39 / 42
落ち着かない気持ち2(4)
しおりを挟む
今朝、スマホを見ると久しぶりに颯からメッセージが入っていてドキリとした。メッセージには、夜勤の見回りの時に少し話がしたいとあった。自分の気持ちを自覚してから、変に颯を意識してしまい、メッセージを送ることにも日和っているうちに、間が空いてしまいドンドン送れなくなっていた。そして颯からもメッセージがくることがなかったから、驚きと同時に胸の高鳴りが鳴り止まず、日中ずっとソワソワした状態だった。夜勤前で勤務ではなく本当に良かったと思った。仕事では毎日会って話してはいたけど、改まってゆっくり話すのは久しぶりで、まだ気持ちは落ち着かないところもあったけど、吉志と話してから今まで通りでいいのかもしれないという思いにたどり着き、湖城自身以前のようにゆっくり話がしたいと思っていたところだった。
見回り中だとあまり時間が取れないので、少し早めに入った休憩時間にナースステーションを出て颯の病室へ向かう。颯のベットがあるカーテンをそっとめくると、自分の足元を照らしていたライトの明かりが、ボワっと颯の顔を浮き上がらせる。音楽でも聴きながら寝てしまったようで、イヤホンをつけたまま寝息を立てていた。本来なら寝ていなければいけない真夜中の時間帯であり、起こさずに立ち去ろうと思ったけど、寝ていることに欲が出てついつい、前髪からおでこに触れる。
「んっ……」
息を漏らし、顔をしかめたかと思うとゆっくりと瞼が開いていき、咄嗟に手を引っ込める。
「ごめっ……起こしちゃった?」
「あ、や、大丈夫。僕がお願いしてたのに、寝ちゃっててごめんなさい」
「寝てなきゃいけない時間だからね」
そんな軽口を言いながら、以前のように話せることを嬉しく思い、こんな時間に患者を起こしてしまう状況なのに浮かれてしまう。わざわざ呼び出すということは、何か話したいことがあるのだろうとは思っていたけど、颯の口からは全く予想外の言葉が発せられた。
“嫌われちゃったかな”
颯を好きな気持ちで溢れそうなのに、大切にしたいって思ってるのに、そんな顔をさせたくないのに……
吉志に釘を刺されたのは、つい先日だったと思う。だけど、涙する颯を見て、考えるよりも先に体が動いていた。
「嫌いになんかなってない。呆れてもいないから。ごめん、不安にさせて。俺が日和ってたから……」
胸に抱いた颯の嗚咽が響く。
「俺、颯くんが好きだよ。俺にとって颯くんは、特別な存在だって気づいたんだ。気づいたら急に今まで、どうやって接してたか、わかんなくなっちゃって……ごめんね。俺がヘタレなせいで、颯くんに苦しい思いをさせちゃってたんだね……」
「ちがっ……僕も……湖城さんが好きだから、だから嫌われたくなくて……でも、いつも迷惑ばっかりかけて、情けない姿ばっかりになって……だから、湖城さんのせいなんかじゃなくて……」
顔を上げた颯と目が合う。まだ、目に涙を溜めながら、少し不安げにしながらも目を逸らすことなく見つめてくる瞳に吸い込まれそうになる。この間、吉志が言っていた、性別は関係なく颯だから好きなんだという気持ちが身にしみて入り込んできて、気づいたら颯の唇に触れていた。
見回り中だとあまり時間が取れないので、少し早めに入った休憩時間にナースステーションを出て颯の病室へ向かう。颯のベットがあるカーテンをそっとめくると、自分の足元を照らしていたライトの明かりが、ボワっと颯の顔を浮き上がらせる。音楽でも聴きながら寝てしまったようで、イヤホンをつけたまま寝息を立てていた。本来なら寝ていなければいけない真夜中の時間帯であり、起こさずに立ち去ろうと思ったけど、寝ていることに欲が出てついつい、前髪からおでこに触れる。
「んっ……」
息を漏らし、顔をしかめたかと思うとゆっくりと瞼が開いていき、咄嗟に手を引っ込める。
「ごめっ……起こしちゃった?」
「あ、や、大丈夫。僕がお願いしてたのに、寝ちゃっててごめんなさい」
「寝てなきゃいけない時間だからね」
そんな軽口を言いながら、以前のように話せることを嬉しく思い、こんな時間に患者を起こしてしまう状況なのに浮かれてしまう。わざわざ呼び出すということは、何か話したいことがあるのだろうとは思っていたけど、颯の口からは全く予想外の言葉が発せられた。
“嫌われちゃったかな”
颯を好きな気持ちで溢れそうなのに、大切にしたいって思ってるのに、そんな顔をさせたくないのに……
吉志に釘を刺されたのは、つい先日だったと思う。だけど、涙する颯を見て、考えるよりも先に体が動いていた。
「嫌いになんかなってない。呆れてもいないから。ごめん、不安にさせて。俺が日和ってたから……」
胸に抱いた颯の嗚咽が響く。
「俺、颯くんが好きだよ。俺にとって颯くんは、特別な存在だって気づいたんだ。気づいたら急に今まで、どうやって接してたか、わかんなくなっちゃって……ごめんね。俺がヘタレなせいで、颯くんに苦しい思いをさせちゃってたんだね……」
「ちがっ……僕も……湖城さんが好きだから、だから嫌われたくなくて……でも、いつも迷惑ばっかりかけて、情けない姿ばっかりになって……だから、湖城さんのせいなんかじゃなくて……」
顔を上げた颯と目が合う。まだ、目に涙を溜めながら、少し不安げにしながらも目を逸らすことなく見つめてくる瞳に吸い込まれそうになる。この間、吉志が言っていた、性別は関係なく颯だから好きなんだという気持ちが身にしみて入り込んできて、気づいたら颯の唇に触れていた。
4
あなたにおすすめの小説
月弥総合病院
僕君☾☾
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
悪夢の先に
紫月ゆえ
BL
人に頼ることを知らない大学生(受)が体調不良に陥ってしまう。そんな彼に手を差し伸べる恋人(攻)にも、悪夢を見たことで拒絶をしてしまうが…。
※体調不良表現あり。嘔吐表現あるので苦手な方はご注意ください。
『孤毒の解毒薬』の続編です!
西条雪(受):ぼっち学生。人と関わることに抵抗を抱いている。無自覚だが、容姿はかなり整っている。
白銀奏斗(攻):勉学、容姿、人望を兼ね備えた人気者。柔らかく穏やかな雰囲気をまとう。
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
こども病院の日常
moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。
18歳以下の子供が通う病院、
診療科はたくさんあります。
内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc…
ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。
恋愛要素などは一切ありません。
密着病院24時!的な感じです。
人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。
※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。
歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。
ふたなり治験棟
ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。
男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!
ある少年の体調不良について
雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。
BLもしくはブロマンス小説。
体調不良描写があります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる