危険な森で目指せ快適異世界生活!

ハラーマル

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第6章:龍族の王女

第290話:文官不足

ふかふかのベッドで目が覚めると、窓の外からは威勢の良い、新人騎士たちの声が聞こえてくる。普通は、小鳥の囀りとかのが気持ちがいいのかもしれないが、私にとってはこっちの方が落ち着く。帰ってきたことを実感するのだ。

寝室の扉を開け、廊下に出れば、待ち構えていたフラメアが、元気に挨拶をくれる。
それに応じつつ、家族用の広間に向かえば、既に着替えているカイトとキアラが朝食を掻き込んでいた。

「おはよう、カイト、キアラ」

2人が元気そうなことを確認すると、いつの間にか直ぐ後ろにいたレーベルに言って、朝食の用意を頼む。
私より先に2人が起きているのも、ポーラやインディゴ、メイジュの年少組3人がまだ寝ているのも、いつも通り。2か月ほど前に王都から帰ってきてからの、日常だ。カイトとキアラは、いつも通り外でやっている騎士団の訓練に参加するのだろう。


王都から帰ってきてからは、ハールさんたちと約束した対ダーバルド帝国用の砦設置に向けた準備や領都南の探索に向けた準備、そして本格的に1つの貴族領として運営していくに当たっての組織作りに時間を割いていた。
・・・・・・そのせいで、ドランドとの武具開発やゴーレム開発に、ほとんど時間を割けていないのはショックだった。

とはいえ、一度引き受けたものを投げ出すのも違うので、真面目にやった。
まずは砦。これについては、砦そのものを設置するのは問題ない。一度、領都北、森の境目付近に砦を作っているので、リンやマーラたち協力のもと、場所を決め、木々を伐採し、邪魔な岩を壊すことで開けた場所を作り、簡単に設置した。

困ったのは人員だった。
王都から帰った当時、うちの騎士団に所属する騎士の数はおよそ150人。実際の運用には、加えて騎士ゴーレムを200体以上投入できるが、対ダーバルド帝国として砦を運用していくには、監視や情報連絡、周辺の調査など、騎士が必要だった。

もっとも、この問題は直ぐに解決した。
私たちに遅れること1か月弱。レーノが戻ってきた。レーノは王都で、数人を雇用し、アルスさんたちと共に、屋敷の管理ができるようにしてきた。今はフェイが残り、彼女たちの監視と指導をしている。

レーノが戻ったことで、実務的な準備が本格化し、新たに60人ほどを騎士団に採用することになった。
私たちが王都にいる間、断続的に採用希望者が砦を訪れていたらしい。だが、留守を任せていたヤリスやアーロンは、私か少なくともマーカス、レーノの許可無く雇えないとして、ガッド付近での滞在を指示していた。
そんな騎士団への入団希望者を順次面接し、採用した。60人は多い気もしたが、どのみち、これから、領民が増え、文官が増えと続くだろうとのことで、諦めた。

未だ訓練中の彼らだが、最低限の戦闘能力を有している者が大多数。出身は冒険者が少しと、ほとんどが騎士。ラシアール王国の末期、ハールさんやアーマスさんと歩調を合わせることを拒んだ結果、カーラルド王国では貴族に叙されなかった家々に仕えていた元騎士が多かった。末端の騎士であれば、当該貴族の判断に関与したおそれもないため、後は個々人の性格や資質を見て、採否を判断した。

そんな彼らに最悪の場合の領都防衛を任せることにして、日夜訓練を行っている。
そして、既に訓練を終えているうちの騎士たちを、北と西の砦に配備している。こうすることで、急ぎ西側の砦の運用を開始することができた。


 ♢ ♢ ♢


急いで騎士を増やし、なんとか砦を運用することができたとはいえ、領の組織再編は待ったなしだ。
これまでは、武具生産や農業、服飾、そして軍事のそれぞれから代表が集まる領内会議を定期的に開催し、様々なことを決めたり、相談したりしていた。そもそもが、領民総数400人ほどで、全員が全員、顔見知り。田舎の村のような感じだった。

だが、今後人口が増えればそうもいかない。マーカスたちによれば、当面の間は人口が増え続けるだろう、と。もちろん、私がそれを完全に拒絶すれば制限できるが・・・
基本的に、人口が増えることは領の発展に繋がる。人が増えるということは、働き手が増えるということで、消費も増える。そうして経済活動が活発になれば、商人なども集まり・・・
まあ、人がどんどん減っていくのと比べれば、どちらを目指すべきかは明らかだ。

一方で、人が増えればその分、統治は難しくなる。人が増えれば争いが増えるし、税に関するものを筆頭に事務仕事も増える。当然、それらに対応すべく騎士団を増強したり、文官を増やしたりも必要になる。
そもそも、人が増えれば意見の完全な一致など到底見込めないわけで、領の方針をどのように決め、運営をどのように行うか、基本的な制度の構築が急務になる。これは、今後を見据えて、今の時点で開始しておくのが吉だろう。

そんなわけで現在、領主の屋敷で一番広い部屋、通称大会議室に集まっていた。

「とりあえず、領の組織を固めないとなんだよね」

私の嫌そうな声に、苦笑いをしながらレーノが、

「はい。大きく分ければ軍部と財務部でしょうか。クルセイル大公領は、魔法武具の生産と魔獣・魔物の素材の販売が現在の主力産業ですから、生産部のようなものを独立で設ける手もあります。ですが・・・」
「文官足りないよね」
「・・・はい。ですから、財務部にて全て行うしかないかと」

そう。うちの最大の問題。それは、圧倒的文官不足だ。
クルセイル大公領は、王家というか国に税を納めることはしない。ただ、何事にもお金は必要。これまでは、領自体が1つの会社のような形態だったので、魔法武具の売り上げや魔獣・魔物の素材の売り上げは自動的に領の資産となっていた。

だが、これから人が増えること、増える人全てを信頼しやっていけるかといわれると難しいことから、これまでの各種事業は領主直営のような形にして、それ以外は他の領と同様に営業の許可を出し、税を納めさせる方式を考えている。
ただ、そうすると当然、税務署のような組織が必要であり、その職員が必要になる。

これまでは、レーノとヤリス、そして教育中の数人でなんとかなっていたが、さすがに足りない。
しかし、この国、というか世界。教育レベルが前世とは比べものにならない。いや、そもそも比べるのが間違いなのかもしれないが・・・
簡単な書類仕事がどうとかのレベルではなく、平民の中では読み書き計算で満足にできる人の方が少ないのだ。
そして、書類仕事をこなせる人材が浮遊しているはずもなく、基本的に王都で働いているか、どこかの貴族領で働いているか、商会に雇われているか・・・

「子どもたち育てるにしても、時間かかるしねー」

うちの領に住む子どもたちには、教育を義務付けた。同じくこの国、というかこの世界では、平民の子どもの多くは半人前の労働力として扱われる。冒険者登録も 10歳からだし。
もっとも、うちの領では子どもに働かせないと回らないような場所はない。当初は文官不足解消、というよりは私の価値観的に、子どもに労働を強いることに否定的だったので、教育を義務付けた。子どもは、遊び、希望者は騎士団の訓練に混ざり、そして勉強する。
騎士団での訓練が仕事ではないのか、といわれると難しいが、この世界ではある程度の戦闘能力は生きていくのに欠かせないので、まあ。

そんな風に悩んでいるとき、ふと結葉さんと目が合った。
・・・・・・読み書き計算ができて、書類仕事ができる人材。いや、高1の彼女が書類仕事を直ぐできるかは分からないが、未経験の平民を集めるよりは遥かに早いだろう。

「結葉さんたちは、やりたいこと見つかった?」

何はともあれ、本人たちの希望が優先。
藤嶋君は、騎士団に入ることがほぼほぼ決まっている。彼は、カイトの『身体強化』に似た能力、というか『鑑定』したら、まんま『身体強化』が使えた。
王都までの道中で魔獣・魔物との戦闘も経験していたようで、騎士団を希望した。冒険者も考えたらしいが、1人で冒険者をするのは危険だし、一緒に組む相手もいない。妹の佳織さんや結葉さんたち4人は、魔力はあるように思うが現時点では戦えない。
そんなわけで、騎士団内定。

そして4人にも今後のことを考えてもらっていたのだが、

「ひとまず、何かお手伝いできることがあれば、と。先程まで話していた、文官、ですか。事務仕事は、人並みにはできると思うので・・・」

文官、4人確保だ。

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