家族に虐げられていた私は、嫌われ者の魔法使いに嫁ぐ事になりました。~旦那様はとっても不器用です~

初瀬 叶

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第95話

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「お金が目的ですか?」
と私が呆れたように言うと、

「そ、それもあるが…まずはロックハート夫人の誤解を解いてだな…」
としどろもどろになる父に、

「しっかりして下さい!ワーカー伯爵家の未来が掛かっているんですよ!」
と激を飛ばす継母。

それを冷めた目で見つめる私達。

…このまま居座られてもかなわないので、私は、

「ロックハート公爵夫人の件で、私が力になれる事はありません。
ローズやライラックの結婚についても、です。それと、育てて貰った恩…というものについてですが、母が生きていた時には確かに育てて頂いていたかもしれませんが、それ以降、私は使用人としてそちらの家で過ごして来ました。
何ならお給金も貰っていない、ただ働きの使用人として、です。その私に金を返せというのはあんまりです」
と率直に述べた。

まぁ…これで納得するかはわからないが。

「なんてこと!あんなに世話をしてやったと言うのに!」
とヒステリックに叫ぶ継母。

もう少し落ち着いて話が出来ないのだろうか?

何だか、この人達と話していると、気分が悪くなってきた。

そんな私の様子に直ぐに気づいたのは、メグだ。

素早く私の前に跪くと、

「奥様、大丈夫ですか?顔色が優れないようですが」
と心配そうに私の顔を覗き込む。

私は吐き気を覚えながら、口を手で塞ぐと、

「少し気分が悪いの」
とそう告げるのが精一杯だった。

それを聞いたロバートは、

「さぁ、もうお帰りになって下さい!
今日の事は旦那様に報告させて頂きますが、このバルト公爵家には2度と出入り出来ない覚悟をなさって下さいね!」
と言うと、2人を護衛に無理矢理連れて行かせた。

2人は何かを叫んでいたが、もう私の耳には入らない。

気分が悪い…。何か悪いものでも食べたかしら?



結局、私はその後嘔吐してしまったので、そのまま王都の屋敷でモーリス先生の診察を受ける事になった。

「ふむ…。アメリア様にお訊ねしますが…月の物は来ておりますか?」

最近、モーリス先生も忙しかったからか、そう言えば診察を受けるのも久しぶりだ。
私も夜会やお茶会、殿下のアレコレで忙しくて、それに気が回らなかった。

「…そういえば先月…無かったかもしれません。今月もまだ…」
そう答えながら私は自分が期待している事に気づいてしまう。
どうしよう…もしそうだったら嬉しい。

「妊娠している可能性は高いと思いますが、アメリア様は前に月の物が不順であった時期がありますので、もう少し様子を見ましょう。
といっても悪阻の症状も出ていますから、念のため今は安静に過ごして下さい」
というモーリス先生の言葉に、私は笑みが溢れた。

「わかりました。…まだ旦那様には言わないで下さい。確定してから…私からお話したいので」
と私が言えばモーリス先生は、

「まぁ…言わないでと言うのであればアメリア様に従いますけど…言わなきゃ言わないで厄介な気がしますけどね」
と少し眉を下げた。

「厄介?」

「ええ。多分アメリア様の体調が悪いことは既に連絡が…」
とモーリス先生が言いかけたその時、

「アメリア!大丈夫か?!」
と旦那様が勢いよく部屋へと飛び込んで来た。

私はびっくりして固まり、モーリス先生は

「ほら…居ても立ってもいられずに、もう帰ってきた…」
と旦那様を振り返りながら呟いた。

「旦那様…お仕事はもう終わったのですか?」
と訊ねる私に、

「そんな事はどうでも良い。体調が悪くなったと聞いた。
しかもあのワーカー伯爵夫妻が来ていたらしいな…それから具合が悪くなったのだろう?あいつらが何かしたんじゃないか?…いっその事…殺すか…」

最後に呟いた言葉が物騒過ぎて私は目を見開いた。

「別にそれとこれとは関係ありません。
父…いえ、ワーカー伯爵夫妻には何もされていませんよ?」

「だが、あいつらが来た時から体調が悪くなったんだろ?関係ないかどうか、調べなければわからないじゃないか。
とりあえず、あいつらは捕縛して地下牢にでも…」

私はさっきモーリス先生が言った『厄介』の意味を、ここに来て、ようやく理解した。
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