34 / 75
第2章
幸せな時間
しおりを挟む「それで、拘束したその日に種明かしをするのを条件にロイにも協力してもらうことができたんだけど…まさか部屋を出るなんて思いもつかなかったよ。ナーシィ、怖い思いさせてごめん。傷つけてごめん。」
謝罪を含めたことの顛末を話し終えたサーシスは、少し疲れ切ったような顔をしていた。
もしかしたら、いなくなった私を探してくれてたりしたのかな。それだったら嬉しいな。
「うん、怖かったし、傷ついた…演技で良かったって心底思うよ。もう、しないでほしい。皆に信じて貰えなくて生きた心地がしなかった。私、もう一人では生きていけないよ…」
「あぁ、もちろん。この名に誓うよ。もうこのようなことはしない。」
その言葉を聞いてホッとした。そしたら、身体の力が抜けてきて、眠くなる。
「みんなが、ね…いなくなった、私を、探してくれてたら…うれし、な…てお、も…」
意識が遠のくのを感じる。ロイの温かい腕の中は気持ちがよくて好きだなぁ。
「あぁ、探した。死に物狂いで探した。ほんと、戻ってきてくれてありがとう。」
大好きな優しい声とともに、おでこに柔らかい感触を感じたのを最後に私の意識は闇へと落ちた。
「お休み。今は何も考えなくていい。」
目が覚めると王城の一室だった。右手に温かみを感じて見てみるとロイがベッドに突っ伏して寝ていた。
「フフ、ずっといてくれたのかな。って、そんな訳ないか。」
「あぁ、ずっといた。一緒にいたかったから。」
「お、起きて!?」
「今起きたんだ。気分悪いとかないか?いきなり倒れて驚いた。無理させてたんだな。」
下から覗き込む心配そうな目とあう。頬に手が添えられて、思わず手に擦り付けてしまう。
「ん、大丈夫。ありがとう、傍にいてくれて。えへへ」
久しぶりの甘いロイにちょっと照れくさくなる。
私が寝ている間にハルトが診察をしてくれたらしい。疲労や精神的なものだろうって。
「ところで、ステファニア令嬢の件はどうなったの?」
「あぁ、3日後のパーティーの日に決着を付けるらしい。侯爵家を含めた公開処刑をするって言ってたな。その時のサーシスの護衛はもちろん俺とナーシィだ。ローブを深く被って参加という指示が出た。」
「分かった。」
「でもその前に…俺にもナーシィ充電させてくれ。」
ロイはそう言うと、ベッドにあがり私を後ろから抱きしめた。
「はぁ、俺ナーシィが傷ついてる姿を見て心臓が痛くて…なんで何よりも大切にしたい人をこんな目に合わせてるんだろうって分からなくなって、ナーシィがいなくなって後悔した。俺はこんなにも弱い…でも、もう何があっても離さないから…だから、俺のそばにいて。」
ロイは普段口ベタだ、甘々な時はサラサラ言葉が出てきてたけど、基本はそこまで話すタイプじゃなかった。だから、今必死に言葉で伝えようとしてくれているのを感じて無性に愛おしく感じる。
「うん、ずっといるよ。嫌だって言っても離してあげられそうにないや。フフ、私どんなロイでも好きだよ?だからね、一緒に幸せになろうね。」
肩にうずめているロイの頭を撫でながら言うと、腕も力を強めてロイは
「うん、絶対に。」
そう一言だけ返した。
その後は何も話さず、沈黙が続いた。
でも、苦ではなく心地いい沈黙。今は会話なんていらないのかもしれない。ただただ、お互いがお互いを思う幸せな時間…
0
あなたにおすすめの小説
家出を決行した結果
棗
恋愛
フィービーの婚約者ミゲルには大切な幼馴染がいる。病弱な幼馴染をいつも優先するミゲルや母が亡くなって以降溝が出来てしまった父と兄との関係にフィービーは疲れていた。
デートの約束をしてもいつも直前になって幼馴染を理由にキャンセルされ、幼馴染にしか感情を見せないミゲルを、フィービーを見ようとしない父や兄を捨てる決心をしたフィービーは侍女や執事の手を借りて家出を決行した。
自分を誰も知らない遠い場所へ行ったフィービーは、新しい人生の幕開けに期待に胸を躍らせた。
※なろうさんにも公開しています。
【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!
ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。
※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。
枯れ専令嬢、喜び勇んで老紳士に後妻として嫁いだら、待っていたのは二十歳の青年でした。なんでだ~⁉
狭山ひびき
恋愛
ある日、イアナ・アントネッラは父親に言われた。
「来月、フェルナンド・ステファーニ公爵に嫁いでもらう」と。
フェルナンド・ステファーニ公爵は御年六十二歳。息子が一人いるが三十年ほど前に妻を亡くしてからは独り身だ。
対してイアナは二十歳。さすがに年齢が離れすぎているが、父はもっともらしい顔で続けた。
「ジョルジアナが慰謝料を請求された。ステファーニ公爵に嫁げば支度金としてまとまった金が入る。これは当主である私の決定だ」
聞けば、妹のジョルジアナは既婚者と不倫して相手の妻から巨額の慰謝料を請求されたらしい。
「お前のような年頃の娘らしくない人間にはちょうどいい縁談だろう。向こうはどうやらステファーニ公爵の介護要員が欲しいようだからな。お前にはぴったりだ」
そう言って父はステファーニ公爵の肖像画を差し出した。この縁談は公爵自身ではなく息子が持ちかけてきたものらしい。
イオナはその肖像画を見た瞬間、ぴしゃーんと雷に打たれたような衝撃を受けた。
ロマンスグレーの老紳士。なんて素敵なのかしら‼
そう、前世で六十歳まで生きたイオナにとって、若い男は眼中にない。イオナは枯れ専なのだ!
イオナは傷つくと思っていた両親たちの思惑とは裏腹に、喜び勇んでステファーニ公爵家に向かった。
しかし……。
「え? ロマンスグレーの紳士はどこ⁉」
そこでイオナを待ち受けていたのは、どこからどう見ても二十歳くらいにしか見えない年若い紳士だったのだ。
【完結】二度目の子育て~我が子を可愛がったら溺愛されました
三園 七詩
恋愛
私は一人娘の優里亜の母親だった。
優里亜は幼い頃から体が弱く病院でほとんどの時間を過ごしていた。
優里亜は本が好きでよく私にも本の話をしてくれた。
そんな優里亜の病状が悪化して幼くして亡くなってしまう。
絶望に打ちひしがれている時事件に巻き込まれ私も命を落とした。
そして気がつくと娘の優里亜が大好きだった本の世界に入り込んでいた。
美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ
さら
恋愛
会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。
ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。
けれど、測定された“能力値”は最低。
「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。
そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。
優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。
彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。
人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。
やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。
不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。
ある、王国の物語。『白銀の騎士と王女 』
うさぎくま
恋愛
白銀の騎士と言われている神がかった美貌の騎士アレン・メルタージュとボルタージュ王国王女エルティーナの純愛物語。
今世そして来世にまでまたぐ、「魂」が巡る二人の物語…。
美貌の騎士からの惜しみない愛を感じてください。
【完結】モブのメイドが腹黒公爵様に捕まりました
ベル
恋愛
皆さまお久しぶりです。メイドAです。
名前をつけられもしなかった私が主人公になるなんて誰が思ったでしょうか。
ええ。私は今非常に困惑しております。
私はザーグ公爵家に仕えるメイド。そして奥様のソフィア様のもと、楽しく時に生温かい微笑みを浮かべながら日々仕事に励んでおり、平和な生活を送らせていただいておりました。
...あの腹黒が現れるまでは。
『無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない』のサイドストーリーです。
個人的に好きだった二人を今回は主役にしてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる