悪役令嬢に転生したにしては、腕っぷしが強すぎます

雨谷雁

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 体中の感覚が一気に、ブワッと戻ってきた。

 目を覚ました、と思った右手は何かをへし折っていた。握りしめているのはベッドの柵の一部だ。

「ありゃりゃ派手にやっちゃったなあ」

 頭をぶつけた記憶はあるが、病院のベッドにしてはややきらびやかすぎるかもしれない。というか、そもそも服が豪華すぎる。

「お、お嬢様……?」

 お嬢様だなんてどうかしているのか。病院にそんなやついるわけないだろう。とりあえず声のしたほうを振り返ってみる。

「ヒィッ!?」

「え、何」

「あ、おぉおお嬢様、右手をお下げください危ないです危ない」

 怯えた表情は私から目を逸らして腰を抜かしていた。もしかしたらこの娘には恐怖の対象として見られているかもしれない。

 おっと、つい折れた柵を銃口のように突きつける構えになっていた。

「ああごめんごめん」

 それにしても可憐な女の子だ。看護師にしてはメイド服すぎるし、なんなら年が若すぎるような。やっぱり病院じゃないな。

「そ、その、ご機嫌でも損ねられているのであればぜひわたくしがなんとかいたしますので」

「あいやいや全然そんなんじゃないよ」

「ああ……そうですか。すみません。……手鏡はよろしいですか?」

「手鏡?」

「ああいや、いつもは一番にお求めになるので」

 いつもは、というのはよくわからない。というかいろいろとよくわからない。

「それならもらおうかな」

 気絶の衝撃で変な顔に変わってないか気になったのでもらっておくことにした。

「こちらどうぞ」

 渡された手鏡らしきものは、今どきの女子高生でもしないだろってくらいにバチバチの装飾が紫を主体になされていた。まあ、それしかないなら仕方がないか。

 かざしてみた鏡面に反射する姿を視認するやいなや、私は手鏡を破壊した。

「お嬢様あああ!!」

 映ったのは見覚えのある、いや、ついさっき見た顔。セラフィナ・アルトリアのものに違いなかった。
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