6 / 189
第6話
しおりを挟む
そしてもう1人、ムスカと紹介されたガタイの良い男性が、
「……ムスカです。外出の際には私が護衛としてお供いたします」
とぶっきらぼうにそう言った。もちろん笑顔はなしだ。
「護衛……ですか。私、今まで護衛など付いた事がなかったので……」
と私が戸惑いながら言うと、
「ご主人様を妬む者というのは一定数おりますので。このオーネット公爵に嫁ぐという事はそういう事なのです。ムスカは腕が立ちます。ご安心下さい」
とギルバートさんは淡々と説明した。
なるほど。『出る杭は打たれる』
お金持ちの名家も良い事をばかりではないのね……と私は納得した。
しかしまぁ……とんでもない所へと嫁いで来てしまったな……と、うっかり後悔しそうになる。
そうは思うが私には断るという選択肢はなかったのだ。甘んじて受け入れるしかない。
「わかりました。ではムスカ、これからよろしくお願いします」
と私はさっきのソニアと同じように挨拶し、その無表情の男性に微笑んだ。……まぁ、無反応ではあるが。
そして私はキョロキョロと辺りを見渡し、
「あの……オーネット公爵様にご挨拶をしたいのですが、どちらにいらっしゃいますか?」
とギルバートさんに尋ねてみるが、
「ご主人様はただいまオーネット領へとお戻りになっております。王都へのお帰りは明後日の予定。ですので、あとでこちらへサインをお願いします」
とギルバートさんは私に婚姻証明書を差し出した。
すでにそこにはオーネット公爵の名前は記入済みだ。そして何故か国王陛下のサインまで……。
私がそれを少し不思議そうに眺めていると、
「すでに陛下から婚姻の許可は得ております。後はステラ様のサインを頂き、大司祭へと提出するのみ。そうすれば、無事、結婚は成立です」
とギルバートはこれまた淡々と私に告げた。
まさしく用意周到だ。私はその大きな流れに飲まれて従うしかないのだろう。
確かに、仰々しい結婚式などしないと言われていたが、サインをするだけとは。
神の前で誓い合う事すらも無駄だと言うのだろうか?
私は驚きながらも、それを表情に出さぬ様に努めた。ここで反論したからといって何になるのだ。私もギルバートさんに倣って淡々と
「わかりました」
とだけ答える事にした。
ソニアが、
「さぁさぁ、こんな場所で長々と立ち話なんてするものではないですよ!
ステラ様。まずはステラ様のお部屋に案内いたしますね。長旅でお疲れになったでしょう?お着替えを済ませましたら、早速お夕食にいたしましょうね」
とその場の空気を切り替えるように手を叩いてそう言った。
正直、私もくたびれている。その上このギルバートという怖いおっさん。
私は天の助けとばかりに、ソニアへ向かって、
「お願い出来るかしら?」
と答えていた。
ソニアが
「では、こちらへ」
と私を先導するように前を歩いていく。
私はそれを追いかけながら、「はぁ~」と思わず溜め息をついてしまうのだった。
「……ムスカです。外出の際には私が護衛としてお供いたします」
とぶっきらぼうにそう言った。もちろん笑顔はなしだ。
「護衛……ですか。私、今まで護衛など付いた事がなかったので……」
と私が戸惑いながら言うと、
「ご主人様を妬む者というのは一定数おりますので。このオーネット公爵に嫁ぐという事はそういう事なのです。ムスカは腕が立ちます。ご安心下さい」
とギルバートさんは淡々と説明した。
なるほど。『出る杭は打たれる』
お金持ちの名家も良い事をばかりではないのね……と私は納得した。
しかしまぁ……とんでもない所へと嫁いで来てしまったな……と、うっかり後悔しそうになる。
そうは思うが私には断るという選択肢はなかったのだ。甘んじて受け入れるしかない。
「わかりました。ではムスカ、これからよろしくお願いします」
と私はさっきのソニアと同じように挨拶し、その無表情の男性に微笑んだ。……まぁ、無反応ではあるが。
そして私はキョロキョロと辺りを見渡し、
「あの……オーネット公爵様にご挨拶をしたいのですが、どちらにいらっしゃいますか?」
とギルバートさんに尋ねてみるが、
「ご主人様はただいまオーネット領へとお戻りになっております。王都へのお帰りは明後日の予定。ですので、あとでこちらへサインをお願いします」
とギルバートさんは私に婚姻証明書を差し出した。
すでにそこにはオーネット公爵の名前は記入済みだ。そして何故か国王陛下のサインまで……。
私がそれを少し不思議そうに眺めていると、
「すでに陛下から婚姻の許可は得ております。後はステラ様のサインを頂き、大司祭へと提出するのみ。そうすれば、無事、結婚は成立です」
とギルバートはこれまた淡々と私に告げた。
まさしく用意周到だ。私はその大きな流れに飲まれて従うしかないのだろう。
確かに、仰々しい結婚式などしないと言われていたが、サインをするだけとは。
神の前で誓い合う事すらも無駄だと言うのだろうか?
私は驚きながらも、それを表情に出さぬ様に努めた。ここで反論したからといって何になるのだ。私もギルバートさんに倣って淡々と
「わかりました」
とだけ答える事にした。
ソニアが、
「さぁさぁ、こんな場所で長々と立ち話なんてするものではないですよ!
ステラ様。まずはステラ様のお部屋に案内いたしますね。長旅でお疲れになったでしょう?お着替えを済ませましたら、早速お夕食にいたしましょうね」
とその場の空気を切り替えるように手を叩いてそう言った。
正直、私もくたびれている。その上このギルバートという怖いおっさん。
私は天の助けとばかりに、ソニアへ向かって、
「お願い出来るかしら?」
と答えていた。
ソニアが
「では、こちらへ」
と私を先導するように前を歩いていく。
私はそれを追いかけながら、「はぁ~」と思わず溜め息をついてしまうのだった。
379
あなたにおすすめの小説
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
【完結】優しいあなたに、さようなら。二人目の婚約者は、私を殺そうとしている冷血公爵様でした
ゆきのひ
恋愛
伯爵令嬢であるディアの婚約者は、整った容姿と優しい性格で評判だった。だが、いつからか彼は、婚約者であるディアを差し置き、最近知り合った男爵令嬢を優先するようになっていく。
彼と男爵令嬢の一線を越えた振る舞いに耐え切れなくなったディアは、婚約破棄を申し出る。
そして婚約破棄が成った後、新たな婚約者として紹介されたのは、魔物を残酷に狩ることで知られる冷血公爵。その名に恐れをなして何人もの令嬢が婚約を断ったと聞いたディアだが、ある理由からその婚約を承諾する。
しかし、公爵にもディアにも秘密があった。
その秘密のせいで、ディアは命の危機を感じることになったのだ……。
※本作は「小説家になろう」さん、カクヨムさんにも投稿しています
※表紙画像はAIで作成したものです
【完結】旦那様、その真実の愛とお幸せに
おのまとぺ
恋愛
「真実の愛を見つけてしまった。申し訳ないが、君とは離縁したい」
結婚三年目の祝いの席で、遅れて現れた夫アントンが放った第一声。レミリアは驚きつつも笑顔を作って夫を見上げる。
「承知いたしました、旦那様。その恋全力で応援します」
「え?」
驚愕するアントンをそのままに、レミリアは宣言通りに片想いのサポートのような真似を始める。呆然とする者、訝しむ者に見守られ、迫りつつある別れの日を二人はどういった形で迎えるのか。
◇真実の愛に目覚めた夫を支える妻の話
◇元サヤではありません
◇全56話完結予定
蔑ろにされた王妃と見限られた国王
奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています
国王陛下には愛する女性がいた。
彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。
私は、そんな陛下と結婚した。
国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。
でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。
そしてもう一つ。
私も陛下も知らないことがあった。
彼女のことを。彼女の正体を。
白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』
鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」
公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。
だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。
――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの?
何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。
しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。
それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。
そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。
温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。
そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。
「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」
「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」
離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。
そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。
選ばれたのは私ではなかった。ただそれだけ
暖夢 由
恋愛
【5月20日 90話完結】
5歳の時、母が亡くなった。
原因も治療法も不明の病と言われ、発症1年という早さで亡くなった。
そしてまだ5歳の私には母が必要ということで通例に習わず、1年の喪に服すことなく新しい母が連れて来られた。彼女の隣には不思議なことに父によく似た女の子が立っていた。私とあまり変わらないくらいの歳の彼女は私の2つ年上だという。
これからは姉と呼ぶようにと言われた。
そして、私が14歳の時、突然謎の病を発症した。
母と同じ原因も治療法も不明の病。母と同じ症状が出始めた時に、この病は遺伝だったのかもしれないと言われた。それは私が社交界デビューするはずの年だった。
私は社交界デビューすることは叶わず、そのまま治療することになった。
たまに調子がいい日もあるが、社交界に出席する予定の日には決まって体調を崩した。医者は緊張して体調を崩してしまうのだろうといった。
でも最近はグレン様が会いに来ると約束してくれた日にも必ず体調を崩すようになってしまった。それでも以前はグレン様が心配して、私の部屋で1時間ほど話をしてくれていたのに、最近はグレン様を姉が玄関で出迎え、2人で私の部屋に来て、挨拶だけして、2人でお茶をするからと消えていくようになった。
でもそれも私の体調のせい。私が体調さえ崩さなければ……
今では月の半分はベットで過ごさなければいけないほどになってしまった。
でもある日婚約者の裏切りに気づいてしまう。
私は耐えられなかった。
もうすべてに………
病が治る見込みだってないのに。
なんて滑稽なのだろう。
もういや……
誰からも愛されないのも
誰からも必要とされないのも
治らない病の為にずっとベッドで寝ていなければいけないのも。
気付けば私は家の外に出ていた。
元々病で外に出る事がない私には専属侍女などついていない。
特に今日は症状が重たく、朝からずっと吐いていた為、父も義母も私が部屋を出るなど夢にも思っていないのだろう。
私は死ぬ場所を探していたのかもしれない。家よりも少しでも幸せを感じて死にたいと。
これから出会う人がこれまでの生活を変えてくれるとも知らずに。
---------------------------------------------
※架空のお話です。
※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。
※現実世界とは異なりますのでご理解ください。
【完結】不誠実な旦那様、目が覚めたのでさよならです。
完菜
恋愛
王都の端にある森の中に、ひっそりと誰かから隠れるようにしてログハウスが建っていた。
そこには素朴な雰囲気を持つ女性リリーと、金髪で天使のように愛らしい子供、そして中年の女性の三人が暮らしている。この三人どうやら訳ありだ。
ある日リリーは、ケガをした男性を森で見つける。本当は困るのだが、見捨てることもできずに手当をするために自分の家に連れて行くことに……。
その日を境に、何も変わらない日常に少しの変化が生まれる。その森で暮らしていたリリーには、大好きな人から言われる「愛している」という言葉が全てだった。
しかし、あることがきっかけで一瞬にしてその言葉が恐ろしいものに変わってしまう。人を愛するって何なのか? 愛されるって何なのか? リリーが紆余曲折を経て辿り着く愛の形。(全50話)
愛されなかった公爵令嬢のやり直し
ましゅぺちーの
恋愛
オルレリアン王国の公爵令嬢セシリアは、誰からも愛されていなかった。
母は幼い頃に亡くなり、父である公爵には無視され、王宮の使用人達には憐れみの眼差しを向けられる。
婚約者であった王太子と結婚するが夫となった王太子には冷遇されていた。
そんなある日、セシリアは王太子が寵愛する愛妾を害したと疑われてしまう。
どうせ処刑されるならと、セシリアは王宮のバルコニーから身を投げる。
死ぬ寸前のセシリアは思う。
「一度でいいから誰かに愛されたかった。」と。
目が覚めた時、セシリアは12歳の頃に時間が巻き戻っていた。
セシリアは決意する。
「自分の幸せは自分でつかみ取る!」
幸せになるために奔走するセシリア。
だがそれと同時に父である公爵の、婚約者である王太子の、王太子の愛妾であった男爵令嬢の、驚くべき真実が次々と明らかになっていく。
小説家になろう様にも投稿しています。
タイトル変更しました!大幅改稿のため、一部非公開にしております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる