【完結】引きこもり陰キャの僕が美形に転生したら

抹茶らて

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閑話休題 (読まなくても本編に影響ありません)

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ボツ話ですがしっかりと設定を書いたため、IFストーリーとして楽しんでもらえたらと思います。(時間軸はディが悪い雰囲気から逃げ出してきた所です)

家族愛がメインとなってしまったため、ボツとしました。読まなくてもこれからの内容に影響ないためスキップしても大丈夫です!
興味のある方は是非読んでみて下さい✨


※3000字程度あります





************

「ディディエ=エレクサリア様にご挨拶申し上げます。コーデリア伯爵家が次男、エミリオ=コーデリアと申します。よろしければ私とお話をして頂けないでしょうか?」

壁の花の如く休憩をしていると、しっかりとした貴族形式で話しかけてきたのは同じくらいの年頃の男の子。伯爵家という割には肝が据わっている気がする。

「(話をするって何を話すのかな…僕ただでさえ友達なんていないし、この年くらいの子どもが何を話すかなんて知らないんだけど大丈夫かな…)…僕でよろしければ…」

しぶしぶ頷いたこの時の自分を後悔してももう遅い。

自分の家で催しているパーティーで自分がまさか危険に冒されるなんて思ってもみないじゃないか。ましてや、相手はこんな同い年ほどの子どもなのに。

「ありがとうございます!ずっとお話して見たかったのです。社交界ではあまりお見かけしなかったので…」

「そう、なのですね。色々あって、社交界は避けていたので…」

「ではこの誕生日会に感謝ですね。」

そう言って、シャンパン…ではなく、子ども用のジュースの入ったグラスを一つ差し出してくる。
なんかこの子、子どもにしてはやることがいやに洒落てるな。

「ありがとう。」

自分の家から出しているものだから、なんの疑いもなく口にする。

「そういえば、今日は姉上と一緒に来たのです。姉上も是非一度お話してみたいと言っておりまして…よろしければご足労頂いてもよろしいでしょうか?」

「(あれ、格下の家柄が格上の者を呼び出すのは失礼なんじゃ…?年上だから良いのか?どうだったっけ?)」

いきなりのお誘いに色々考えてしまうも、何故かいつも以上に頭の周りが遅くて思考が巡らない。

「どうかしましたか?顔色が優れないようで…私でよろしければ休憩室まで付き添います。」

なんて僕の体調を気にして面倒を見てくれるらしい。
そうして、パーティー会場を出ていくつかあるうちの休憩室へ入る。…とそこには先客がいたようでソファーに足を組んで反り返っている。

「姉上、連れてきました。こちらが末っ子のディディエ=エレクサリアです。」

そんな先客に僕を支えていた男の子は、僕をあろうことか放り投げる。

「(え、え?今どういう状況?僕なんでこんなところに?どうして僕地面に転がってるの?)」

「よく来たな、童はコーデリア伯爵家が長女、エマリー=コーデリアじゃ。ゆくゆくはこの国の皇妃になる者だ。此度、其方をここへ呼んだのは他でもない、皇子殿下や公爵家の者達を誑かしている者がおると聞いてな。釘を刺しておかんとと思ったのじゃ。」

随分痛い奴が来たと思ってしまった。

相変わらず頭はボーっとして回らないけど、目の前の人が危ない人なのは分かる。
もしかして僕と同じ転生者?それで自分はヒロインにでもなれると思った痛い子なのか?それにしては話し方が古いような…

「おい、聞いておるのか。リオ、こやつにどれほど盛ったのだ。」

「え、っと…貰ったものをとりあえず全部…」

「っ!馬鹿者!そんなことをしたら、無事ではすまんやもしれぬ!なんてことを!」

「姉上申し訳ございません。ど、どうすれば…」

僕は此処にいるのに、どこにもいないような不思議な感覚を感じつつ、この三人の空間を客観的に見ている自分がいる。

「解毒剤があったろう、それを今すぐこやつにのませるのだ。」

「分かりました!って口を開いてくれません!」

「そんなもの、口移しでもなんでもすれば良かろう!」

え、僕この男の子に口移しされるの?嫌なんだけど…男とか女とかそれ以前の問題と言うか…家族にはキスとかしてるのに、やっぱり家族は特別なのかな…

「天使に口移しなんて汚らしいこと、させる訳ないよね。」

「僕だってまだしたことないのに…」

「ユーリ、そういうことじゃないと思うが…ボソッ)まぁ私もいつかするときが来れば…」

「皇子殿下は何を考えているのか知りたくもありませんが、今は妄想はほどほどにして頂きたいですね。」
「なっ、妄想など!今はディを助けることが先だ。」

近くで聞きなれた声がする。

でも誰の声か分からない。ここがどこかも分からない。

「(あれ?僕って誰だっけ?ここどこだっけ?)」

一向に回る気配のなかった頭の思考回路が急に加速し始める。

「(僕何してたんだっけ…この声聞いたことある気がするけど、誰だっけ?)」

「ディ…ゆっくりお休み。お兄ちゃんたちが片付けておいてあげるからね。終わったらケーキでも食べようね。」

優しい声が聞こえるけど、誰の声か分からない。お兄ちゃん?僕にお兄ちゃんなんていないけど…この人は僕に話しかけてるの?

そうだとしたら、なんでそんなに優しく話しかけるんだろう?僕に優しくしてくれる人なんていないのに…



そこまで考えて、キャパオーバ―したらしい僕の意識はプツリと堕ちてしまう。

そこから先は暗闇が広がっていた。

やっぱり僕の居場所は此処なんだ。誰もいない、居場所なんてなかったんだ。さっきの優しい人は誰だったんだろう。





―――――――――

ディに盛られた薬は少量だと睡眠薬としても使用されているが容量を間違うと脳神経系に影響を及ぼす代物だった。

ヴァン、ユーリ、リアンの手で捕まった伯爵家の者が言うには、安全とされている所定量をはるかに超える量を摂取させたと。

誕生日パーティーが終わった後も一向に目を覚まさない天使。いや、詳しく言えば目が覚めているのに何も話さないし、反応しないのだ。ただの人形の様にただただそこにいるだけ。生きていることだけで嬉しいのだが、天使の思いや感情はどこに行ってしまったのかと考えると、公爵家の者を含めた天使信者たちは食べ物が喉を通らず、眠れない日々が続いた。

「ディ、すまない。少しでも目を話してしまったお兄ちゃんを許してほしい。だから早く目を覚まして…」

「ディ、またお兄ちゃんと一緒にあそぼう?その可愛い笑顔をまたお兄ちゃんに見せて?」









その頃のディは―――――


どこもかしこも真っ黒。前も後ろも分からなければ、右も左も分からない。
この世界に、本当に自分一人しかいないような感覚。でも、この感覚が懐かしいと感じるのは何故なんだろう。僕はずっと一人だったのに。親も友達も、誰も僕のことを認識してくれる人なんていなかったのに…

『ディ、すまない。少しでも目を話してしまったお兄ちゃんを許してほしい。だから早く目を覚まして…』

『ディ、またお兄ちゃんと一緒にあそぼう?その可愛い笑顔をまたお兄ちゃんに見せて?』

…誰の声?お兄ちゃん?お兄ちゃんなんて僕にはいない…

『ディ?私たちはディが褒められると嬉しいわ。どんなことでも。だけど、ディの重荷になることは望んでいないの。だから、簡単に言うとねディがしんどいなって思ったら言って欲しいの。』

『ディ、お前は私たちの大切な存在なんだ。それだけは忘れないでおいてくれ。』

僕の中にあるいつかの記憶。

ディは僕のこと…なのかな…

こんなに僕に温かな愛情をくれる人が……

「ディ、早く私たちのところへ戻っておいでちょうだい。お母様悲しくて、泣いちゃうわよ。」

「あぁ、お父様も涙が止まらない。ディ、お前の笑顔でしか私たちの涙は止まらなさそうだ。」

辛そうな、寂しそうな男女の声がする。切実に願う言葉と涙を含んだ声色が僕の涙を誘う。

「(泣かないで!…あれ何で僕、この人達に泣いてほしくないって思うんだろう…)」

いくら考えても分からないけど、僕まで泣きたくなるのは…僕の大切な人たちなのかな。

「(僕、何か忘れてる?…忘れてるなら思い出したい!辛いことでもいい!こんなに僕を思って泣いてくれる人がいるのなら、僕はもう一人じゃないから…)」

そう強く願ったら、視界に光が差し込んで温かい何かに包まれている感覚に襲われる。

「(この髪は)お母さま?」

「っ!~~~~っディ!ディだわ。お帰り、私の可愛い子。よく頑張ったわね。」

震えている肩に呼びかけると、一瞬びくついた身体は距離を取りこちらを見た後、涙を流しながら力いっぱいに僕を抱きしめる。

その後ろにいたお兄さま達も感極まったようにこちらへ駆けよって篤い抱擁を交わす。

「「ディっ!」」

皆涙が止まらないから、僕には何が何だか分からないけど、いつも強い皆がこんなに泣いてるんだ。よっぽどのことがあったんだろう。(究極の客観視)






バンッ






勢いよく部屋へ入って来たのはお父さま。

その勢いのままこちらへ来てそのまま無言で家族みんなを抱きしめる。





「皆よく頑張った。」
















※次から本編へ戻ります





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