乙女ゲームに転生しましたが、パラ上げで心が折れそうです。

初瀬 叶

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文化祭・その②

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文化祭当日。
私は朝から執事になるべく着替えていた。
丈を詰めた裾は、私にはピッタリだ。
シャツは急だった為に自前。
ベストは少し長いが、まぁ許容範囲だろう。
私は肩下まである髪を纏める。
なんとなくピシッと髪を固めて、準備OKだ。男装の麗人とまではいかないが。

「花音、似合う~。いいじゃん」

髪を纏めるのを手伝ってくれた友達に褒められる。
…執事スタイルが似合ってても嬉しくない。

「まぁ、見られるようになったかな?では、頑張りますか!」

私は自分自身に気合いを入れた。

「坂崎さん。用意出来た?とりあえず午前中は俺たちの出番だから、頑張ろうね」

めちゃくちゃイケメン執事になった長谷川くんから声を掛けてもらう。
何気に、昨日で少し仲良くなった感じだ。今まで全く交流がなかったのに…これもヒロインの能力かな?

「うん。よろしくね」

執事カフェは、大盛況だった。
作ったチラシに長谷川くんの写真を使用した為か、女子で大にぎわいだ。

「おかえりなさいませ、お嬢様」

「キャー、カッコいい!」

こんな会話が何回も繰り返されている。

他のモブ執事も、なんとか頑張ってくれている。
メインヒーローじゃなくても、カッコいいよ!と私は心でエールを送る。

何故か、男装の私も人気だ。
お陰で全く期待してなかった男子の来店も増えてきた。

「おかえりなさいませ、お坊っちゃま」

「君、可愛いね。男装してても可愛さがわかっちゃうよ」

ナンパか?褒められるのは嬉しいが、さっさと席に座って欲しい。

そんな中、なんと本郷先輩が、うちのクラスのカフェに来てくれた!

「おかえりなさいませ、お坊っちゃま」

「坂崎さん。執事スタイル似合ってるよ」

あ~久しぶりの先輩!やっぱりカッコいい!

「ありがとうございます。席にご案内しますね」

本郷先輩の接客を他の執事に獲られる訳にはいかない。

「ご注文は何にいたしますか?」

「そうだなぁ。オススメは?」

「こちらの、チーズケーキのセットですかね」

本郷先輩は結構甘いもの好きだ。
ケーキセットを薦めてみる。

「じゃあ、それを。
森田が坂崎さんが頑張ってるから、行ってあげてって言ってたんだけど、来て良かった。
こんな可愛い執事さんが見れるなんてね」

「ふふっ。照れちゃいます。でも褒められると嬉しいです。ありがとうございます。じゃあ、直ぐにケーキセットお持ちしますね」

そう言って私はケーキセットを取りに行った。
……森田!ありがとう!

先輩は「美味しかったよ」と言って帰って行った。
初めて執事をして良かったと思えた。

昼になり長谷川くんから

「お疲れ様~。午後の奴らと交代しよう。俺たちは休憩に入ろうよ。坂崎さん、昼食は?」
と声が掛かる。

「あ、長谷川くんお疲れ様。私はお弁当持って来てる。長谷川くんは?」

「俺はパン。じゃあさ、一緒に食べようよ」

え?なんか、急に距離縮まった?

「うん。じゃあ、あっちの教室で座ろう」

私達はクラスを後にして、解放されてる空き教室で2人、昼食を食べる事にした。

「坂崎さんは、毎日お弁当?」
江梨子さんが毎日お弁当を作ってくれる。これがとても美味しいのだ。

「うん。祖母が作ってくれるの」

「…ちょっと聞いたんだけど…その…ご両親が…」

「うん。事故にあっちゃって。でも、お祖母ちゃんが良くしてくれるから」
私はあまり暗くならないように、明るく話す。

「そっか。ごめん。言いにくいこと言わせて」

「ううん。あんまり気を使われるのも嫌だから、気にしないで。
それより、長谷川くん、大人気だったね」

「はぁ~。正直疲れたよ。俺、あんまり女の子得意じゃないんだよね」
え?メインヒーローなのに?

「そうなの?凄くモテそうだけど」

「う~ん。好きな人にだけ、好きになってもらえたら良くない?皆に良い顔してモテてもしょうがないよ」

…ヒーローにはヒーローの悩みがあるのかな。ってか君の悩みは弟さんの事よね?私、ネタバレ読んだけど、モテすぎて困ってるなんて、書いてなかったよ?

「カッコいい人にはカッコいい人の悩みがあるんだね。長谷川くんには好きな人いるの?」

「いや、別に今は好きな人とかいないけど。他にやる事たくさんあって、女の子に時間割いてる暇もないかな」

乙女ゲームのヒーローの台詞とは思えない。

「私も、自分が好きな人に好きになってもらえたら良いって思うよ。
でも、それが難しいって言うか…。
相思相愛って、奇跡的じゃない?こんなにたくさんの人がいるんだもん。その中で、想いが通じ合うって、すごい確率だと思う」

攻略したい人と好感度を上げられない私には、今、痛感している事だ。

「確かにそうかもね。俺も好きな人出来たらそう思うのかな。
…って事は、坂崎さんって好きな人いるんだ?」

「え?なんで?」
私は慌てる。

「だって、実感籠ってたし。
好きな人の事、想ってるのかな?って」

「いや…別に…そんな事ないけど」
声がだんだん小さくなる

「ねぇ、それってさ。森田?」


はぁ?!なんでそこに森田が出てくるの?
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