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ジル サイド⑵
しおりを挟む「あの、俺のことはジルって呼んでほしい。俺はなんて呼べばいいかな。」
勢いで二人きりになってしまい、少し緊張しながら話した。
「分かりました。僕のことは何でも呼びやすいように呼んでください。」
「じゃあ、ナオって呼ぶね。ナオこれからよろしく。慣れてきたらでいいから敬語を抜いてほしいな。」
「分かった。こちらこそよろしく。」
ナオは皇族の俺に萎縮するでもなく、媚び諂うでもなくただ平静に受け答えをしていた。
このような態度を取られることが初めてで新鮮だった。だからなのかは分からないが、無意識に俺の口からよろしくと出てしまっていた。そして、最初と変わらない態度のナオから放たれたよろしくと言う言葉は純粋に受け取って良いものだと思えた。
「ナオは甘いもの好き?」
コクンと頷いたナオに楽しい時間を過ごしてもらいたくて必死になって自信がある所をすすめる。
「じゃあ、あそこに行こう。色んな種類のケーキがあるんだ。きっと好みのものが見つかると思う。」
「ふふっ、どんなケーキがあるか楽しみです。」
ずっと表情を変えなかったナオが微笑むと周囲にフワッと花が咲いたようで、男とか女とかどうでもよくなる位強く惹かれてしまった。その気持ちに自覚してからは、不思議ともっと笑顔が見たいという願望とグチャグチャに泣かせてみたい、困った顔が見たいと正反対の願望が渦鳴いた。
「あ、あぁ。早速行こう。」
今はとりあえず仲良くなることが優先だと思い、戸惑う内容の願望を打ち消す。
「うわぁ!美味しそう~ジルどれがおススメ?」
「俺のおすすめはこのイチゴタルトだな。家のシェフが腕によりをかけて作ったんだ。」
「そうなんだ!絶対美味しいやつじゃん、食べる!あとはこれとこれとこれと~」
「そ、そんなに食べるのかい…?」
「もちろん!だってスイーツとか久しぶりなんだもん。」
「んん~美味しい~幸せ~。」
甘いものを手にしてからのナオは先ほどと打って変わって警戒心や隔てていた物が全てなくなったのかと錯覚するほどに表情が変わり、言葉遣いを崩していた。
その様子も可愛く、愛おしく見えた。今日初めてあった人になんで、と思うが初めて感じたこの気持ち、感情を大事にしたいとも思うため深く考えないようにした。
もっと色んなことを話して、もっと深く知りたいと思っていたのに、その時間は見たこともない無礼な3人組にあっけなく潰される。その後は団長さんが迎えに来て早々に帰ってしまった、残念…
だが、前向きに考えることにする。まだ2年あるが学園に入るとほとんど毎日一緒にいられるのだ。
ナオのことを考えると胸の奥からワクワクとし、温かくなるような優しく心地いい気持ちを大切にしたい。
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