危険な森で目指せ快適異世界生活!

ハラーマル

文字の大きさ
287 / 370
第5章:建国式典

第261話:捜索の結果

ホムラとライゼルさんは別の建物を調べに向かった。
それを見送った私は、小さな手で私の右手を握っている『半竜人』の男の子に話しかける。

「えーっとさ、聞いてもいいかな?」
「うん!」

私のオーラを感じ、私のことを母親だと信じてからは、最初に檻に入れられていたときとは打って変わって、年相応な感じで話すようになっている。
とりあえず、そこには触れずに、情報収集しておく。

「そうだね・・・。まずは、名前聞いてもいい?」
「名前?」
「うん。あなたの名前。教えてくれる?」
「名前って何?」
「・・・・・・え? えーっと、あなたは何て呼ばれてるの?」
「うーん、出来損ない?」
「出来損ない? ・・・そう呼ばれてたの?」
「うん。お前は出来損ないだって」
「・・・・・・・・・そう。これからは、そうは呼ばれないからね」
「そうなの?」
「うん。あなたの呼び方、名前を考えてあげるから」
「名前!」
「そう。・・・・・・うーん、インディゴとかはどう?」
「インディゴ?」
「そう。あなたの角や翼、尻尾の色。後は目の下のラインもそうだし、瞳の色も。綺麗な濃い青色、藍色っていうんだけどさ。そんな意味の言葉」
「うん! インディゴ! インディゴ!」

喜んでくれたようで何より。
我ながら、相変わらず安直というか、センスがないというか・・・。いや、本人が喜んでくれたのだから、私が気にしたら失礼か。
・・・にしても、この子が受けてきた扱いは・・・。間違っても「出来損ない」が名前なわけないし、蔑称のようなものだったんだろうな。ダーバルド帝国の連中が望んでいたことができなかった? いやいや、こんな子どもに何をさせるつもりだった?


それからいくつか聞いてみたが、どれも曖昧。
年齢は分からないとのことだったが、『鑑定』によれば4歳。種族は『半竜人』で、『水流魔法』がレベル0。普通に考えれば『水魔法』の上位互換。もっとも、素質はあるが、まだ使えない状態らしい。『身体強化』は使えるみたい。ただ、本人の自覚はない様子。

親を含め、外の世界について知っていることはほとんど無かった。檻の中での生活、時たま檻から出されて、痛いことをされた記憶。聞いているだけで気分が悪くなりそうだった。
そんなインディゴが、私を母親と認識したのは、唯一の温かい記憶。思い出すときに感じる温かいものを、私に感じたらしい。おそらく、母親の魔力だろう。母親が『半竜人』なのか『水竜族』や『古代水竜族』なのかは分からないが、記憶の奥底に、昔感じた魔力の記憶が残っているのだろう。

親元に帰してあげるのが一番だろうが、名前が分からなかったことからして、生後1年かそれ以前に、引き離された可能性が高い。その時に親や一緒に住んでいた人たちがどうなったかは不明だが、前向きな想像はし難い。


どうしようかと思いながらインディゴの頭を撫でていると、マーカスたちが戻ってきた。同行している騎士が、2人の男を拘束している。

「お帰り。みんな無事?」
「はっ。残っていた敵兵は僅かでしたし、どれも練度が低かったので」
「そっか。それで、後ろのは?」
「右側がこの砦の司令官だそうです。左にいるのは彼の秘書的な役割をしている男です」
「そう・・・・・・」

冷静に冷静に。
インディゴの話を聞いた直後なだけあって、怒りを抑えるのが難しいが、彼のためにもこいつらの話を聞かないと・・・

「とりあえず、外へ。間違っても逃がしたり、自害されたりしないようにね。聞きたいことが山ほどあるから」
「はっ」

マーカスの指示で、2人が外へ連れ出されるのを見送る。途中、司令官だという男がインディゴを見て嫌そうな顔をしたのも見逃してはいない。


マーカスに、インディゴを保護した経緯を説明していると、ホムラたちも戻ってきた。同行者はいない。

「お帰り。無事?」
「はい、コトハ様。敵兵とは遭遇いたしませんでしたので」
「そっか。誰も見つからなかった?」
「・・・いえ。おそらく亡くなった奴隷が放置されている部屋を見つけました。腐敗している遺体もありましたので正確な数は不明ですが、10名ほど」
「・・・そう」

小声でホムラに問いかける。

「『半竜人』は?」
「いませんでしたわ。全部、一般的な『魔族』かと」
「そっか」

インディゴの親や家族もここに連れて来られている可能性を考えたが、空振りだったか。

「それから、その部屋の横の部屋に、魔道具が」
「魔道具?」
「はい。詳細は分かりかねますが、魔力の集積装置のようでしたわ」
「集積装置? 魔力を集めるってこと?」
「といいますか、他者の魔力を吸い上げ、別の者に渡すような感じでしょうか?」
「・・・遺体って」
「おそらくは。魔力を吸い取られ、衰弱したのではないかと」


 ♢ ♢ ♢


これ以上の捜索は無意味だと判断した。
敵兵が多く詰めている東側には、まだ捜索していない建物があるが、敵兵の数からいって、バレずに捜索するのは難しい。

ホムラたちが見つけた魔道具は、しっかり調べておきたいし、できれば奴隷の遺体も埋葬してあげたい。
そのためには、早いところ敵兵を追い出すか。
・・・その前に。

「ホムラ。あなたもインディゴに魔力を見せてあげて」
「インディゴ?」
「そう。この子の名前」
「畏まりました」

そう言って、先ほどの私よりも制御された、精密で綺麗な魔力をインディゴに向けて放つホムラ。

ホムラの魔力を受けたインディゴは、目を見開きホムラを見つめている。

「お母さん、この人は? お母さんとは違うけど、でもお母さんみたい」
「ふふっ。この人はホムラ。私の仲間・・・、姉妹みたいな人だよ」

私の「姉妹」という言葉にホムラが嬉しそうにしている。

「・・・ホムラお姉ちゃん!」
「よろしくお願いしますね、インディゴ」
「うん!」

上手く打ち解けてくれたようで何よりだ。

「ねえ、インディゴ。私はこれから、少しお仕事があるの。その間、ホムラお姉ちゃんと一緒に待っていてくれる?」
「・・・・・・お母さん、行っちゃうの?」
「絶対に帰ってくるよ。少しだけ」
「・・・分かった」

ホムラと一緒にいることを了承してくれたようで一安心。
ホムラたちと一度砦を後にする。


待っていた騎士団長や魔法師団長は、インディゴを見て驚いているが、何も言わずにホムラを案内している。インディゴは、騎士や魔法士の姿を見て、ホムラの手を強く握っていた。

それを見送り、私はマーカスと両団長と共に、拘束した2人のもとへとやって来た。
2人はそれぞれ話せないように隔離され、両手両足を縛られ、猿ぐつわを噛まされている。

この砦の司令官だという男に話を聞こうかと思ったところ、マーカスが、

「コトハ様。あっちの秘書の方が口を割るかと。知っている内容も、大差無さそうです」
「そう? 分かった」

そう言われ、秘書の方へと向かう。

「今から口のを外すけど、大声出したりしないでよ? 痛い思いはしたくないでしょ?」

目の前の男は、ゆっくり首を縦に振る。
真横で騎士が、いつでも口を塞げるようにしている。それにここは、砦から少し離れているし。砦の方では、絶賛投石機を使って攻撃中。問題ないか・・・

騎士に指示を出し、猿ぐつわを外させる。

「さて。質問にだけ答えて。いい?」
「・・・ああ」
「よし。この砦に、奴隷や『異世界人』はいる?」
「・・・『異世界人』・・・は元々いない。奴隷は・・・、さっき連れていた子ども以外は・・・、死んだ」
「そう。あの男は?」
「この砦の司令官。といっても、金で地位を買った貴族の馬鹿息子だ。司令官の能力なんてありゃしない。事務は俺が。軍の指揮は、今も壁の上で指揮をとっているプヘル将軍が担っている」
「・・・そう。にしても、ペラペラ喋るのね」
「ふんっ。タイミング的に、あそこのドラゴンはグルだろ? 戦闘を前提にしていないこの砦には持て余すわ! それに、この国にはとことん愛想が尽きた。許せないこともあるしな。素直に話して、マシな扱いを期待する方がいいね」
「・・・話し終わったら、殺されるとは考えないの?」
「今んとこの扱いを見れば、その可能性は低いと思っただけだ。というか、あのドラゴンが攻撃を始めれば、どの道死んでいたしな」
「・・・潔いってことでいいか。まあ、分かった。あなたが協力的に話している間は、丁重な扱いを。聞くことが無くなれば、あなたの希望を最大限に考慮する。けれど、協力的でなくなったら・・・」
「協力するさ。知っていることは全て話す」
「・・・そんな気がするよね。マーカス、2人も。いい?」
「「「はっ」」」
「よし。それじゃあ、ひとまずそれで」

感想 126

あなたにおすすめの小説

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~

ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国辺境でただ静かに生き延びたいだけの少年・ヴァン。 彼に正義感はない。あるのは、母が遺したノートに記された、物理法則を応用した「高圧魔力」の理論と、徹底した費用対効果至上主義だけだ。 敵国三千の精鋭が灰燼城に迫る絶望的状況。ヴァンは剣を振るわず、心理戦と補給線攪乱だけで、たった三日で敵軍を撤退させる。 この効率的すぎる勝利は帝国の中枢に届き、彼は最高峰の帝国軍事学院への招待状を手に入れる。 「英雄になりたいわけじゃない。ただ、母の死の真相と父の秘密を知るため、生き残らなきゃならないだけだ」 無口最強の仮面メイド・シンカク、命を取引に差し出した狼耳少女・アイリ。彼は常にコスパの高い道を選び、母の遺したノートの謎、そして生まれて一度も会ったことのない父・帝国大元帥のいる帝都の闇へと踏み込んでいく。 正義も英雄も、損をするなら意味がない。合理主義が英雄譚を侵食していく、反英雄ミリタリー学園ファンタジー。

本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい! ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット” ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで? 異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。 チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。 「────さてと、今日は何を読もうかな」 これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。 ◆小説家になろう様でも、公開中◆ ◆恋愛要素は、ありません◆

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。 転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。 - 週間最高ランキング:総合297位 - ゲス要素があります。 - この話はフィクションです。