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第3章
選別⑵
しおりを挟む「お疲れ様、さすがだね。惚れ惚れする魔法だね。」
「団長、ありがとうございます。楽しんでいただけたようで良かったです。」
「あぁ、惚れ直したよ。」
「そりゃもちろん、俺のナーシィなので当然ですよ。」
いきなり後ろへ引かれて倒れると思った時、ぼふっと鍛えられた胸板と腕に包まれる。
やっぱりこの腕の中は安心するな。そう思って彼の腕にギュッとしがみついて頬をスリスリする。
「っ!ナーシィ…」
その言葉と同時に腕の力が強くなる。
「おいおい、見せつけてくれるじゃん。そういう彼氏さんは大丈夫なわけ?」
目の前の光景に不満げな団長が不満を隠すことなく前面に出してロイを煽る。
「フッ、当り前じゃないですか。負けませんよ、ナーシィ以外には。」
その挑発を鼻で笑い飛ばしたロイは、名残惜しそうに私から離れてシールド内へ足を運ぶ。
ロイが強いことは私が一番知っているつもりだけど、やっぱり心配だ。シールドが張っているのは分かっているけど100%安全なことなんてない。騎士同士は真剣で行うのだから。
「始め!」
ダンティア団長の掛け声でロイと対戦相手が走り出す。一気に距離を詰めた二人はそのまま打ち合う。ロイが格上なのが見て取れる。
「クソっ!なんで当たんないんだよ!!」
自分の剣技がいなされてばかりでイライラボルテージが上がりつつある相手とは反対に冷静なロイは、全てを受け流している。
「それはお前より俺が強いからに決まっているだろう。」
正論だけど、何言ってんだ?みたいなノリで言われたらめちゃくちゃ腹立つやつ!
「おっまえぇ!!」
ほらー!相手滅茶苦茶キレてるよ!頭脳戦とかじゃなくて素でやってる所がロイなんだよね~。
そこからは呆気なくロイの剣先が相手の心臓を一突き…潔い通り越して恐怖を与えた瞬間だった。
「ロイお疲れ様!かっこよかった!」
シールドから出てきたロイに勢いよく飛びつくと難なく受け止めてくれる。
「フフ、惚れ直したか?」
色気全開でそう問われると壊れた人形のように頷くことしかできない。ズルい。
「ほんとお前らは、ナーシィがいるからか表立って目立ってはいないがお前も中々規格外だよな。」
ダンティア団長がロイの肩をポンッと叩きながら言う。
確かに今の模擬戦を見ていると分かる。相手の騎士もけして弱い相手ではなかったはず。そもそも騎士団に入れるぐらいだから弱い訳がない。騎士団は騎士を目指す者達の狭き門と言われている。つまりは優秀な者のみが入ることを許されているわけで……それを赤子の手を捻る様にいなしてしまうロイは団長の言う通り規格外なのだろう。
「そもそも、この模擬戦で何を見て決めるんだ?勝っても行けないかもしれないならする意味あるのか?」
いつもは言われない規格外と言う言葉に居心地悪そうにしているロイが呟く。
「確かに、何を基準しているかは分かりませんがわざわざ業務の時間を割いてまで行う理由が測りかねます。」
それに同意するように私も話す。
私達の疑問にニヤリとした団長たちとサーシスは何も言わずにその場を後にした。
何を考えているのか分からず、ロイと見つめ合って首を傾げることしかできなかった。
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