身代わり王妃の最後の100日間

初瀬 叶

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第41話

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「顔を上げて?せっかく話すなら目を見て話したいし」

私が庭師に声を掛けると、彼はこわごわ顔を上げた。彼と目が合う。私は感じが悪くならないようにと、少し微笑んでみせたのだが、何故か目の前の彼の顔は引き攣った。

「名前は?」
私の質問に彼は少し眉を顰めながら、

「ダ、ダリアでございます……」
と先ほど聞いた花の名前を答えた。

「あ~ごめん。貴方の名前を訊いたの」

「おれ……じゃない、私の名前でございますか?」

「そうよ。名前が分からないと話をする時不便でしょ?」
私の言葉に彼は目を白黒させながら、

「私はマークです……」
と消え入りそうな声でそう答えた。

マークという庭師に庭を案内して貰う。

「花って……色々な種類があるのね」

「季節によって見頃の花が変わりますので、庭の景色も変わります。春には春の、夏には夏の、秋には秋の。残念ながら冬に適した花は少ないですが、それでも冬には冬の。その都度、その都度の庭の表情を楽しむ事が出来ます」

マークは花や、庭の話をする時は饒舌になった。私との会話にも少し慣れてきてくれたようだ。

「そうなんだ……それは楽しみ」

「いくつかの花を切って部屋に飾りますか?」
マークの提案に、

「ううん。このままで良いわ。切ってしまうのは何だか勿体ないし。花を眺めたくなったら、また此処に来るから」
と私は首を横へ振った。

私はふと視線を感じ、後ろを振り向き、王宮の窓を見上げた。
そこは丁度私の部屋だった様で、マギーが窓から私を見ていた。……いや、見張っていた。

その様子に、

「妃陛下、そろそろ戻りましょうか」
とノアが私に声を掛けた。
部屋に戻れば不機嫌なマギーと顔を合わせなければならないが、私は決めたのだ。死ぬ時まで自分として生きたいと。

「そうね。良い運動になったし」
私はまた護衛の二人を引き連れて、部屋へと戻る事にした。


部屋へ帰った私にマギーは何か言いたそうにしていたが、結局何も言わずに、

「……お茶を淹れますね」
と言ってお茶を用意した。

私はそれを飲みながら、

「ここは別世界みたい。王国軍も反乱軍も関係ない別世界。使用人の皆は忙しそうにしているけれど、私の周りの時間だけがゆっくりになったようなそんな感覚だわ」

誰ともなくそう口にした。

「………そう言ってられるのも今のうちだけです。問題から目を逸らしても、結果は変わりません」

マギーもまるで独り言の様に、私には顔すら見せずにそう言った。



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