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69話
しおりを挟む「怪しい薬なので『絶対に』とは言えないけれど、先程伯爵が言った様に誰かと再婚して子どもを……と言うのは難しいように思います。で、ここから一つ提案です。親戚から養子を取っては如何でしょう」
と言う私の声が聞こえていない程のショックを受けている父はうわ言の様に、
「あ……あぁ、そうだな……」
と答えた。自分の言葉の意味すら分かっていないかもしれないけど、言質はとった。
「同意してくれて何より。では、私からはこの方を推薦しますわ。手続きを進めていただいてもよろしいかしら?」
「あぁ……へ?何だって?」
とやっと父は私が渡した書類から顔を上げた。
私はニコラス・ドイルの名前の書かれた書類をビロッと掲げて見せた。
「ドノバン伯爵家の為を思う伯爵の気持ちを汲んで、養子縁組についてはスムーズに進むよう配慮させていただきますね」
と私はにっこりして、後ろに控える護衛に、
「ドノバン伯爵はお帰りよ。ではドイル様の件は執事に話を通しておきますから」
と言って私は立ち上がった。
「お、おい!話は終わってない!く、薬の事をもっと詳しく……!」
という父を置き去りにして、私はその部屋を退出した。
……ミッション終了!!
そして息を付く間もなく……
「だから会いたくありませんってば!」
と私が口を尖らせると、陛下は私の顔を見て笑った。
「お前を虐めていた女共に復讐するチャンスだぞ?特に……ほら、名前はなんと言ったかな、何か派手な見た目の……」
「イライザですか?」
「あぁ、そうそうイライザ、イライザ。あの女なんて、媚薬まで使って俺とヤりたかったんだろ?今のお前の立場を知ったら、悔しがるんじゃないか?ん?」
「前々から思っていたんですけど、陛下って言葉が悪すぎませんか?それに、別にくやしがってもらわなくても大丈夫です。っていうか、私と陛下が結婚した事を……三人は知らない?」
「あぁ、お前の父親が面会にでも行けば知るチャンスはいくらでもあったと思うが、面会すら訪れていないみたいだぞ?薄情だよなぁ」
「……全くです。今回の養子の件だって陛下の予想通り……後妻を娶るとかどうとか言い始めて。私って……いや、私と母って、父にとって何だったんでしょうね」
と私がため息をつくと、陛下は私を抱き締めた。……抱き締められるのには慣れた。だって毎日抱き締められながら眠っているのだから。
そして陛下は、
「お前もアイザックも俺にとっては誰より大切だよ」
と言ってくれた。陛下からのこんな言葉も少しだけ素直に受け取れる様になった私が居た。
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