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第8話
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「大司祭様より婚姻証明書を受理したと返事が御座いました」
と朝食の席で執事のギルバートさんに告げられた。
「あぁ。そうですか」
昨夜、夕食後にサインをさせられた事を思い出す。
それを夜中に大司祭様へと届けたのだろうか?それって結構迷惑なのでは?と私は結婚した事実から目を反らすように、どうでも良い事を考えた。
「これでステラ様はオーネット公爵夫人となられましたので、今後はそれらしい振る舞いを心掛けて下さい。それと、今後は『奥様』とお呼びいたしますので」
とギルバートさんは淡々と簡潔に私にそう言った。
私はまた、
「あぁ。そうですか」
としか返せなかった。奥様かぁ……何か嫌だな。とは言わないけど。
私が部屋に戻ると、私のドレス姿を見たソニアから、
「すみません。奥様には少し……落ち着き過ぎですよね」
と謝られた。
私が今着ているドレスは、公爵家で用意された物だ。
私は何も持って来なくて良いと言われた手前、大きな荷物になる物は全て実家に置いてきた。数枚の下着と着替えだけを持って。
私は自分の姿を鏡に映す。いつもより質は良いが何とも地味なドレス姿の私がそこに居た。
(……元々顔が地味なんだけどな……)
と私はその姿を見ながらそう思った。
確かに適齢期は過ぎていたが私はまだ19歳。このドレスは些か落ち着き過ぎではないだろうか。
色も暗め、シンプルイズベストと言わんばかりに、装飾は最低限だ。
髪はダークブラウン、瞳は暗めの緑。そんな私を益々凡庸に見せるこのドレス。
両親と兄はこんな私を『可愛い』と言って憚らなかったが、姉達は『うーん。何となく地味なのよね。華がないって言うか。素材は悪くないと思うのに』と私を辛辣に、かつ的確に評価していた。姉妹とはそんなものだろう。同性の目は厳しい。
ちなみに姉2人は私より華やかで美人である事は付け加えておこう。
「公爵様がわざわざ御用意して下さった物ですもの。それに、とても仕立てが良いのが分かります。着心地が良いわ」
と私はなんとかこのドレスを褒める事に注力した。いや、嘘ではない。着心地は抜群だ。
「『公爵夫人として恥ずかしくない質の物を』と注文を受けまして、私が選んだんです」
というソニアに、私は
(ん?ならこれはソニアの趣味?)と思ったのだが、
「『かつシンプルで、華美でなく、落ち着いた装いを』と……」
というソニアの言葉に、
(ならこれを選ぶのは理解できるわ)と私は納得した。
と朝食の席で執事のギルバートさんに告げられた。
「あぁ。そうですか」
昨夜、夕食後にサインをさせられた事を思い出す。
それを夜中に大司祭様へと届けたのだろうか?それって結構迷惑なのでは?と私は結婚した事実から目を反らすように、どうでも良い事を考えた。
「これでステラ様はオーネット公爵夫人となられましたので、今後はそれらしい振る舞いを心掛けて下さい。それと、今後は『奥様』とお呼びいたしますので」
とギルバートさんは淡々と簡潔に私にそう言った。
私はまた、
「あぁ。そうですか」
としか返せなかった。奥様かぁ……何か嫌だな。とは言わないけど。
私が部屋に戻ると、私のドレス姿を見たソニアから、
「すみません。奥様には少し……落ち着き過ぎですよね」
と謝られた。
私が今着ているドレスは、公爵家で用意された物だ。
私は何も持って来なくて良いと言われた手前、大きな荷物になる物は全て実家に置いてきた。数枚の下着と着替えだけを持って。
私は自分の姿を鏡に映す。いつもより質は良いが何とも地味なドレス姿の私がそこに居た。
(……元々顔が地味なんだけどな……)
と私はその姿を見ながらそう思った。
確かに適齢期は過ぎていたが私はまだ19歳。このドレスは些か落ち着き過ぎではないだろうか。
色も暗め、シンプルイズベストと言わんばかりに、装飾は最低限だ。
髪はダークブラウン、瞳は暗めの緑。そんな私を益々凡庸に見せるこのドレス。
両親と兄はこんな私を『可愛い』と言って憚らなかったが、姉達は『うーん。何となく地味なのよね。華がないって言うか。素材は悪くないと思うのに』と私を辛辣に、かつ的確に評価していた。姉妹とはそんなものだろう。同性の目は厳しい。
ちなみに姉2人は私より華やかで美人である事は付け加えておこう。
「公爵様がわざわざ御用意して下さった物ですもの。それに、とても仕立てが良いのが分かります。着心地が良いわ」
と私はなんとかこのドレスを褒める事に注力した。いや、嘘ではない。着心地は抜群だ。
「『公爵夫人として恥ずかしくない質の物を』と注文を受けまして、私が選んだんです」
というソニアに、私は
(ん?ならこれはソニアの趣味?)と思ったのだが、
「『かつシンプルで、華美でなく、落ち着いた装いを』と……」
というソニアの言葉に、
(ならこれを選ぶのは理解できるわ)と私は納得した。
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