悪役令嬢に転生したにしては、腕っぷしが強すぎます

雨谷雁

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 先ほど夢のなかで出会った少女の言葉を回想してみる。

 ーー私にした仕打ち、そっくりそのまんま返してやるから。覚悟してなさい!

 あれってそういうことだったのか。これは結構大変なことになっちゃったかもしれない。

「お、お嬢様、破片が飛び散っておりますので私が……」

「だめだめ素手で触ったらあぶない新聞紙とかないの?」

 長めにしゃべってみると確かにあの声だ。やややる気がなさそうなところは本家と違っているが。

 ということはこの子は……なんだっけなあ名前。

「なんで冷静なんですかお嬢様! 私の指はどうなってもいいので破片を集めさせてください!」

「ああ……じゃあしゃあなしね」

 そうそう、その尽くしてる感じ。メイドにしては不器用な少女で、焼かれるセラフィナ見てわんわん泣いてたっけ。最後は丸焦げの体抱きしめて崩れ落ちたんだよなあ。

 なんだかありきたりな名前にした気がする……あ、

「エマだ!」

 つい口が滑ったが彼女は呼ばれるなりこちらを向いてくれた。間違ってなかったみたいでよかった。ちょっと違和感があるのは、おかしなものでも見るような視線を向けてくることだろうか。

「お嬢様……?」

 どうしてか茫然自失としたその瞳からは、何故か涙が一筋流れ落ちた。少し骨ばった指はガラスに切れて血液が垂れている。

「あの、指……」

「お嬢様ああ!!」

 状況のまだ理解できないうちに、彼女は私に覆いかぶさるように飛び込んできた。

「お嬢様が私の名前を呼んでくださるなんて……何年ぶりだか知れません!!」

 ガッチリ抱きしめてくる細い腕すら紅潮し、歓喜をまとった身体は軽かったが温かい。

 指の血が付着するのを嫌った私は軽くエマの体を引き剥がそうとした。

 間違えて投げ飛ばしてしまった。
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