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第5章:建国式典
第282話:建国式典②
高らかに鳴り響くラッパの音。そしてハールさんが中に入ると、他の楽器の音も混じり、聞いたことのない曲だが、華やかな印象を受ける曲が流れてきた。奏でているのは、各々楽器を構え部屋の壁際に陣取る軍服姿の集団だ。前世の軍隊にも軍楽隊とかあったし、そんな感じかな。
大きな扉から、国王の椅子のある部屋奥側中央を目指し、ゆっくりと歩みを進めるハールさん。ハールさんが進む赤いカーペットの両サイドには、貴族になる予定の者たちが並んでいる。ハールさんが自分の目の前を通る際には頭を下げ、それ以外のときには大きな拍手を送っている。
貴族たちにはそれぞれ、いろんな思惑やら過去やらがある・・・のだと思う。だから、笑顔で拍手を送るその姿が、彼らの本心とは思えない。むしろ、本心が丸見えになるような貴族は、私のような特殊な例を除いていないのだろう。だが、そんな貴族の中でも一部、ここ2週間ほどの間に私も多く顔を合わせた貴族たち。多くが軍事担当の貴族たちだが、彼らの表情を見ると、どこかほっとしている様な気がする。
私が詰めた後、多くの貴族や商人・商会の調査やら、粛正やら・・・・・・
その苦労の甲斐あって、今日を迎えたのであるから、隠しきれない嬉しさがあるのだろう。
ハールさんの1歩後ろには、ハールさんの奥さんで王妃となるリアムさん。そして3人の王子が続く。ベイルさんとガインさんは、奥さんと腕を組んでいる。
ハールさんの長男であるベイルさんは、ハールさんが国王となるのと同時に、王太子に指名される。王太子は、王位継承順位第1位であることを示す称号であり、国王が即位するのと同時に指定するらしい。カーラルド王国では、王家・貴族家ともに長子相続の決まりも男子相続の決まりもない。何番目の子どもであろうと、女であろうと継ぐことができる。まあ実際は、長男が相続することが圧倒的多数らしいけどね。
次期国王は、王太子としてその人物が公表される。この制度自体は、基本的にラシアール王国と同じらしいが、ラシアール王国の末期では、別々の王子を王太子、つまり次期国王に推す有力貴族のせいで、本来は即位と同時にされる王太子の指名が遅れることもしばしばあったそう。
カーラルド王国では、即位と同時に指名することが定められている。ただ、後で変更することは可能らしい。
そして、貴族家についても、貴族籍なる貴族名簿のようなものに、次期当主の予定者を記載することができる。ただこれは強制ではないそうだ。私は困ることもないのでカイトを書いてるけどね。
王子たちの子ども、つまりハールさんの孫たちは、王太子の長男となるグリン君と長女となるフレンちゃんの2人のみが参加だ。まあ、2人が年齢的にも立場的にも妥当なのだろう。10歳やそこらでこんな大規模な式典に参加するなんて、やはり立場ある子は大変だと思う。
部屋の奥側に到着した王家の人たち。ハールさん以外は、横にズレて待機している。
そしてハールさんは、国王の席に座るのではなく、一段下で真っ直ぐ前を向いている。
「これより、戴冠式を執り行う」
アーマスさんの言葉で、4人の宗教関係者と思しき、というか先ほど紹介されていた4人がハールさんの前に出た。
「カジュナード・ベルーン・フォクリーエ」
アーマスさんが、私が覚えるのを諦めた1人の名前を呼ぶ。彼は、『人間』の男性だ。
呼ばれた男性はハールさんの前に進み出て、
「私、カジュナード・ベルーン・フォクリーエは、『人間』を代表し、ハール・フォン・カーラルドを、新たなる国家、カーラルド王国の初代国王として承認する」
そう宣言し、従者が大切そうに抱える王冠を手に取った。
そして、静かに頭を下げるハールさんに、それを戴冠した。
「グスタール・ゲー・ガーバンドラ・キューオン」
次に呼ばれたのは『エルフ』の女性。
「私、グスタール・ゲー・ガーバンドラ・キューオンは『エルフ』を、そして『エルフ』の血を引く全ての同胞を代表し、ハール・フォン・カーラルドを、新たなる国家、カーラルド王国の初代国王として承認する」
そう宣言し、今度は金色で先に水色の宝玉が取り付けられた、杖のようなものを手渡した。ハールさんが、その杖を恭しく受け取り、掲げる。
その後、『ドワーフ』の男性が剣を、『魔族』の男性が赤いマントをそれぞれ、ハールさんに授けた。
最初の王冠、そして杖に、剣とマント。これが国王の証となる。王冠と3つの装備品・・・、まとめて4種の宝、神器とでも呼ぶのだろうか?
ともかく、各種族の代表者から王の証したる品々が手渡され、そして国王として認められた。
そういえば、建国の宣言前だから、まだカーラルド王国は誕生していない。そうすると、4人はハールさんを何の国王として承認したんだろうか? いや、この地に暮らす民の代表が王となることを認めたから、ハールさんが建国を宣言する、のか? おそらく、前身たるラシアール王国があるから話がややこしいのだが、まあ、何でもいいか。ともかく、ハールさんは国王として認められたわけだ。
そんなハールさんが、剣を鞘に収めて腰に佩いた上で、杖を持ち、マントを靡かせながらこちらを向く。
「ハール・フォン・カーラルドは、ここに、カーラルド王国の建国を宣言する。余は、『人間』、『エルフ』、『ドワーフ』、『魔族』、そして全ての民を護り、国を護ることを、ここに誓う」
とゆっくり、しかし低く、遠くまで通る声で宣言した。
一瞬の沈黙、それがこの大広間を支配した。そして次の瞬間、
「「「ははっ!!!!」」」
ここにいる貴族、近衛騎士、その他の様々な任に就く人たちが、一斉に頭を下げた。例外は、私たちと他国からの来賓くらいだ。
私たちは、事前の取り決めを前提に、大勢から「頭を下げるな」と念押しされている。ただ、一番前でそれは目立つので、私たち3人は大きく拍手を送っている。
ハールさんの宣言で、今ここにカーラルド王国は誕生した。これで建国式典のメインディッシュは終了だ。だが、国に関することはまとめて行ってしまうらしい。
他国からの来賓が順に呼ばれ、それぞれの来賓が代表している国とカーラルド王国との、新たな盟約が続々と成立していく。
基本的にはラシアール王国の引き継ぎ。ただ、ラシアール王国時代に関係が悪化した国とはそれまでよりも弱い内容の盟約が、一方でジャームル王国のようにラシアール王国時代よりも接近した国とは強い内容の盟約が結ばれていく。
そんな中、
「ウォーレン王国、ダグラ・ゴードウェル殿」
と、知った名前が呼ばれた。
ダーバルド帝国の砦を奪った際に出会った、奴隷として捕まった『魔族』を助けるべく動いていた男性だ。ウォーレン王国まで遺体を運ばせた『赤竜』はずっと前に帰ってきていたけど・・・
ゴードウェルさんが、ハールさんの座る王座の前に移動する。
「ハール陛下。ただいまご紹介にあずかりました、ダグラ・ゴードウェルと申します。ウォーレン王国では、伯爵位を賜っております。我が国と、貴国やラシアール王国とは、これまで交流はございませんでした。ですが、ダーバルド帝国から同胞を救い出す折、貴国のコトハ・フォン・マーシャグ・クルセイル様に、格別のご高配を賜りました。そのおかげで、亡くなった同胞に会い、彼らを国に連れ帰ることが叶いました。改めて、貴国とコトハ・フォン・マーシャグ・クルセイル様には、ウォーレン王国を代表し、心より御礼申し上げます」
そう言って、まずはハールさんに、そして私の方を向いて深々と頭を下げるゴードウェルさん。
・・・砦で見つけた『魔族』の遺体は、できるだけ丁寧に処理をして、彼らが国に連れ帰るのをサポートした。
彼らにもらったダーバルド帝国内で奴隷が多い場所の情報や、インディゴの家族がいるかもしれない施設のことは、捜索する上で大変役に立った。なので、こちらからも礼を言いたいくらいだ。
「我が国の国王、ピューヴェル陛下は、貴国と友好的な関係を築けることを願い、今回私を派遣いたしました。急な訪問にも関わらず、本日、記念すべき式典へご招待いただきましたこと、重ねて御礼申し上げます。そして本日を、貴国カーラルド王国と、ウォーレン王国との、友好的な関係の一歩とすべく、国交樹立を希望いたします」
そう言って、再び深々と頭を下げるゴードウェルさん。
「貴国の民が国に帰れたこと、嬉しく思う。そして、我が国と貴国との友好関係、余も願うものである。これから、良い関係を築けることを期待する」
ハールさんが応じ、カーラルド王国とウォーレン王国の国交が正式に樹立する運びとなった。
大きな扉から、国王の椅子のある部屋奥側中央を目指し、ゆっくりと歩みを進めるハールさん。ハールさんが進む赤いカーペットの両サイドには、貴族になる予定の者たちが並んでいる。ハールさんが自分の目の前を通る際には頭を下げ、それ以外のときには大きな拍手を送っている。
貴族たちにはそれぞれ、いろんな思惑やら過去やらがある・・・のだと思う。だから、笑顔で拍手を送るその姿が、彼らの本心とは思えない。むしろ、本心が丸見えになるような貴族は、私のような特殊な例を除いていないのだろう。だが、そんな貴族の中でも一部、ここ2週間ほどの間に私も多く顔を合わせた貴族たち。多くが軍事担当の貴族たちだが、彼らの表情を見ると、どこかほっとしている様な気がする。
私が詰めた後、多くの貴族や商人・商会の調査やら、粛正やら・・・・・・
その苦労の甲斐あって、今日を迎えたのであるから、隠しきれない嬉しさがあるのだろう。
ハールさんの1歩後ろには、ハールさんの奥さんで王妃となるリアムさん。そして3人の王子が続く。ベイルさんとガインさんは、奥さんと腕を組んでいる。
ハールさんの長男であるベイルさんは、ハールさんが国王となるのと同時に、王太子に指名される。王太子は、王位継承順位第1位であることを示す称号であり、国王が即位するのと同時に指定するらしい。カーラルド王国では、王家・貴族家ともに長子相続の決まりも男子相続の決まりもない。何番目の子どもであろうと、女であろうと継ぐことができる。まあ実際は、長男が相続することが圧倒的多数らしいけどね。
次期国王は、王太子としてその人物が公表される。この制度自体は、基本的にラシアール王国と同じらしいが、ラシアール王国の末期では、別々の王子を王太子、つまり次期国王に推す有力貴族のせいで、本来は即位と同時にされる王太子の指名が遅れることもしばしばあったそう。
カーラルド王国では、即位と同時に指名することが定められている。ただ、後で変更することは可能らしい。
そして、貴族家についても、貴族籍なる貴族名簿のようなものに、次期当主の予定者を記載することができる。ただこれは強制ではないそうだ。私は困ることもないのでカイトを書いてるけどね。
王子たちの子ども、つまりハールさんの孫たちは、王太子の長男となるグリン君と長女となるフレンちゃんの2人のみが参加だ。まあ、2人が年齢的にも立場的にも妥当なのだろう。10歳やそこらでこんな大規模な式典に参加するなんて、やはり立場ある子は大変だと思う。
部屋の奥側に到着した王家の人たち。ハールさん以外は、横にズレて待機している。
そしてハールさんは、国王の席に座るのではなく、一段下で真っ直ぐ前を向いている。
「これより、戴冠式を執り行う」
アーマスさんの言葉で、4人の宗教関係者と思しき、というか先ほど紹介されていた4人がハールさんの前に出た。
「カジュナード・ベルーン・フォクリーエ」
アーマスさんが、私が覚えるのを諦めた1人の名前を呼ぶ。彼は、『人間』の男性だ。
呼ばれた男性はハールさんの前に進み出て、
「私、カジュナード・ベルーン・フォクリーエは、『人間』を代表し、ハール・フォン・カーラルドを、新たなる国家、カーラルド王国の初代国王として承認する」
そう宣言し、従者が大切そうに抱える王冠を手に取った。
そして、静かに頭を下げるハールさんに、それを戴冠した。
「グスタール・ゲー・ガーバンドラ・キューオン」
次に呼ばれたのは『エルフ』の女性。
「私、グスタール・ゲー・ガーバンドラ・キューオンは『エルフ』を、そして『エルフ』の血を引く全ての同胞を代表し、ハール・フォン・カーラルドを、新たなる国家、カーラルド王国の初代国王として承認する」
そう宣言し、今度は金色で先に水色の宝玉が取り付けられた、杖のようなものを手渡した。ハールさんが、その杖を恭しく受け取り、掲げる。
その後、『ドワーフ』の男性が剣を、『魔族』の男性が赤いマントをそれぞれ、ハールさんに授けた。
最初の王冠、そして杖に、剣とマント。これが国王の証となる。王冠と3つの装備品・・・、まとめて4種の宝、神器とでも呼ぶのだろうか?
ともかく、各種族の代表者から王の証したる品々が手渡され、そして国王として認められた。
そういえば、建国の宣言前だから、まだカーラルド王国は誕生していない。そうすると、4人はハールさんを何の国王として承認したんだろうか? いや、この地に暮らす民の代表が王となることを認めたから、ハールさんが建国を宣言する、のか? おそらく、前身たるラシアール王国があるから話がややこしいのだが、まあ、何でもいいか。ともかく、ハールさんは国王として認められたわけだ。
そんなハールさんが、剣を鞘に収めて腰に佩いた上で、杖を持ち、マントを靡かせながらこちらを向く。
「ハール・フォン・カーラルドは、ここに、カーラルド王国の建国を宣言する。余は、『人間』、『エルフ』、『ドワーフ』、『魔族』、そして全ての民を護り、国を護ることを、ここに誓う」
とゆっくり、しかし低く、遠くまで通る声で宣言した。
一瞬の沈黙、それがこの大広間を支配した。そして次の瞬間、
「「「ははっ!!!!」」」
ここにいる貴族、近衛騎士、その他の様々な任に就く人たちが、一斉に頭を下げた。例外は、私たちと他国からの来賓くらいだ。
私たちは、事前の取り決めを前提に、大勢から「頭を下げるな」と念押しされている。ただ、一番前でそれは目立つので、私たち3人は大きく拍手を送っている。
ハールさんの宣言で、今ここにカーラルド王国は誕生した。これで建国式典のメインディッシュは終了だ。だが、国に関することはまとめて行ってしまうらしい。
他国からの来賓が順に呼ばれ、それぞれの来賓が代表している国とカーラルド王国との、新たな盟約が続々と成立していく。
基本的にはラシアール王国の引き継ぎ。ただ、ラシアール王国時代に関係が悪化した国とはそれまでよりも弱い内容の盟約が、一方でジャームル王国のようにラシアール王国時代よりも接近した国とは強い内容の盟約が結ばれていく。
そんな中、
「ウォーレン王国、ダグラ・ゴードウェル殿」
と、知った名前が呼ばれた。
ダーバルド帝国の砦を奪った際に出会った、奴隷として捕まった『魔族』を助けるべく動いていた男性だ。ウォーレン王国まで遺体を運ばせた『赤竜』はずっと前に帰ってきていたけど・・・
ゴードウェルさんが、ハールさんの座る王座の前に移動する。
「ハール陛下。ただいまご紹介にあずかりました、ダグラ・ゴードウェルと申します。ウォーレン王国では、伯爵位を賜っております。我が国と、貴国やラシアール王国とは、これまで交流はございませんでした。ですが、ダーバルド帝国から同胞を救い出す折、貴国のコトハ・フォン・マーシャグ・クルセイル様に、格別のご高配を賜りました。そのおかげで、亡くなった同胞に会い、彼らを国に連れ帰ることが叶いました。改めて、貴国とコトハ・フォン・マーシャグ・クルセイル様には、ウォーレン王国を代表し、心より御礼申し上げます」
そう言って、まずはハールさんに、そして私の方を向いて深々と頭を下げるゴードウェルさん。
・・・砦で見つけた『魔族』の遺体は、できるだけ丁寧に処理をして、彼らが国に連れ帰るのをサポートした。
彼らにもらったダーバルド帝国内で奴隷が多い場所の情報や、インディゴの家族がいるかもしれない施設のことは、捜索する上で大変役に立った。なので、こちらからも礼を言いたいくらいだ。
「我が国の国王、ピューヴェル陛下は、貴国と友好的な関係を築けることを願い、今回私を派遣いたしました。急な訪問にも関わらず、本日、記念すべき式典へご招待いただきましたこと、重ねて御礼申し上げます。そして本日を、貴国カーラルド王国と、ウォーレン王国との、友好的な関係の一歩とすべく、国交樹立を希望いたします」
そう言って、再び深々と頭を下げるゴードウェルさん。
「貴国の民が国に帰れたこと、嬉しく思う。そして、我が国と貴国との友好関係、余も願うものである。これから、良い関係を築けることを期待する」
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