危険な森で目指せ快適異世界生活!

ハラーマル

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第5章:建国式典

第267話:交流

~ラムス・フォン・バイズ視点~

ダーバルド帝国がクラリオル山に築いた砦の制圧のため、コトハ殿が率いる部隊が出発しました。
もう、コトハ殿について滅多なことでは驚かない自信があったのですが、まだまだ甘かったようです。ホムラ殿とは、小さなドラゴンの姿では会ったことがありますが、まさか人の姿になれるとは・・・
まあ、それ自体は「ドラゴンだから」とどうにか自分を誤魔化すことができますが、コトハ殿がドラゴンの群れを呼び寄せ、従わせることができるとは・・・

改めて、大公という地位を与えてまで国に繋ぎ止め、敵対する可能性をできる限り低くしようとしたことは英断だったのでしょう。
その判断を無意味なものにしないためにも、コトハ殿の逆鱗に触れかけた今回の一件、新国家樹立に際して貴族や商人の調査・分類、排除が不十分であったことを反省し、素早く処理する必要があります。

もっとも、それは父やハールおじさん・・・、ではなく国王陛下の仕事。王太子であるベイル・・・殿下も眠れぬ日々が続くのでしょうか。
にしても、昔からの呼び方を変えるのは思ったよりも大変ですね。

さて、目下の私の仕事は明日の夜に迫ったパーティーです。
一応、主宰者はフォブスということにしていますが、フォブスの父親であり、次期バイズ公爵である私が関与しないわけにも参りません。というか、今回はフォブスを主宰者にすることも含めて私の仕事の一環ですか。

「ラムス様。カイト様がお見えになりました」

グレイがカイトの到着を知らせてきます。

「通してください」

カイトを呼んだのは他でもありません。明日の夜のパーティーについてです。
コトハ殿に対し、父を通して招待した時点で、参加してくれそうな様子だったそうで、助かりました。とはいえ、以前コトハ殿が危惧していた2人の婚姻に関することや、パーティーの目的に関する話をしておく必要があるだろうと思い、カイトを呼びました。


「お邪魔します」

部屋に入ってきたカイトを、応接用のソファーに座るように促し、私も向かいに移動します。
カイトの後ろにはレーノが控えていました。レーノのことは昔から知っていますが、今はクルセイル大公領の事務方として、忙しく働いているようです。昔から文武に優れていたレーノですが、クルセイル大公領ではもっぱら文官として、その腕を振るっているようです。

「呼び立てて申し訳ないですね」
「いえ。・・・それで、明日のパーティーのことだと聞いたのですが」
「はい。明日のパーティーに参加していただく以上、いくつかお伝えしておくべきことがあります。今日はそのためにお呼びしました」

・・・久しぶりにカイトに質問してみることにしましょうか。
以前、カイトとポーラがガッドでフォブスたちと共に学んでいた頃には、フォブス、カイト、キアラの3人によく問いを投げていました。3人の勉強の進捗の確認やコミュニケーションを兼ねてのものでしたが、フォブスを含めて3人とも、十分に身に付いているようで安心していたのを思い出します。

カイトが頷いたのを確認し、話を進めます。

「まずは今回の目的を正確に伝えておこうと思います」
「はい」
「1つ目は、既に伝えている通り、フォブスとノリスのお披露目です。これはそのままです。そして2つ目は、貴族の子女間の交流を促すこと」
「交流、ですか?」
「ええ。もう20年近く前になりますが、私がカイトやフォブスくらいのころは貴族の子女が参加するパーティーが多く開催されていました。7歳になったタイミングで全ての貴族の子女が参加する王宮主催のパーティーを筆頭に、子女の参加が予定されているパーティーが多く開催されていました。また、ほとんどの子女が、12歳になると王都にある学院に通うことになっており、そこでも同年代の子女での交流がありました」

もう大分昔に感じますが、今思えばあれは平和な時代だったのでしょう。
ほとんどの貴族が、自分の家や領の勢力拡大に勤しみ、とにかく利害を計算し、自らの子の結婚相手を決める。日々パーティーを開き、参加し、他の貴族との交流を深める。
子女を学院に通わせ、とにかく人脈を作らせる。

当時は、それが当たり前だと思っていましたが、そのような日々が終わり、激動の日々を迎えた今となっては、不思議な日々だったでしょうか・・・

「そうなんですね・・・」

カイトにとっては知らない話。一応、ガッドでグレイが教えてはいるでしょうが、現在のカーラルド王国では、大々的なパーティーはあまり行われていませんからね。元々子爵家の次男だったカイトは、父親が嵌められる前も、そういったパーティーにはあまり参加していないのでしょうし。
それに学院は、ラシアール王国末期には機能を停止していましたし。

「はい。しかし、旧ラシアール王国の情勢が悪化するにつれ、学院の機能が停止し、貴族は繋がりの深い貴族同士での交流しかしなくなりました。もちろん全く疎遠になったわけではありませんが、子女が交流する機会は少なく。その結果、私より少し下の世代では、同年代についてほとんど知らない者も多いと聞きます。それは、憂慮すべきことになります。・・・理由は分かりますか?」

では、1つ聞いてみましょう。
おそらくカイトなら答えられるでしょうが・・・

「・・・必要なときに、話ができないと思います」
「つまり?」
「同じ国の貴族なわけで、必要な相談や交渉はあると思います。しかし、全く知らない相手と話すのは大変です。それが、国や領の利益に大きく関わる大事なことなら尚更。そうすると、そういった話をする可能性のある同年代の貴族について知らないというのは、かなり危険だと思います」

基本的には正解ですね。
やはりカイトには、ベイル殿下やフォブスと一緒に働いてほしいものです。

「いいでしょう。カイトの言うように、いくら関係が浅い、または悪い貴族であっても、必要最低限の交渉などは必要です。その際に、相手のことを全く知らないというのは、そのような交渉を行うことを困難にします。相手の性格、長所と短所、頭の良さ等。これまでは、関係を問わず何らかの形で最低限の接触があったのです」
「じゃあ、今回のパーティーは・・・」
「はい。フォブスやノリスと比較的年齢の近い子女のいる多くの貴族を招待しています。幸い、建国式典ということもあり、多くの貴族が家族を連れて王都へ来ていましたので」
「なるほど・・・」

もちろん、調査対象となっている貴族は、その分類ごとに招待するかどうかを検討しています。
残念ながら完全に白といえる貴族の方が少数でしたので、多少は疑わしい部分があっても、取り潰されることがない貴族に関しては招待するようにはしていますが。
子女間での交流を図るという点では、多少の罰が与えられたとしても関係はないですからね。

「さて、明日のパーティーの目的は以上の2つになります。いいですか?」
「はい」
「では、それを踏まえて、です。子女間の交流が主目的ではありますが、子を参加させる貴族がどのようなことを考えるか、あるいはそれを子どもに命じるか、分かりますか?」

むしろ、ここからが本題ですね。
コトハ殿と敵対する気は無いですし、機嫌を損ねたいとも思いません。ですが、私は同時に、国のこと、領のことを考える義務があります。その上で、カイトとポーラが誰と婚姻するか、それはとても重要です。もちろん、ガッドでの日々を通して、2人を息子たちの友として、大切に思う気持ちもありますが。

「・・・貴族が、ですか? 親が考えることは・・・・・・、子どもの結婚相手を探すこと、ですか?」

いいでしょう。

「正解です。もちろんカイトと同年代、あるいはそれより若い年齢で婚約者が決まっている子女もそれなりにいるでしょう。ですが、それこそ私の頃に比べると、多くはありません。そんな中で、公爵家が開催するパーティーです。特に問題がある貴族家以外は爵位に関わらず、ある程度の年齢以上の子女がいる場合には招待しています。要するに、そういった目的での貴族の参加も多いわけです」
「はい」
「そんなパーティーで、多くの貴族が、そしてその子女が狙いを定める相手は誰だと思いますか?」
「・・・フォブスとノリスです」
「それから?」
「僕と、ポーラ?」
「ですね。少なくとも公には、4人に婚約者は存在していません。まあ、フォブスとノリスには、本当に婚約者はいませんがね。カイトとポーラについてはどうですか? 特にカイトは、キアラとか」
「えっ!?」

カイトが年相応に驚いた表情をするのは、もはや新鮮な気がしますね。
キアラは、一番カイトに近いところにいる女性でしょう。ガッドから自領へ戻った後も、一緒に行動しているようですし、今回も王都へ共に来ていますからね。

「カイト。私がカイトにこのような話をすること、カイトの婚約者を気にしたり、話をしたりすることを、コトハ殿がよく思わないことは重々承知しています。ですが、私の責務として、聞くことにします。カイトは、キアラとの婚姻を考えていますか?」

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