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プレゼント⑶
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デパートの催事場の一角に、映画のセル画や本の表紙絵、扉絵で使われた原画が展示されている。2ヶ月ほど前から公開されている、精霊シリーズの展示会だ。
佐藤さんから、誘われて一緒に来ていた。昨日、先生にその事を伝えると一瞬、苦虫を潰したような顔をしたけど「オレの愚痴の言い合いは勘弁してよ」と苦笑して、頭の上に手を置かれた。
「お休みの日に付き合ってもらって、ありがとうございます」
「ボクも気になってたし、それは全然構わないんだけど、ボクと二人で出かけるの都築さんはいいのかな?」
都築さんの彼女である佐藤さんと2人で出かけるのは、やはり気が引ける。もちろん、先生に対してもちょっと罪悪感……
「秋ちゃんは、全然気にしてないですよ。同級生の男子より真野だと安心して任せられるって。それに秋ちゃんは、誘っても全然興味なさそうなんですよ」
「ははっ……」
そういうことならと、少し気が楽になる。
「それに……私も休みの日に真野さんのこと独占してしまって、大丈夫……ですかね?」
「ん?うん。大丈夫だよ。今日出かけることも言ってあるし」
2人で展示会を堪能して、カフェで少し休む。佐藤さんは、この後都築さんと会う約束をしているようで、来るまで一緒に時間を潰すことにしたのだ。お昼間近であり、入ったカフェも店内はいっぱいになりつつあった。
「真野さんは、誕生日に何が欲しいですか?」
「へっ?」
急にこの間も聞いたタイムリーな質問に、変な声を出して、佐藤さんを見つめてしまう。
「あ、っと……説明が足りないですよね。ごめんなさい。秋ちゃんの誕生日がもうすぐで、何をあげたらいいか迷ってて。20代の男の人はどんなもの貰えると嬉しいのかなぁと」
「あぁ。都築さんも今月誕生日なんですね。ボクもなので、ビックリしちゃいました……そうだなぁ。好きな人から貰うものなら何でも嬉しいんじゃないかな」
そう言うと、ちょっと困った顔をして「そういう一般的な答えじゃなくて……秋ちゃん大人だし、子供っぽいもの渡したくないなって」と付け加えられる。
「うーん。都築さんに欲しいもの聞いちゃうとか?」
「だめですよー。聞くと子供扱いして何もいらないって言うか、すごく安いものになっちゃうんです」と口を膨らませながら答える。
「じゃあ、趣味のものとか、仕事で使えるような物がいいのかなぁ」
「趣味は……ゲームかな。休みの日はけっこうやってる。あとは、野球?今も草野球チームに入ってるし。仕事では、何がいいんだろう」
「まあ、王道といえば名刺入れとか財布とか、カバンとか……かな?」
これは、ボクが先生にプレゼントを聞かれた時に考えたものだった。だけど、なんかどれもピンとこなかったものだ。
「うーん。やっぱり、都築さんに聞いてみるのがいいかなぁ。直接聞かなくても、探りを入れてみるとか。ボクがそれとなく聞いてみようか」
「……本当は、私をプレゼントにしたいんだけど……」
「えっ?」
「え、あ、いや、なんでもないです。じゃあ、お願いします。」
「あ、うん……」
なんかそれ以上聞いちゃいけないような気がして突っ込めない。佐藤さんも話題を変えてきたのでそういうことなんだろう。そうこうしているうちに、都築さんがやって来てボクは席を立った。2人から一緒に昼ご飯を食べようと誘われたけど、そこは丁重にお断りする。これ以上、デートの邪魔をする訳にはいかない。
店を出る前に2人の席を振り返ると、仲良く話しているのをみると微笑ましく「ボクも先生のところに行こうかな……」なんて呟いてしまう。
佐藤さんから、誘われて一緒に来ていた。昨日、先生にその事を伝えると一瞬、苦虫を潰したような顔をしたけど「オレの愚痴の言い合いは勘弁してよ」と苦笑して、頭の上に手を置かれた。
「お休みの日に付き合ってもらって、ありがとうございます」
「ボクも気になってたし、それは全然構わないんだけど、ボクと二人で出かけるの都築さんはいいのかな?」
都築さんの彼女である佐藤さんと2人で出かけるのは、やはり気が引ける。もちろん、先生に対してもちょっと罪悪感……
「秋ちゃんは、全然気にしてないですよ。同級生の男子より真野だと安心して任せられるって。それに秋ちゃんは、誘っても全然興味なさそうなんですよ」
「ははっ……」
そういうことならと、少し気が楽になる。
「それに……私も休みの日に真野さんのこと独占してしまって、大丈夫……ですかね?」
「ん?うん。大丈夫だよ。今日出かけることも言ってあるし」
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「真野さんは、誕生日に何が欲しいですか?」
「へっ?」
急にこの間も聞いたタイムリーな質問に、変な声を出して、佐藤さんを見つめてしまう。
「あ、っと……説明が足りないですよね。ごめんなさい。秋ちゃんの誕生日がもうすぐで、何をあげたらいいか迷ってて。20代の男の人はどんなもの貰えると嬉しいのかなぁと」
「あぁ。都築さんも今月誕生日なんですね。ボクもなので、ビックリしちゃいました……そうだなぁ。好きな人から貰うものなら何でも嬉しいんじゃないかな」
そう言うと、ちょっと困った顔をして「そういう一般的な答えじゃなくて……秋ちゃん大人だし、子供っぽいもの渡したくないなって」と付け加えられる。
「うーん。都築さんに欲しいもの聞いちゃうとか?」
「だめですよー。聞くと子供扱いして何もいらないって言うか、すごく安いものになっちゃうんです」と口を膨らませながら答える。
「じゃあ、趣味のものとか、仕事で使えるような物がいいのかなぁ」
「趣味は……ゲームかな。休みの日はけっこうやってる。あとは、野球?今も草野球チームに入ってるし。仕事では、何がいいんだろう」
「まあ、王道といえば名刺入れとか財布とか、カバンとか……かな?」
これは、ボクが先生にプレゼントを聞かれた時に考えたものだった。だけど、なんかどれもピンとこなかったものだ。
「うーん。やっぱり、都築さんに聞いてみるのがいいかなぁ。直接聞かなくても、探りを入れてみるとか。ボクがそれとなく聞いてみようか」
「……本当は、私をプレゼントにしたいんだけど……」
「えっ?」
「え、あ、いや、なんでもないです。じゃあ、お願いします。」
「あ、うん……」
なんかそれ以上聞いちゃいけないような気がして突っ込めない。佐藤さんも話題を変えてきたのでそういうことなんだろう。そうこうしているうちに、都築さんがやって来てボクは席を立った。2人から一緒に昼ご飯を食べようと誘われたけど、そこは丁重にお断りする。これ以上、デートの邪魔をする訳にはいかない。
店を出る前に2人の席を振り返ると、仲良く話しているのをみると微笑ましく「ボクも先生のところに行こうかな……」なんて呟いてしまう。
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