危険な森で目指せ快適異世界生活!

ハラーマル

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第6章:龍族の王女

第289話:変わる戦況と追いかける男たち

~ダン・フォン・カーラルド視点~

建国式典やそれに続く各種式典を終え、正式にカーラルド王国第3王子及び軍務卿となり、2か月ほど。
カーラルド王国がラシアール王国を引き継いで成立した国とはいえ、ラシアール王国の軍部は汚職やら何やらで既に崩壊気味だったことに加えて、取り仕切っていた貴族が軒並み潰れたせいで、一からのスタートだった。

王宮騎士団長及び王宮魔法師団長の選任に始まり、新たな人員の確保、訓練、王宮騎士団及び王宮魔法師団と各貴族所管軍の役割分担等々・・・・・・
ラシアール王国での近衛騎士の勤務は、多忙であると思っていたが、比べものにもならなかったな。

どうにか、最低限の整備は済ませたが、情勢の変化はこちらの都合を聞いてはくれない。
現在、我がカーラルド王国の隣接国家両国による、戦争が起こっている。もちろんジャームル王国とダーバルド帝国だ。

ラシアール王国時代は、どちらとも深い関係には無かったが、カーラルド王国になって、ジャームル王国とは一応の友好関係が結ばれている。といっても、ラシアール王国の末期、国が割れたことにかこつけて、ジャームル王国が東岸を制圧、その後、コトハ殿の活躍に恐れをなしたのか、和平の締結と東岸の返還が行われたわけで、心から信頼できる国とはいい難い。

だが、

「殿下。今週3回目になりますが、ジャームル王国の特使から、派兵の要請にございます」
「はぁー・・・。またか? 最後に断ったのは一昨日だぞ・・・。たった2日で、状況が変わるものかよ・・・」
「おそれながら、それだけジャームル王国の状況が逼迫しているのではないかと。特使も、本国とはフェイヤー等を用いて日に何度も連絡は取っていると思われますので」
「国から、カーラルド王国に派兵を求めろって、せっつかれてるわけだ」
「はい」

特使の行動に説明はつくが、納得はできない。
ダーバルド帝国との開戦後、我が国は矢などの消耗品や食料の援助を行ってきた。他国の戦争に首を突っ込むつもりは無いが、仮にダーバルド帝国がジャームル王国を制圧すれば、ダーバルド帝国と国境を接することになり、それは困ると考えたからだ。まあ、そもそもクラリオル山を介しては接しているがな・・・

その交渉をする中では、我が国の軍を派遣することなど、想定に無かった。
それが日が経つにつれ、ジャームル王国の特使からの派兵要請の頻度が増していく。それほどまでに、状況が逼迫しているというのか・・・

「メルト伯爵。諜報部で把握している戦況を教えてくれ」

会議に出席にしていた諜報部の取り纏め役、メルト伯爵に説明を促す。

「申し訳ございません。戦況については、3日前の情報と、大きく変わりません。既に国土の半分程度が陥落し、騎士・兵の6割以上を失ったものと思われます。ジャームル王国西方に領地を構える貴族の死や行方不明、あるいは寝返りも相次いでいるようです。ジャームル王国の王都や第2の都市であるルメンは東方に位置するため、未だ戦場とは化していませんが、それも時間の問題かと思われます」
「・・・・・・うむ。少し前までは、ジャームル王国とダーバルド帝国の戦力は拮抗していた。それが、ダーバルド帝国の生み出した化け物兵器と、他の世界から召喚したという者たちで、こうも状況が変わるか・・・」

だが、この状況には妙に納得している自分がいた。
おそらく、コトハ殿を知ったことが原因だろう。彼女自身はもちろん、彼女が作り出したゴーレム、彼女に従うドラゴンたち。コトハ殿を中心とした勢力だけで、国家間の勢力バランスを根底から覆すことができる。親父とアーマスおじさんが、コトハ殿を勧誘し、繋ぎ止めることを最優先にしたのは、英断だったな・・・

「やはり、今の段階では、ジャームル王国と共闘することはできんな。だが、シャジバル辺境伯軍とフーバー辺境伯軍のもとに、国軍の一部を移動させるか。ジャームル王国の王都やルメンでの戦闘が開始した後に移動させるのでは、対応に遅れがでるかもしれんしな」
「・・・儂も賛成いたします。ジャームル王国から我が国へと逃げ出す民も多いと聞き呼んでおりますれば、国境沿いの混乱は必至かと」

バール侯爵が賛成したことで、軍部の方針は固まった。
国軍の正式な出陣には、国王である親父の許可が要るな。

「では、バール侯爵、メルト伯爵。今から父上にその旨をご相談申し上げる。一緒に来てくれ。ルスタル伯爵、サイル伯爵、そして王宮騎士団長、王宮魔法師団長は、必要な準備を整えよ」
「「「「「「はっ」」」」」」
「では、散会とする」


その後、親父の執務室内で、現状の報告と国軍派兵の方針を説明し、無事に承認を得られたので、準備に入った。
派兵する国軍は、王宮騎士団、各領から派遣される騎士団、そして徴兵された兵士合わせて2000人に加えて、王宮魔法師団から100人となった。規模自体はそれほど大きくはないが、建国後、初めての召集であり、王都近隣や両辺境伯家へ向かう道中に位置する貴族家から召し上げることになる。切迫した状況下で、ぶっつけ本番で召集することを考えると、緊急性に劣る今回、召集の手順や動きを確認できるのは良い機会であろう。
ただ、当然に派兵には費用かかるわけで、アーマスおじさんと共に国の財務に関する仕事をしているガイン兄貴は、頭が痛そうであった。
まあ、それは兄貴に任せる。


 ♢ ♢ ♢


~???視点~

「はぁ、はぁ、はぁ・・・」
「いたぞ!」
「逃がすな!」
「腕の1本や2本、奪っても構わん!」
「っ!?」

飛んでくる何本もの矢を避け、木の枝から枝へ、飛び移る。
身体を巡る魔力が、いつまで保つかは分からない。
攻撃しようにも、武器がない。素手で攻撃しても、アイツらが身に付けている皮の鎧の上からダメージを与えられるか分からない。里の戦士が身に付けている鎧を素手で殴りでもすれば、拳が割れる。そもそも、攻撃するために下に降りたら最後、他の男たちに切られて終わり・・・

「ちょっ!?」

そんなことを考えて足下をよく見ていなかったら、運悪く腐った枝を選んで踏んでしまい、枝が折れた。
折れるのと同時に踏ん張って、次の枝に飛び移ろうとしたが、バランスを崩して下に落ちてしまった。

「・・・ったぁ」

木の根元に落ちた僕を取り囲むように距離を詰めてくる4人の男。見た目は小汚い装備に、整えられていない髭や髪。
これが、里でババアに聞いた、『人間』か・・・

見たところ、他に敵はいないようだ。この4人を倒せば・・・

「残念だったな、『魔族』のガキ。大人しく一緒に来てもらおうか?」

先頭の男がそんなことを言う。
『魔族』? それって、俺のことか? 『魔族』って、頭に角がある・・・
俺の頭に角なんかねぇんだけど・・・

ニヤニヤしながら距離を詰めてくる4人の男。
その時、こいつらの内2人の腰から、変な気配を感じた。なんか、ムカムカする、気持ちの悪い感じ。
なんだ・・・?

そういえば、こんだけガチャガチャやってるのに、獣共が寄ってこない。いや、少し離れたところに気配は感じる。
・・・・・・この、変な気配か?

そんな中、

「痛い目みてもらうぞ!」

と、一番近くにいた男が、俺に向かって鞘に収めたままの剣を振り上げた。

俺は咄嗟に身体を翻してそれを避け、一回転して男の腹辺りを蹴り上げた。
すると、俺の足先で、男が腰に下げた巾着袋の中から「パリンッ!」と、人の身体からは聞こえないような音がした。

「おいっ!」
「まさか、割れたのか!?」

周りの3人が慌てている。
・・・ん? 変な気配の元は、簡単に割れる?

とりあえず、敵が焦っている。つまりは嫌がることならば、俺がすべきこと。
もう1人目掛けてタックルし、そのまま腰にある変な気配の元を殴りつけた。
「グシャ」っと音が聞こえる。拳にも確かな感触があった。

「てめぇ! 何しやがる!?」
「・・・お、おい。まさか・・・」

俺に殴られた男が怒り狂って剣を振り回すが、他の男たちはそれどころではない様子。
最初に蹴りつけた男も、真っ青な顔をしている。

次の瞬間だった、

「ギュラァァァァ!!!」

と、耳を劈くような雄叫び。

「・・・ブラッケラーか」

近くに気配は感じていたが、何故か様子を窺うだけで、行動していなかったブラッケラーが姿を現した。

「ひぃ・・・」
「化け物・・・」

男たちがブラッケラーに驚き、腰を抜かしている。
今がチャンスか・・・

俺はブラッケラーに向けて走り出す。
それに気付いたブラッケラーが、再び雄叫びを上げ、拳を振り上げる。
それを寸前のところで見切り、右前に躱す。

「ぐぇ・・・」

躱せたと思ったが、右脚をかすめてしまった。
だが、止まるわけにはいかない。ブラッケラーは、向かってくる俺に対し、咄嗟に攻撃した。けれど、一度視界から外れれば、次のターゲットは・・・
俺の逃げ道がブラッケラーの後ろにしかなかったから、無茶な賭けをしたが、ギリギリか。

「お、おい」
「来るな!」

男たちが喚いているが、こいつらではブラッケラーには勝てない。いくらこのブラッケラーが、まだ若い個体だとしても・・・
ブラッケラーに後を任せ、痛む右脚を引きずりながら、その場を後にした。

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