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20.力の差
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【さぁ、いよいよ決勝戦!】
いよいよその時がやってくる。
決勝まで勝ち上がった二人。
【東側、ウィリアム・アーガイル! クラスは賢者!】
颯爽とこちらに歩み寄ってくるウィリアム。
赤毛の軽い髪がふわりと揺れ、その奥にある柔らかく、けれどもまっすぐした瞳が露わになった。
リートはまっすぐと敵を見据えて闘技場の中央へと歩いていく。
相対する敵の能力は計り知れない。
なにせサラを瞬殺した男だ。
サラは、剣技の面では自分と同じくらいの実力があり、聖騎士のクラスも持っている。
騎士になりたてとはいえ、かなりの強敵であるはずだ。
果たして勝てるのか。
リートは自問自答した。出てきた答えは――「わからない」だった。
正直自信はなかった。
しかし逃げ腰になるほどではない。
真剣勝負は何が起こるかわからない。
全力で戦うだけだ。
【西側。リート。クラスはありません!】
そのコールに観客も慣れてきた。
互いに実力者であることは会場もすでに理解している。
果たしてどっちが勝つか、観客には全くわからないが、それが観客達を惹きつける。
【それでは――試合開始!】
――審判の言葉。
先に動いたのはウィリアムだった。
「“ファイアーランス・レイン”!」
まずは挨拶代わり、という感じか。
ただの魔法使いでも使える一般的な技を繰り出す。
――だが、その威力は段違いだ。
直感的にそれを察したリートは、全力で迎え撃つ。
「“神聖剣”!」
自分に使える最強の技。
光の刄から放たれる渾身の一撃がが炎の槍を撃ち落とす。
――直感が正しかったことを剣越しに感じる。
騎士採用試験で同じ技を受けたことがあったが、あの時とは桁違いの威力だった。
聖騎士が“神聖強化”で基本的なステータスを強化しているのと同様、賢者にも固有の常時発動スキルがあるはず。その影響も大きいだろう。
だが、それだけではなさそうだ。
――リートは全力の斬撃でファイヤーランスを受け切った。
しかし力の差を実感する。
賢者と聖騎士の力は互角だ。
だが、どれだけスキルを使いこなせているか、そこでは差がついている。
ウィリアムがスキルを使いこなしているの対して、リートはまだまだ借り物の域を出ないのだ。
――ウィリアムは、続けてさらなる魔法を放つ。
「――“ドラゴンブレス”!!」
ウイリアムが軽々と放った上位魔法は、直感で受けきれないとわかるほどの威力だった。
この技はサラの神聖剣を打ち破った。
サラが勝てなかったのであれば、俺が勝てるわけがない。
――だが。
リートはそれでも一縷(いちる)の望みに賭けて、再び最強最速の技を放つ。
「――――“神聖剣”!」
光の刃とともに炎へと飛び込んでいく。
光と炎がぶつかる。
凄まじい衝撃ッ!
感じたことがないほどの圧力。
剣がまとった神聖(ひかり)が削られていく。
――ダメだ、斬りきれない!!
炎に体が焼かれる感覚――
だが、
「“ドラゴン・ブレス”!!」
とっさにリートはその魔法を放った。
前にローガンからコピーした上級魔法。
所詮借り物、単体で“賢者”ウィリアムのドラゴン・ブレスを打ち破るほどの力はないが、神聖剣で威力を削った後なら!!
リートの剣が灼熱をまとい、ウィリアムの攻撃を切り抜けていく。
視界がひらけたッ――――!!
その先に、ウィリアムの姿。
剣は燃え尽き、形を失おうとしていた。
だからリートは代わりに、左手を握りしめて、ウィリアムのみぞおちめがけて、渾身の拳を叩きこ――
「――――降参だ」
その言葉にリートの拳が止まった。
【勝者、リートッ!!】
審判の声が闘技場にこだました。
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