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真実は?
しおりを挟む「何をしている。」
ローゼやアミリアス達を囲っていた生徒達の一角がモーゼのように道を開け、そこから男子学生が…ロイド殿下が顔を出した。後ろにはナーウェイドやキートリアも仕えている。
「ロイド様!!アミリアスが様が酷いんですの。私の教科書をビリビリに破いて捨ててしまって…」
我先にと話し始めたローゼとは打って変わって、一言も話そうとしないアミリアス。
その様子を見てロイドは口を開く。
「ローゼ嬢、アミリアスが破いたところ見たのだろうか。」
「み、見ていませんわ。でも、アミリアス様が私とロイド様の仲に嫉妬して行ったに違いありませんわ。」
「失礼ながら殿下…私からもよろしいでしょうか。」
ジッと様子を見ていたキートリアが口を挟む。ローゼは自分の意見を擁護してくれるのだと考え、縋りつく様にしていた態度とは一変して強気な表情をしている。
「キートリア、珍しいな。良いだろう。話せ。」
「はい…昨日のことなのですが、ローゼ嬢とアミリアス様が話しているのを耳にしました。ローゼ嬢がアミリアス様に対してなぜ自分をいじめないのか、いじめないのならアミリアス様にいじめられたとローゼ嬢自ら先に申し出ることで、アミリアス様がいじめていないと言っても皆は自分を信じるだろう、と話しているところを聞きました。」
「なっ、そんなことデタラメだわ。私がそんなこと言うはずありませんわ。第一証拠もございませんもの。」
必死で弁明するローゼをよそにアミリアスはさっきから一言も発しない。ロイドはそんなアミリアスに話を振る。
「アミリアス、貴方の意見をお聞きしても?」
「はい、私がお話しすることは何もございませんわ。」
アミリアスのその一言で、その場がシーンと静まる。が、アミリアスは気にせず表情を崩すことなく平然と話を続ける。
「私がこの場で何を話そうと何も変わりませんわ。否定しようが肯定しようが、私の意見が反映されることはないでしょう。」
もしかしたら謂れのない罪を被ることになるかもしれない場面で一瞬の隙もなく、動じることもなくただただアミリアスはいつも通りなのである。
それが当たり前と言う物言いと、ただいつもの微笑みとも諦めのようにともとれる笑みに、このような場面を何度も経験しているかのような錯覚を感じる。
「何を…アミリアス、ちゃんと君の言葉が聞きたい。」
「…そうやって少しのことで希望を持たせてはまた裏切られて。この世界になんの望みが、意味があるというのでしょう。」
アミリアスがいつも通り上品な笑みを浮かべて放った言葉に騒然とする。
純粋に分からず教えてほしいのだと言うような問いかけに、ロイドは何も答えられず沈黙が続く。
具体的なようで抽象的で、何を指しているのか分からないのである。
「今の言葉は忘れてくださいな。私は食事も終わりましたし、教室へ帰らせて頂きますわ。」
沈黙を破ったアミリアスはそう言って学友と食堂を後にした。
残された者は何も発することができず、いや若干一名騒いでいる者がいたが誰も相手にすることなく、授業開始の予鈴により各々が教室へ戻っていくのであった。
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