5 / 42
流星群⑷
しおりを挟む
中3の夏休みに、家族3人でキャンプに行った。颯の成績は志望校にギリギリで夏休みでも毎日塾通いだった。そんな時に父さんが、気分転換にキャンプに行こうと誘ってきたんだ。余裕がないと断ったけど、今詰めすぎても上手くいかないと言われて半ば強引に連れていかれた。キャンプ場の夜は早く、いつもよりかなり早く寝てしまったので、12時過ぎに目が覚めてしまってテントを出ると父さんが夜空を見上げていた。
「父さん?何してるの?」
「あぁ……颯。トイレか?」
「あ、うん……目、覚めちゃって……」
「空、見てみ。星凄いから」
見上げると宝石を散りばめたような空が広がった。こんな星空はみ見たことがなく、引き込まれるようだ。その時スーッと1つの星が流れる。
「あ、流れ星……すごっ……初めて見た……あっ、また……」
続けてもう1つ目の前で流れる。こんな短時間に2回も……凄い。
「おぉ……流星群かな」
「流星群?」
「流れ星の群れみたいな」
それから、2人で1時間ほど空を見上げていたから、次の日は欠伸が止まらなかった。母さんに眠れなかったのかと聞かれて、流星群を見ていたと言ったら、なんで起こしてくれなかったのと拗ねられた。だから、今度は3人で見ようって言ったんだ。だけど、高校では部活に忙しくしていたし、家族と出歩くこと自体しなくなっていた。この夏休みも誘われていたけど、何だかんだ理由をつけて断っていた。
「それそろ、時間かな……郁島くん、ごめん。今回はここまでかな。ライト付けてくれる?……郁島くん?」
湖城が膝の上に置いていた懐中電灯を取ってスイッチを入れる。ボワっと辺りが明るくなって、現実に引き戻される。
「郁島くん?……何か思い出しちゃった?」
「えっ?」
ポケットティッシュを手渡される。あれ……泣いてる?
「うっ……うっ……うっ……」
「郁島くん、前にも流星群見たことあった?涙が出るってことは思いが溢れ出してるってことなんだよ。そうい時は、ちゃんと言葉にして吐き出した方がいいんだよ」
「父さんと母さんと……また見に行こうって……だけど……断ってた。今、行かなくても……いいと思ってたし……でも……もう……」
もう、その約束は一生果たせない。そう思うと今までモヤがかかっていた、父さんも母さんも、もういないんだという現実が突き刺さる。小さくまるまるように、膝に額を擦り付ける。その時、頭を包まれ、最後の何とか堰き止めていた思いが一気に溢れ出した。1度流れた涙は止めることが出来ずに、小さい子どものように声をあげてしまった。その間も湖城は何も言わずに抱きしめ続けていた。
「父さん?何してるの?」
「あぁ……颯。トイレか?」
「あ、うん……目、覚めちゃって……」
「空、見てみ。星凄いから」
見上げると宝石を散りばめたような空が広がった。こんな星空はみ見たことがなく、引き込まれるようだ。その時スーッと1つの星が流れる。
「あ、流れ星……すごっ……初めて見た……あっ、また……」
続けてもう1つ目の前で流れる。こんな短時間に2回も……凄い。
「おぉ……流星群かな」
「流星群?」
「流れ星の群れみたいな」
それから、2人で1時間ほど空を見上げていたから、次の日は欠伸が止まらなかった。母さんに眠れなかったのかと聞かれて、流星群を見ていたと言ったら、なんで起こしてくれなかったのと拗ねられた。だから、今度は3人で見ようって言ったんだ。だけど、高校では部活に忙しくしていたし、家族と出歩くこと自体しなくなっていた。この夏休みも誘われていたけど、何だかんだ理由をつけて断っていた。
「それそろ、時間かな……郁島くん、ごめん。今回はここまでかな。ライト付けてくれる?……郁島くん?」
湖城が膝の上に置いていた懐中電灯を取ってスイッチを入れる。ボワっと辺りが明るくなって、現実に引き戻される。
「郁島くん?……何か思い出しちゃった?」
「えっ?」
ポケットティッシュを手渡される。あれ……泣いてる?
「うっ……うっ……うっ……」
「郁島くん、前にも流星群見たことあった?涙が出るってことは思いが溢れ出してるってことなんだよ。そうい時は、ちゃんと言葉にして吐き出した方がいいんだよ」
「父さんと母さんと……また見に行こうって……だけど……断ってた。今、行かなくても……いいと思ってたし……でも……もう……」
もう、その約束は一生果たせない。そう思うと今までモヤがかかっていた、父さんも母さんも、もういないんだという現実が突き刺さる。小さくまるまるように、膝に額を擦り付ける。その時、頭を包まれ、最後の何とか堰き止めていた思いが一気に溢れ出した。1度流れた涙は止めることが出来ずに、小さい子どものように声をあげてしまった。その間も湖城は何も言わずに抱きしめ続けていた。
4
あなたにおすすめの小説
月弥総合病院
僕君☾☾
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
ふたなり治験棟
ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。
男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
悪夢の先に
紫月ゆえ
BL
人に頼ることを知らない大学生(受)が体調不良に陥ってしまう。そんな彼に手を差し伸べる恋人(攻)にも、悪夢を見たことで拒絶をしてしまうが…。
※体調不良表現あり。嘔吐表現あるので苦手な方はご注意ください。
『孤毒の解毒薬』の続編です!
西条雪(受):ぼっち学生。人と関わることに抵抗を抱いている。無自覚だが、容姿はかなり整っている。
白銀奏斗(攻):勉学、容姿、人望を兼ね備えた人気者。柔らかく穏やかな雰囲気をまとう。
こども病院の日常
moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。
18歳以下の子供が通う病院、
診療科はたくさんあります。
内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc…
ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。
恋愛要素などは一切ありません。
密着病院24時!的な感じです。
人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。
※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。
歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。
ある少年の体調不良について
雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。
BLもしくはブロマンス小説。
体調不良描写があります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる