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落ち着かない気持ち⑵
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「颯くん、談話室付き合って~」昼休憩であろう湖城が病室にやって来て、颯に声をかける。読んでいた文庫本をサイドボードに置いて顔を上げると、まだ行くとも行ってないのに、もう湖城は車椅子の準備を始めている。
「僕と一緒にいたら、湖城さんの休憩にならないんじゃないですか?」
「えーそんなことないよー。俺、颯くんと話しているの楽しくて、好きだよ」
ドキッ……
この間から暴走している心臓が1度大きく飛び跳ねる。
「ねっ。その後、歩行練習にも付き合うからさ」
「それなら……」
湖城の休憩に付き合うのは、歩行訓練に釣られるまでもなく、嫌なことではない。むしろ颯にとっても楽しい時間だった。だから、素直に誘いに乗ればいいのに、うまくそれが出来ない。
この間から自分の感情がよくわからない。こんなのまるで中学生の片思いのようだ。意味がわからない。
リハビリの時間以外の歩行練習は、廊下の手すりにつかまりながら、病棟内を一回りする。手すりがあると、ゆっくりどけど、だいぶ安定して歩けるようになってきた。
「おぉ。だいぶ歩けるようになったね」
湖城の声がくすぐったくて、もっと喜ばせたくて、調子に乗った。
病室の扉の前は、2mほど手すりがない。いつもなら、Uターンして戻るけどゆっくり手を離して歩みを進める。
湖城が駆け寄ってきたけど、「大丈夫」とまっすぐ前を向いたまま答える。あと1歩。その1歩が待ち遠しくて、気が急ってしまう。手すりに手を伸ばしたところで、手は空を掴み、ゆっくり視界がズレていく。
あ、やばい……転ぶ……
前方にいた看護師さんも、面会に来ていた家族を見送る患者さんも颯の目にはしっかり写っている。その光景を見ながら、こういう時ってスローモーションなんだなぁと、そんなことをのんびり考えている自分がいた。
ドサッと大きな衝撃に襲われるが、不思議と痛くない。
「……った……颯くん、大丈夫?」
湖城が颯を横から抱きかかえるように座り込んでいる。すぐ横に湖城の顔があって、ドキンと先ほどと変わらないような衝撃が胸に響く。何とか頷くだけで精一杯だった。
ドキドキドキドキ……
今はトイレには、ついては来てもらってはいるが、抱きかかえて立たせてもらうことは無くなった。こんなに湖城が近いのは久しぶりだ。
「あー、びっくりしたー。良かった、間に合って。一応、先生には見てもらおうか。今は大丈夫でも、後から痛みが出てくる場合もあるから」
ドキドキドキドキ……
心臓がうるさい……顔が熱い……
「心臓、超バクバクいってる」
隠していた秘密がバレたかのように、おそるおそる湖城を覗き見ると湖城のヘヘッと笑う顔が見えた。
「あははっ……超焦った~俺の心臓も超バクバクいってる」
この心臓の鼓動は、転びそうになったからではない。こんなに近くに湖城がいるからだ。湖城に抱きしめられているからだ。
最近ずっと、湖城の声に姿にドキドキして、だけど離せなくて目で追って。自分の気持ちがよくわからないと思っていたけど違う。認めたくなかったのだ。だって、同性なのにこんなこと思うなんて。今までこんなことなかったし、こんな感情はおかしいと思って打ち消しいていた。だけどもう、認めるしかない。こんなに心臓がうるさくなるのも、女性の患者さんと仲良く話しをしている湖城の姿に胸が苦しくなるのも、抱きしめられて顔が熱くて仕方ないのも湖城が好きだからだ。
もう、気づかないフリはできない。湖城が好きだ。
「僕と一緒にいたら、湖城さんの休憩にならないんじゃないですか?」
「えーそんなことないよー。俺、颯くんと話しているの楽しくて、好きだよ」
ドキッ……
この間から暴走している心臓が1度大きく飛び跳ねる。
「ねっ。その後、歩行練習にも付き合うからさ」
「それなら……」
湖城の休憩に付き合うのは、歩行訓練に釣られるまでもなく、嫌なことではない。むしろ颯にとっても楽しい時間だった。だから、素直に誘いに乗ればいいのに、うまくそれが出来ない。
この間から自分の感情がよくわからない。こんなのまるで中学生の片思いのようだ。意味がわからない。
リハビリの時間以外の歩行練習は、廊下の手すりにつかまりながら、病棟内を一回りする。手すりがあると、ゆっくりどけど、だいぶ安定して歩けるようになってきた。
「おぉ。だいぶ歩けるようになったね」
湖城の声がくすぐったくて、もっと喜ばせたくて、調子に乗った。
病室の扉の前は、2mほど手すりがない。いつもなら、Uターンして戻るけどゆっくり手を離して歩みを進める。
湖城が駆け寄ってきたけど、「大丈夫」とまっすぐ前を向いたまま答える。あと1歩。その1歩が待ち遠しくて、気が急ってしまう。手すりに手を伸ばしたところで、手は空を掴み、ゆっくり視界がズレていく。
あ、やばい……転ぶ……
前方にいた看護師さんも、面会に来ていた家族を見送る患者さんも颯の目にはしっかり写っている。その光景を見ながら、こういう時ってスローモーションなんだなぁと、そんなことをのんびり考えている自分がいた。
ドサッと大きな衝撃に襲われるが、不思議と痛くない。
「……った……颯くん、大丈夫?」
湖城が颯を横から抱きかかえるように座り込んでいる。すぐ横に湖城の顔があって、ドキンと先ほどと変わらないような衝撃が胸に響く。何とか頷くだけで精一杯だった。
ドキドキドキドキ……
今はトイレには、ついては来てもらってはいるが、抱きかかえて立たせてもらうことは無くなった。こんなに湖城が近いのは久しぶりだ。
「あー、びっくりしたー。良かった、間に合って。一応、先生には見てもらおうか。今は大丈夫でも、後から痛みが出てくる場合もあるから」
ドキドキドキドキ……
心臓がうるさい……顔が熱い……
「心臓、超バクバクいってる」
隠していた秘密がバレたかのように、おそるおそる湖城を覗き見ると湖城のヘヘッと笑う顔が見えた。
「あははっ……超焦った~俺の心臓も超バクバクいってる」
この心臓の鼓動は、転びそうになったからではない。こんなに近くに湖城がいるからだ。湖城に抱きしめられているからだ。
最近ずっと、湖城の声に姿にドキドキして、だけど離せなくて目で追って。自分の気持ちがよくわからないと思っていたけど違う。認めたくなかったのだ。だって、同性なのにこんなこと思うなんて。今までこんなことなかったし、こんな感情はおかしいと思って打ち消しいていた。だけどもう、認めるしかない。こんなに心臓がうるさくなるのも、女性の患者さんと仲良く話しをしている湖城の姿に胸が苦しくなるのも、抱きしめられて顔が熱くて仕方ないのも湖城が好きだからだ。
もう、気づかないフリはできない。湖城が好きだ。
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