忘れられない思い

yoyo

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これから⑷

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   今日1日ちゃんと仕事していたのか記憶がなかった。でも、外回りから戻ってきた都築さんに「今日はもう帰って休め」と言われ、定時よりも1時間も早く帰されてしまったから、全く仕事になっていなかったのだろう。今日、外回りの仕事が入っていなくて良かったと思う。
   職場を出ると先生の詳しいことが知りたくて、泰輔さんに電話をかけた。呼び出し音を聴きながら、もうお店かなと思うが、予想に反してそんなに待たずに繋がった。


「真野くん?今、電話大丈夫なの?」

「あ、はい。先生のこと詳しく知りたくて……でも、これからお店ですよね……」


   まんぷく屋は昼の部と夜の部に分かれていて、夜の部は17時から開店する。まんぷく屋は友花里さんと2人で切り盛りしてるから、開店する前から、仕込み等で忙しいはずだった。


「いや。今日は月1の平日定休日だから、大丈夫だよ。オレもまた、電話しようと思ってたんだ。仕事終わったら、お店来れる?」


   泰輔さんの誘いに二つ返事して、急いでまんぷく屋に向かった。向かっている間、自分が何を確認したいのかモヤモヤと身体中を渦巻いてた。
   まんぷく屋は定休日の札がかかっていたが、扉に鍵はかかっていなくて、いつも通り開けることができた。中に入ると厨房にはすでに泰輔さんがいた。


「お疲れ様。今日早かったんだね」

「あ、まぁ……」


   早く帰されたとは言いづらく、言葉を濁していると奥から友花里さんが出てきた。席に着くと友花里さんも向かい側に座り、泰輔さんはグラスを3つ持って、それぞれの前に置いて、友花里さんの隣に座る。


「これは……?」

「レモネード。あんまり、顔色良くないしコーヒーよりいいかなと思って。口当たりも良いし、サッパリするよ」


   一口飲むと程よい甘味と酸味が体に染み込んだ。ふーっと息を吐くと、早速本題を泰輔さんに投げかける。泰輔さんは、少し困った顔をしながらも、しっかりボクの方を見て先生やお義姉さんと話したことを話し始めた。


   先生は目を覚ました直後は一瞬、自分のことも曖昧で、免許証から身元が判明していた。携帯も壊れてたから病院側も誰にも連絡が取れない状態だったけど、荷物に研修で使用した資料があって、勤務している高校に連絡をしたらしい。
   お義姉さんが病院に着いた頃には、大方思い出していたようだけど、なぜ九州に居たかなど最近のことは曖昧なままだった。ボクのことも昔の高校時代のことは覚えているようだけど、再開して付き合ってからの記憶は全くないらしい。
   今、自分が2年生の担任をしていることも覚えていなく、ちょうど夏休み中だったこともあり、休みが明けるまでは今の病院を退院して地元のお義姉さんの家で過ごす予定であり、それまでの間になんとか記憶が戻ることを期待しているようだ。
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