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お父さん⑴
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今日の教室には、たくさんのお母さん、お父さんが来ていた。5時間目の国語の時間は参観日だ。
いつもと違う雰囲気にクラスのみんなも落ち着かず、ソワソワしている。ボクも前を向いてなきゃと思うけど、何度もチラチラ後ろを向いてしまう。
昨日、広くんは少し遅くなるかもしれないけど、見に行くと言っていたんだ。
今日は、班のみんなで出し合った、野菜と果物の名前を発表することになっていた。次はボク達の班の発表だったけど、まだ広くんは来ていない。
広くん、行くって言ってたのに……
そう思ったとき、息を切らした男の人が入ってくる。お母さんが多い中、男の人は少し目立っていて、みんなが見ているようだった。
今来たのは広くんだ。いつもの広くんだったけど、教室で見ると何だかとっても照れ臭かった。
次の日、前の席の淳くんが、いつものように後ろを向いて話しかけてくる。
「昨日来てたのは、勇のお父さん?」
昨日、授業が終わった後、広くんと話していたのを見ていたようだ。
「ううん。違うよ」
「えーじゃあ、誰?」
そう聞かれても困ってしまい、少し口ごもる。
「えっと……広くん……」
「広くん?誰なの?」
「うんとー、幸兄ちゃんのお父さん……」
「えーでも、勇のお父さんじゃないんでしょ。へんなのー」
えっ……変なの?
「そんなことないよー。お母さんが再婚したんでしょ。うちのお母さんは、再婚して新しいお父さんが来たよ。勇くんもお母さんが再婚したんだよね」
隣の席の花音ちゃんが、話に入ってくる。花音ちゃんは、頭が良くて難しい言葉もよく知っている。
「サイコン?」
よくわからなくて、聞き返してしまう。
「もう一回、結婚するってこと」と花音ちゃんが説明してくれた。
「えっとー。お母さんは死んじゃったから、サイコンはしてない……」
そこにまた、淳くんが割り込んで入ってきた。
「じゃあ、広くんは知らないおじさんなのー?やっぱりへんなのー」
もう、花音ちゃんも何も言ってくれなくて、ボクも何も言えなくなってしまう。全然変じゃないのに、知らないおじさんじゃないのに……でも、何も言えなくて泣きたくなった。
その時、葉山先生が教室に入ってきて、みんな急いで前を向く。
ボクは、お父さんを知らない。物心ついた時から、ずっとお母さんしかいなかった。1度だけ、お母さんにお父さんのことを聞いたことがあったけど、「お母さんがいるからいいでしょ」と少し不機嫌になってしまったから、それ以上はもう何も聞けなかった。
広くんに初めて会った時、お父さんかと思ったけど、広くんは悲しそうな顔をして「違うんだ」と言った。広くんと一緒に暮らすようになって、広くんがお父さんだったらいいのに……と何度も思っていた。
広くんと幸兄ちゃんと一緒に暮らすのは、すごく楽しかったけど、淳くんに変って言われてから、お父さんでも何でもない広くんと一緒にいてもいいのかと不安になった。
ボクはこの家にいてもいいのだろうか……
そんなことを考えていたら、次の朝、布団を濡らした。せっかく、この間まで続いていたおねしょがなくなったと思っていたのに……
何度もおねしょをしちゃうボクは、お父さんでも何でもない広くんは、もう一緒に暮らしてもらえなくなっちゃうかもしれない。
「勇、またお母さんのこと考えてる?それとも、何か気になってることあるのかな?」
シャワーを出たボクに、広くんは声をかける。
「え?」
「勇は、心がモヤモヤして、落ち着かない時に失敗しちゃうから……」
広くんが心配そうに、ボクの顔を見てくる。でも、ボクはなんて言っていいかわからなくて、首を振るしかできなかった。
いつもと違う雰囲気にクラスのみんなも落ち着かず、ソワソワしている。ボクも前を向いてなきゃと思うけど、何度もチラチラ後ろを向いてしまう。
昨日、広くんは少し遅くなるかもしれないけど、見に行くと言っていたんだ。
今日は、班のみんなで出し合った、野菜と果物の名前を発表することになっていた。次はボク達の班の発表だったけど、まだ広くんは来ていない。
広くん、行くって言ってたのに……
そう思ったとき、息を切らした男の人が入ってくる。お母さんが多い中、男の人は少し目立っていて、みんなが見ているようだった。
今来たのは広くんだ。いつもの広くんだったけど、教室で見ると何だかとっても照れ臭かった。
次の日、前の席の淳くんが、いつものように後ろを向いて話しかけてくる。
「昨日来てたのは、勇のお父さん?」
昨日、授業が終わった後、広くんと話していたのを見ていたようだ。
「ううん。違うよ」
「えーじゃあ、誰?」
そう聞かれても困ってしまい、少し口ごもる。
「えっと……広くん……」
「広くん?誰なの?」
「うんとー、幸兄ちゃんのお父さん……」
「えーでも、勇のお父さんじゃないんでしょ。へんなのー」
えっ……変なの?
「そんなことないよー。お母さんが再婚したんでしょ。うちのお母さんは、再婚して新しいお父さんが来たよ。勇くんもお母さんが再婚したんだよね」
隣の席の花音ちゃんが、話に入ってくる。花音ちゃんは、頭が良くて難しい言葉もよく知っている。
「サイコン?」
よくわからなくて、聞き返してしまう。
「もう一回、結婚するってこと」と花音ちゃんが説明してくれた。
「えっとー。お母さんは死んじゃったから、サイコンはしてない……」
そこにまた、淳くんが割り込んで入ってきた。
「じゃあ、広くんは知らないおじさんなのー?やっぱりへんなのー」
もう、花音ちゃんも何も言ってくれなくて、ボクも何も言えなくなってしまう。全然変じゃないのに、知らないおじさんじゃないのに……でも、何も言えなくて泣きたくなった。
その時、葉山先生が教室に入ってきて、みんな急いで前を向く。
ボクは、お父さんを知らない。物心ついた時から、ずっとお母さんしかいなかった。1度だけ、お母さんにお父さんのことを聞いたことがあったけど、「お母さんがいるからいいでしょ」と少し不機嫌になってしまったから、それ以上はもう何も聞けなかった。
広くんに初めて会った時、お父さんかと思ったけど、広くんは悲しそうな顔をして「違うんだ」と言った。広くんと一緒に暮らすようになって、広くんがお父さんだったらいいのに……と何度も思っていた。
広くんと幸兄ちゃんと一緒に暮らすのは、すごく楽しかったけど、淳くんに変って言われてから、お父さんでも何でもない広くんと一緒にいてもいいのかと不安になった。
ボクはこの家にいてもいいのだろうか……
そんなことを考えていたら、次の朝、布団を濡らした。せっかく、この間まで続いていたおねしょがなくなったと思っていたのに……
何度もおねしょをしちゃうボクは、お父さんでも何でもない広くんは、もう一緒に暮らしてもらえなくなっちゃうかもしれない。
「勇、またお母さんのこと考えてる?それとも、何か気になってることあるのかな?」
シャワーを出たボクに、広くんは声をかける。
「え?」
「勇は、心がモヤモヤして、落ち着かない時に失敗しちゃうから……」
広くんが心配そうに、ボクの顔を見てくる。でも、ボクはなんて言っていいかわからなくて、首を振るしかできなかった。
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