伯爵たちも異常に気づいているだろうから、一刻の猶予も無い。

「なら、自分で開けるから」

私はそう言うと、こちらに手を伸ばして止めようとする門番を軽く殴り飛ばしてから、門扉に向かって大きめの石弾を放った。

命中した石弾は、金属製で鉄格子調の門扉を簡単に吹き飛ばす。

「突入!」

私の号令を合図に、騎士ゴーレムを先頭にし、うちの騎士と近衛騎士が屋敷に突入した。

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