危険な森で目指せ快適異世界生活!

ハラーマル

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第6章:龍族の王女

第323話:国内の拠点

かなり遅くなりまして、申し訳ありません。
できる限りペースを維持して更新していきます。
↓以下本編

~マーカス視点~

既にダーバルド帝国軍で立っているのは、この男一人。
雑兵の死体はそこら中に転がり、上官と思しき3人と降伏した兵士5人を拘束している。
捕らえた上官は何やらわめき散らしているが、降伏した5人はおとなしく、むしろ安堵しているようにすら見える。

そんな当方の圧倒的優勢・・・、いや、既に当方が勝利している中で、一人戦い続ける男。

「・・・隊長。どうしますか? 囲んでいる3級クラスの騎士を出せば、簡単に片が付くと思いますが・・・」

今、あの男と打ち合っているのは7級の騎士1人と8級の騎士が2人。騎士の中でも若手だ。周囲で備えている3級クラスの騎士と比べるとその実力差は歴然。
そもそも、7級騎士であっても、クルセイル大公領の外の基準で考えれば十分な猛者だ。冒険者のランクでいうとブロンズランクの中位から上位といったところか。特に魔獣・魔物が跋扈する魔境はともかく、普通の町や村の周辺に生息する魔獣・魔物を討伐する依頼であれば難なくこなせるレベルだ。

そんな7級騎士が8級騎士のサポートを受けて戦っているのに、制圧するのに時間がかかっている。
最初はあの兵士がかなりの腕前なのかと思ったが、戦闘の処理をしながら見ているとそうではなかった。いや、ある程度の腕はあるようだが・・・

「守りに集中しているみたいですね」
「ああ」

とにかくこちらの騎士との距離を詰めすぎないことを意識し、攻撃を安全に躱し、軽く剣で打って下がる。自分からはほとんど攻撃せず、たまに出す攻撃は距離を取るためのフェイク。

「目的が分からん。時間を稼いで増援でも期待しているのか?」

この場には、あの男以外に戦えるダーバルド帝国の兵士はいない。それに、拘束した上官3人の様子を見ていると、増援が助けに来るとは思えない。

「隊長。こちらの援軍です」

あの男の考えが分からず悩んでいると、そう声をかけられた。
見ると、クライス砦の方角から、猛スピードで向かってくる騎馬隊が目に入った。

「ヒロヤか。よし、ここは第3中隊に引き継ぐぞ。準備しろ」
「「「はっ!」」」

俺たちの任務は、カイト様を安全に領都へ送り届けること。離れた場所で待機させている馬車列は、十分に安全を確保しているが、できるだけ早く領都へお連れしたい。今はコトハ様も領都から出られており、カイト様は領都の責任者でもある。


およそ20騎の騎馬に4台の馬車、30体ほどの騎士ゴーレムが到着し、既に強固であった戦場の支配権を完全に確保した。
ヒロヤに状況の引き継ぎを行い、捕虜を引き渡す。死体の処理も任せ、俺たちはカイト様の馬車と合流した。
そうして引き継ぎも終わり、この場を離れようかと思ったのだが、どうしてもあの男のことが気になる。引き継ぎをしている間も状況は変わらず。もっとも、こちらが負ける可能性が更に低くなったことで、現状維持のまま、他の処理を優先したのではあるが。
到着した第3中隊に、周辺の偵察を依頼したが、遠巻きに戦況を見つめるバイズ公爵領軍の姿は確認できたものの、それ以外には冒険者や商隊しかおらず、ダーバルド帝国の援軍など影も形もない。

「こうなったら、直接聞くか」

そう思い、唯一戦闘が続く一角へと近づく。

「おい! そこのダーバルド帝国兵。悪いことは言わん、武器を置け」

ひとまず、降伏を勧告する。
俺の怒鳴りにこちらを一瞥した兵士だが、無言のまま。そういえば、この兵士は一言もしゃべっていないのか?

「聞こえているだろ? 周りを見ろ! 勝ち目は無い!」

再度叫ぶが反応はない。
どうしたものか・・・
剣を交える騎士が、「制圧に向かいますか?」とこちらを見るが、どうしたものか。
どうも、力任せに倒すのが憚られる。単に俺にモヤモヤが残るだけかもしれんが・・・

「最後の警告だ。お前が勝利する可能性はない。援軍もこない。貴様らの負けだ。お仲間と一緒に大人しく縄につくか、死ぬかだ」

そう言った途端、

「仲間ではない!」

初めて返事があった。

「何を言ってる? お前もダーバルド帝国兵だろうが」
「違う! 俺をあんなのと一緒にするな!」

・・・・・・交渉ごとにおいて、相手を怒らせるのは手法の1つだと前に息子が言っていた覚えがあるが、まさにだな。俺が今、交渉しているのかは不明だが・・・

「だったらお前は? ダーバルド帝国軍の中にいて、我々に剣を向けている。不法に越境し、カーラルド王国内で活動する、ダーバルド帝国軍の一員以外の見方があれば、説明してみろ!」
「俺は・・・」

防御に神経を注いでいたところで、俺の言葉に過剰に反応した結果、綻びが見えた。
そこをついて、2人の騎士が背後から迫る。寸前で気づいた男だったが、剣は前方でもう1人と打ち合っており、後ろに回すことはできない。どうにか身体を翻して逃れようとするも、2人の騎士に背後から押さえつけられ、ようやく、長い戦闘が終結した。


 ♢ ♢ ♢


カイト様に戦闘の結果を報告し、捕らえた捕虜は第3中隊の馬車でクライス砦へと移送することが決まった。その後で、バイズ公爵に引き渡すか考えることになる。
その前に、

「では話せ。お前のことを」

最後まで抵抗していた男の話を聞くことにする。

「・・・俺は、ジャームル王国の冒険者だ」
「は?」
「ジャームル王国の中部にあるいくつかの町を拠点に、冒険者として依頼をこなしていた。戦争でその町がダーバルド帝国に占領されるまではな」
「そんなお前が、どうしてダーバルド帝国の兵士みたいなまねを?」
「・・・家族が、弟と妹が人質になった。助けたかったら部隊に加われと言われた・・・。俺の働きによっては、早く解放してやる、と」

嘘、とは思えない。ダーバルド帝国がそういった非道なまねをすることに今更驚きはないし、この場でこの男が嘘をつく必要もない。同情をかって、見逃してもらえるとは思っていないだろう。
だが、

「だったら、どうしてあんな戦い方を? 俺たちを殺そうとは思えなかったが」
「・・・親は死んでるから、俺は2人を守り、育てなきゃならねぇ。戦いが始まって直ぐ、勝てる相手ではないと分かった。あっという間に倒れていくダーバルド帝国の兵士を見て、混乱に乗じて逃げるのが最善だと。ここにいるダーバルド帝国兵は全員死ぬと思った」
「逃げて、弟さんと妹さんを助けに?」
「ああ。この国の中にいる」
「・・・・・・どういうことだ?」
「俺たちはジャームル王国からこの国に入った。入って割と直ぐに、洞窟のようなところへ連れて行かれた。他にもあるらしいが俺はそこしか知らん。この国にある、ダーバルド帝国軍の拠点だ」
「「「なっ!?」」」

この国にダーバルド帝国の拠点がある!?

「それは本当なのか?」
「ああ。俺もしばらくはそこにいたからな。元は盗賊の根城だったらしいが、それを奪ったんだと」

・・・・・・それはまずいな。ジャームル王国から押し寄せる難民への対処に苦慮していたことは知っているが、ダーバルド帝国軍が国内に拠点を築いていることに気づけていないとは・・・

「それが本当なら、その拠点を潰さないと」

後ろからの声に振り返ると、カイト様が硬い表情でこちらを見つめていた。

「はい。ですが、さすがに我々の手に余るかと。戦力の面ではなく・・・」
「そうだね。今の話だと、拠点があるのはジャームル王国の近く。つまり国の北側なわけで、うちからは遠いもんね。・・・マーカス、あそこにいるのって、バイズ公爵領の騎士団だよね?」

カイト様が指された方には、戦いの行く末を確認、もとい監視していたバイズ公爵領の騎士の姿があった。
この場所は、バイズ公爵領の領地ではあるが、うちとの関係から、実質的にはうちの騎士団が利用している場所。そのために問題が無い限り介入する気はなかったのだろう。

「そうだと思います。戦いの行く末に加えて、我々の戦力を見定めていたのではないかと」
「ああ。そりゃあ、気になるか・・・」
「ええ」
「うん。まあ、この問題は僕たちが考えるより、宰相のバイズ様が考えることだよね。そういうわけで、あの騎士に、この人や他の捕虜のことは任せよう。あなたは、騎士の質問に誠実に回答してください。僕の方から、弟さん、妹さんのこと。あなたがこの戦いでこちらを害する意図が無かったこと、重要な情報を積極的に話したことは伝え、あなたを免責し弟さん、妹さんとともに解放するように要請しておきます」
「・・・」
「あなたも、これが最善策なことくらい、分かっているのでしょう?」
「・・・・・・・・・・・・はい。よろしく、お願いいたします」

そう言って、両手を後ろに縛られたまま、額を地面にこすりつける男。
カイト様の判断は、悪く言えば問題の丸投げでもある。それこそ、最短でその拠点を制圧できるのは、うちだろう。だが、それはその他の全てを無視した雑な手法。
他方に配慮し、当方へ負担がなく、そして成果を得られる可能性が高い方法。それを瞬時に提案されたカイト様は、やはり貴族の器の持ち主なのだろう。不敬極まりないが、コトハ様と比べると遥かに。


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