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ハラーマル

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第5章:建国式典

第281話:建国式典①

カーラルド王国。
数百年続いたラシアール王国が滅び、その大貴族の1人であったカーラ侯爵が、カーラルド王家として立ち、ラシアール王国の後継国として今日、正式にその一歩を踏み出す。

カーラルド王国最初の公式行事として行われる建国式典。
ハールさん、つまりカーラルド王国の初代国王となる人物が、建国を宣言する。そして、各種族の代表がそれを承認する。
うろ覚えだが、君主制の国家で新たな国王が即位するときは、「戴冠式」としてその国の主流な宗教の指導者が、王の証である冠を与え、王位に就いたことを宣言していたと思う。確か、中世のキリスト教国家などはそうだった気がする。

この前聞いた建国式典の内容は、それに近い感じ。
ただ、さすがは異世界、というべきか。ラシアール王国の流れを汲むカーラルド王国は、国を構成する種族が複雑多様。
『人間』が最も多いのは間違いないが、『エルフ』、『ドワーフ』、『魔族』などが生活し、歴史の中で他種族間での交わりも多い。『魔族』など、それ自体が複数の種族の総称であり、細かく分類すれば更に多くの種族に分かれるだろう。私は『魔龍族』で、区分的には『魔族』だし、インディゴら『半竜人』も区分的には『魔族』だ。そしてヤリスさんやフラメアちゃんは、『魔族』より詳しい呼称は知らないが、私やインディゴとはまるで別の種族だろう。

そんなわけで、この国には多くの種族が住んでいる。そしてその全てが、等しくカーラルド王国の国民となる。
ラシアール王国時代から、「多種族共生」は、譲ることのできない国の絶対的価値観であった。王族であろうと貴族であろうと、それを害する者は強く非難された。
その価値観は、カーラルド王国でも引き継がれている、と思う。現に、『人間』以外の種族が、貴族には多くいる。それに、王族となるカーラルド家にも『エルフ』が嫁いだことがあったとのこと。そのおかげで、フォブスやノリスは魔法の適性が高いんだしね。

つまり、国王を国王と認めるのは、『人間』だけではないのだ。
主要な種族、つまり『人間』、『エルフ』、『ドワーフ』、『魔族』については、それぞれ多くが信仰する宗教の指導者が、各々王たる証を与える。それでも漏れてしまう種族はいるのだろうが、細かい種族の受け皿たる魔族の代表がいること、国王が宣言の中にそういった者の保護も盛り込むことで、調整するらしい。
まあ、全部呼んでたらキリがないしね。

こんな感じの説明を山ほど聞かされて少々パンク気味。いや、どうせなら知ってから参加したいと、レーノたちにいろいろ説明を頼んだんだけどね・・・
元々は、「そこにいればいい」としか言われてなかったんだから。

そして私は、建国式典の会場である、城の大広間へと向かっていた。
ケーリンで町長から話を聞き、町長本人は捕らえて連れ帰った。最後の脅し・・・、いや、こちらの指示に従わなかった場合には本当に制裁を下すつもりだから脅しではない、か。まあ、監視については、レーベルに任せることにした。レーベルは、使い魔?を送れるそうで、それを使って確認できるそう。1週間程度経ったし、後で頼んでおこう。
クラリオル山には『赤竜』が複数滞在しているから、違反が分かれば直ぐに対処できる。

ケーリン以外の攻撃目標。つまり、レーベルが危惧していた魔獣・魔物の融合実験を行っている実験施設は、ケイレブを中心としたドラゴン攻撃隊が襲撃し、跡形も無く破壊した。・・・それは、もう、地形が変わる程度に。もちろん、攻撃前には奴隷が残っていないかの確認をしている。

ケーリンでの件で少し疲れてしまった私は、一足先に王都へ戻っていた。
王都で、カイトにポーラ、メイジュちゃんやインディゴ、ユイハさんたちやラヴァの娘の5人と話すことで、安らぎを得ていた。・・・いや、カイトとポーラ以外は、今後の身の振り方を考えてもらう必要もあったので、その相談をしていたんだけどね。

そうしていると、あっという間に建国式典の日となった。森を出てから王都へ至るまでの道中や王都に到着してからというもの、印象的な出来事が多すぎて忘れそうだったが、元々はこれが目的だった。
今日の午前中に建国式典が、午後に高位貴族の叙爵式が行われる。下位貴族は明日以降だ。


 ♢ ♢ ♢


正装に身を包み、大広間に入る。
私は、儀式用の軍服をベースに、所々女性らしさが出るような煌びやかな装飾が施されたジャケットにパンツスタイル。全く扱えないが、長めの剣を佩いている。一応、私とドランドの傑作・・・、もとい悪ふざけの逸品だ。当然、魔法武具。
ジャケットの色は青。パンツは白だ。ジャケットの色は、インディゴの色・・・ではなく、私の鱗の色。青白い鱗をモチーフに、レビンが仕立ててくれたものになる。

横には同じく軍服ベースの服を着ているカイト。もっとも、こちらは私のみたく煌びやかな装飾は少なめで、堅めな感じ。色は同じく青ベースだ。両腰に普段使っている2本の剣を佩いている。
ポーラはドレス。この辺は私には分からないことだが、こういった公式な場に出席する際に、女性の貴族が身に付けるドレスにはいろいろと決まりがあるらしい。全く分からないので、それを知っていたサーシャの協力を受け、レビンが仕立ててくれた。同じく青ベース。

こうしてみると、うちのイメージカラーが青になっている気がする。自分たちの鱗くらいしか、色を決める基準が無かったので、仕方がない。若干、ホムラが悲しそうな目をしていた気がするが・・・

今日の式典には、私たち3人がうちからは出席する。
爵位によって、また立場によって参加できる数は変わるらしい。準男爵や男爵なら1人、子爵は2人、といった感じにね。
大公であるクルセイル家は、何人でもいいと言われていた。といっても、正式にクルセイル大公家に登録されているのは、私たち3人だ。私が連れて行くと言えば、例えばキアラやホムラであっても問題なく参加できるとは思うが、当の2人がそれを望まない。いや、ホムラは護衛的な面での希望はあったが、その場にいる誰よりも私たち3人が強いことを納得させて、前室待機となった。同じく前室には、マーカスたちがいる。
レーベルは、ケーリンで私を襲った男の調査中。レーベルに任せっきりで申し訳ないと思うが、彼自身がこの件は前の主人との約束?らしく、やっている。いつか、レーベルの前の主、つまり私の先祖についても聞いてみたい。


「コトハお姉ちゃん。あそこだね」

カイトが指さす方を見ると、見知った近衛兵、サイル伯爵ギブスさんの三男のバンさんが手を上げていた。

「おはようございます、クルセイル大公殿下、カイト大公弟殿下、ポーラ大公妹殿下」

恭しく礼をするバンさん。後ろの近衛騎士も数名がこちらを向き、綺麗な敬礼をしてくれる。近衛騎士も、いつもの任務用の装備ではなく、より一層煌びやかな装備を身に付けているようだ。

「おはよう、バンさん。私たちはここ?」
「はっ。大公殿下はこちらに。お二方はその隣にお願いいたします」
「ありがと」
「式典中は、私ともう1人の近衛が、大公家の皆さまの担当としてお側に控えさせていただきます。何かございましたら、いつでもお声がけください」
「分かったわ」
「では、失礼いたします」

そう言って離れるバンさん。
周りを見れば、既に多くの貴族の入場が完了している。私たちは、4つの侯爵家と2つの辺境伯家に続き、バイズ公爵家と一緒に入場した。入場順では最後になる。
バイズ公爵家のよく知る面々は、丁度反対側に集まっている。


貴族の入場が終わったところで、アーマスさんが前に出た。今日のアーマスさんは、いつもと違ってかっちりした服装。赤いジャケットを完璧に着こなしている。

中央にある大きな金ぴかの椅子。言うまでもなく、国王用の椅子だ。その横には王妃用の椅子。そして王子たちの椅子が並ぶ。
その近くに設けられた指揮台の様な場所。アーマスさんがそこへ移動する。

「これより、カーラルド王国の建国式典を執り行う。まずは、こちらの4名を紹介する」

そう言って、国王の椅子を挟んで反対側を見るアーマスさん。そこには、国王の椅子ほどではないにしろ、豪華な椅子に腰掛けた4人。
見た面的には『人間』の男性、『エルフ』の女性、『ドワーフ』の男性、『魔族』の男性の4人。それぞれが、いかにも「宗教の指導者」といった感じの白ベースに金色や青色で様々な刺繍が施されたローブを着て、首や手には意味ありげな装飾品を多数身に付けている。

アーマスさんの紹介は、それぞれの名前と肩書だったが・・・・・・、覚えるのは無理だった。どうして、こう、名前が長くて複雑になる? なんか、宗教的に意味のある名前がくっついてる、とか?
まあ、とにかく、予想通りの種族であり、そして各種族の多くが信仰している宗教の指導者だった。

そして紹介が終わると、

「それでは、カーラルド王国の初代国王となるハール・フォン・カーラルド陛下の入場です」

と宣言し、入り口の大扉が開かれた。
同時に、左右に整列した近衛騎士が抜剣し、高く掲げる。部屋のサイドに集まった騎士らが、ラッパのような楽器を鳴らす。
そして、ハールさんがゆっくりと中へと入ってきた。

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