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33話
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「とりあえず、これ以上遅くなる前に俺は宿屋に戻るよ。女将さんも心配してるだろうし」
「女将さんは無事かしら?近衛が嘘をつかれたと怒っていたけど」
「大丈夫だろ。近衛だって無闇矢鱈に関係ない人を捕まえたりする事はない」
そう言って少しサムはバツの悪そうな顔をした。
そう『関係ない人は捕まえたりしない』のだ。そう考えると私は関係者という事で間違いない。
「そんな顔をしないで。じゃあ、もう暗いから気を付けて帰ってね」
と私はサムを見送る。サムは少しだけ後ろ髪を引かれる様にしながら荷馬車へと乗り込んだ。
アイザックと二人、誰も居なくなった部屋に居ると、途端に心細くなった。
でも、そんな事は言っていられない。さて、何処へ行こう。
隣村はもう辺境伯の領地だ。その向こうはもう別の国。流石に国境を越えるのは赤ん坊を抱えては難しいだろう。ここは西の果て。東側に行くには王都を通らなければならないとなると、必然的に北か南に向かわなければならないという事だ。
私は幼い頃に勉強したこの国の地理を必死に思い出す。
「行くとしたら……南かしら?北へ向かうには山が多いし……。南なら観光地もあるから、また宿屋で働けないかな……。子連れでは厳しいかしらね」
今までの事を考えると、家を出てからの自分は恵まれていたのだと実感する。
「女将さんに出会えたのは、私の人生にとってとても大きかったわ………」
と呟いた私の頬に涙が伝う。
そんな私にアイザックは小さな両手を必死に伸ばして来た。
「なぁに?ザック。お母様を慰めようとしてくれているの?貴方は本当に不思議な子ね。どうしてそんなに私の気持ちが分かるのかしら?」
と私は直ぐに笑顔になる。するとアイザックもキャッキャッと声を上げて笑顔を見せた。
この子の為にも強くならねば。私はそう決心した。
翌日。
「女将さん?!宿屋はどうしたんです?」
と驚く私に、
「あんた、まさか私に会わずにこの村を去るつもりだったんじゃないだろうね?そんな事、あたしゃ許さないよ」
と答えになっていない答えを寄越す女将さんに詰められて、私はタジタジだ。
正直言って女将さんの顔を見たらこの村を出る決心が鈍る気がしていたので、女将さんには手紙を残して去るつもりだった。
女将さんには私の気持ちなんてお見通しだった様だ。
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そう言って少しサムはバツの悪そうな顔をした。
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と私はサムを見送る。サムは少しだけ後ろ髪を引かれる様にしながら荷馬車へと乗り込んだ。
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でも、そんな事は言っていられない。さて、何処へ行こう。
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女将さんには私の気持ちなんてお見通しだった様だ。
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