婚約者の貴方が「結婚して下さい!」とプロポーズしているのは私の妹ですが、大丈夫ですか?

初瀬 叶

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第42話

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私が目を丸くしていると、

「エリン、君は自分の価値を知るべきだ」
とレナード様は私を見てしっかりと言った。

「私の……価値?」

「そうだ。俺は君が…、君のことが……す…」
急にレナード様がしどろもどろになってきた。私は首を傾げる。

「くっ……クソ。……可愛い……いや、まぁうん。とにかく、君は君だ。代わりはいない」

「代わりは、いない……」
私はレナード様の言葉を繰り返す。私で良いのだと言われた様で嬉しくなって、私は微笑んだ。

「……ありがとうございます。その言葉で少し自信がついた気がします」
と私が礼を言うと、レナード様はまた顔を赤くして、

「うん。これから……その……俺が大切にするから」
とゆっくりと私にそう言った。

「はい……」
私は嬉しくなって私の肩に置かれたレナード様の手にそっと触れて、そう答えた。

レナード様とはこれから仲良くやっていけそうだ。私は心からそう思えた。



レナード様と結婚して数日が経った頃、実家から手紙が届いた。

私が手紙を読んでいると、レナード様が後ろから私の肩に顔を乗せ、その手紙を覗き込む。

そんな様子にバーバラは緩んだ口元を隠す。……バーバラ……ニヤついてるのが、バレバレだわ。

「実家からか?」

「はい……ナタリーの婚約が……保留になったそうです」

「保留?」

「ええ……レナード様、肩が重いです」
私がそう言うとレナード様は口を尖らせて、渋々私の肩から顔を離すと、私をヒョイッと抱きあげて、自分の膝の上に乗せて、椅子に座り直した。

あれからレナード様は人が変わった様に、日に日に甘くなって、今では屋敷に居る間中、私にべったりだ。くすぐったい気持ちになるが、やっぱり嬉しい。

「何があった?」
相変わらずレナード様の言葉は少ない。あの湖の時はずいぶんと頑張ってお話をしてくれていた様だ。

「パトリック伯爵が反対している様です」
私はそう言って、私とハロルド様との婚約が決まった経緯を話した。

「……なるほど。伯爵が君を気に入っていたのか」


「気に入っていた……かどうかはわかりませんが、パトリック伯爵の決めた婚約であった事は間違いありません。勝手に婚約解消し、ナタリーを新たな婚約者にした事に、大層ご立腹らしいのです」

「……良かった。結婚を急いで」
レナード様はポツリと言うと、私はぎゅっと抱き締めた。

「ナタリーが癇癪を起こして、母も困っている様ですわ」
と私が手紙を読み終えれば、

「気になるか?」
とレナード様は私の顔を覗き込んだ。

「少し……。でももう私はこちらに嫁いできた身です。実家の事は……」
と私が言えば、

「実家と縁を切った訳ではない。帰りたい時はいつでも帰れば良い」
とレナード様は私の頭を撫でて、頬にキスをした。

……甘過ぎて溶けそうだ。そしてレナード様は続けて、

「その代わり、その時は俺も一緒に行く」
と言うレナード様に、

「騎士団はどうするのです?あと二ヶ月でお義父様は団長を退かれるのですよ?」
と私は答えた。そう、あと二ヶ月後にはレナード様がクレイグ辺境伯を継ぐ事になっている。

お義父様は『やっと隠居が出来る!毎日釣りや狩りをしてのんびり過ごすのが夢だった!』と早くもウキウキしていた。

レナード様はまだ二十四歳だが、団員からの信頼も厚い。お義父様は安心して引退出来ると喜んでいた。

「準備は出来ている。何ならその前に里帰りするか?」

「まだこちらに嫁いで、一週間程ですよ?もう里心がついたのかと、笑われてしまいますわ」

「伯爵の事も気になるだろう?」
とレナード様は私の気持ちを見透かした様にそう言った。
確かに父の事は気になる。手紙には、相変わらずだと書いてあったが……。

「そう言えば、兄が譲位する事に許可がおりたと。来週にもストーン伯爵となる様です」
と私が答えれば、

「ジュードも覚悟が出来ただろう」
とレナード様も頷いた。

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