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女は度胸
しおりを挟む1人残された生徒会室で、さっきの戸川先輩の勝ち誇ったような顔を思い出す。
「もう、決めた!先輩に彼女が居ようがどうでも良い!
なんなのあの顔。
あれは私への宣戦布告よね。
やってやろうじゃない!モブのくせに!ヒロイン舐めんなよ!」
私はいつの間にか大きくなった独り言を生徒会室に響かせた。
こうなったら、遠慮はしてられない。先輩の卒業まで後2ヶ月程しかない。
このままでは卒業後、先輩と絡む事は難しいだろう。
せめて、卒業してからも会う事が出来るくらいには仲を深めておかなければならない。
私は腐ってもヒロイン。モブに負けるなんてあり得ない。
私はその日から、先輩へメッセージを送るようになった。
きっとこの前の会話で私の事を『ベル』だと気がついたはずだ。
とりあえず、先輩とのメッセージは明るく振る舞い、『AKARI』とのやり取りで少し影を見せる。
名付けて『ギャップ萌え大作戦』
ダサいというクレームは受け付けない。
それと、敵を知らなければ戦えない。私は情報収集を始めた。
敵の名は『戸川 梓』
本郷先輩とは同じクラス。
今のところ先輩は東栄大学の法学部を受験する予定だ。
そして、あの戸川先輩も東栄大学の法学部を目指している才女らしい。
黒髪でストレートの長い髪。
所謂、クールビューティ系美女。
ヒロインの私とは、真逆な感じ。
性格はサバザバした姉御肌。友人も多い。
余談だが、私は自分で『私ってサバザバしてて、全然女らしくないの~。よく男っぽいって言われちゃう』って言う女を信用していない。
大体、そういう女はそうやって男に警戒心を持たせないようにしていると思う。あくまで私見だが。
ゲームのストーリーでは、先輩は一旦法学部へ行くものの、夢であった医学部を諦められない。
ヒロインである私との交流の中で、ヒロインに背中を押され医学部を再度目指すのだ。
戸川先輩が本郷先輩を好きな事は間違いない。
ここではっきりさせなければいけない事、それは本郷先輩の気持ちだ。
戸川先輩と付き合っているのか、付き合ってはいないが、両想いなのか。はたまた戸川先輩の片想いなのか。
もう逃げられない。本郷先輩に聞くしかない。女は度胸というじゃないか。
直接訊く?メッセージで訊く?
結局私は直接訊く勇気がなく、メッセージを送る事にした。
……度胸は母のお腹に忘れてきました。
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