家族のかたち

yoyo

文字の大きさ
3 / 50

台風の夜に⑴

しおりを挟む
 ボクがこの家に来て2週間が過ぎた。少しずつこの家には慣れてきて、どこの部屋に何があって......とか、何時にご飯を食べてお風呂に入るとか......わかってきた。

 そして広くんも幸兄ちゃんも、いつも優しいということも。




『台風10号は、今夜上陸するとみられ、雨風が強く...』TVのアナウンサーの声が聞こえる。


「幸、今日バイトなかったよな。悪いけど早めに勇のお迎えお願いできるかな」

「あぁ、そうだな。夕方から雨も降ってくるし。いいよ」

「勇、今日は父さんじゃなくオレが迎えにい行くからな」

「あ、はい」



 ボクは学校が終わったら学童保育という所で遊んだり、宿題をしながら迎えに来てくれるのを待っている。いつもは、広くんが仕事帰りに迎えにきてくれて、幸兄ちゃんが迎えに来てくれるのは初めてだ。









 宿題が終わったと同時に、迎えが来たと声をかけられ、急いで片付けて玄関に行くと制服姿の幸兄ちゃんがいた。


「待たせたな」


 全然そんなことなくて、いつもよりずっと、ずっと早い。急いで長靴を履いて、外に出ようとしたら幸兄ちゃんが声をかける。

「待った、待った。雨がひどくなってきたからな。そんなんじゃ、ずぶ濡れだ」
 
   ボクにカッパのフードかぶせ、首から下までびっちりボタンをしめた。

「よし、じゃあ帰ろうか」


 外に出るとけっこう雨風が強くて、ボクも傘を持っていたけど、全然させなかった。だけど幸兄ちゃんは、ボクの手を引いて傘をさして何事もないように、歩いていく。





「うわー。けっこう濡れちゃったな。勇は大丈夫か?」

「カッパ着てたので、大丈夫です」

「それなら良かった。オレはちょっとシャワー浴びてくるから、テレビでも見てて」


 幸兄ちゃんが行ってしまうと、広いリビングに1人だけになった。この家は少し古くて、玄関の引き戸も窓も強い風が吹くとガタガタ音を立てて立てる。


 ドキン、ドキン、ドキン......


 お母さんと一緒のときは、1人でお留守番もよくしてたし、1人で寝たこともあるけど、こんなに寂しく不安にはならなかった。
 今は、いつでも広くんか幸兄ちゃんがいて、1人になることはなかった。



 ガタガタガタ.....
 ドキン、ドキン、ドキン......


 勝手に目に涙が溜まってくる。
 あれ......ボクはもう赤ちゃんじゃないのに......1人でお留守番もできるいい子なのに......



「勇?どうした?」

 ボクはランドセルを背負ったまま、立ち尽くしていたらしい。ビクッとして、声の方を見ると頭をガシガシ拭いている幸兄ちゃんがいた。



 ガタガタガタ......
 また、ビクッ体が強張る。


「風、すげーな。まずは電気、電気......」

 パッと一気に部屋の中が明るくなり、いつも見慣れてるリビングにホッとする。その時、ガチャとリビングのドアが開いて、広くんが入ってきた。


「いやー。まいった、まいった。ビチョ濡れだわ」

「あ、父さん。タオル、タオル」

「あれ?勇、どうした?そんな顔して」


 広くんの顔を見て、涙が溢れるのを必死に我慢して腕で拭う。

「なんでもないです。おかえりなさい」

「ちょっとオレがシャワー入ってたからさ、その間、勇を1人にさせちゃったんだよね。風の音も凄かったし、不安にさせたのかも」



 タオルを受け取りながら「そっか」とボクの頭を優しく撫でる。

「父さんもびしょ濡れだから、お風呂入ってきたら?もうすぐ、お湯も溜まるよ」

「そうだな。そうするわ」

「勇、せっかくだから一緒に入ろう」

「えっ......」

「男同士、裸の付き合いだ」


 広くんは、そう言って強引に背中を押して風呂場までボクを誘導した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

笑って誤魔化してるうちに溜め込んでしまう人

こじらせた処女
BL
颯(はやて)(27)×榊(さかき)(24) おねしょが治らない榊の余裕が無くなっていく話。

投稿インセンティブで月額23万円を稼いだ方法。

克全
エッセイ・ノンフィクション
「カクヨム」にも投稿しています。

月弥総合病院

御月様(旧名 僕君☽☽‪︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

【完結】『続・聖パラダイス病院』(作品260123)

菊池昭仁
現代文学
『聖パラダイス病院』の続編です。こんな病院なら入院生活も悪くはありません。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

処理中です...