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第48話
しおりを挟む「アーロン、客間を用意して」
私の後ろで控えていたアーロンは
「は?奥様、それは……!」
「いいの。彼女達は私の……実家でお世話になっていたメイドとご子息という事にしましょう。やむを得ない事情でこの屋敷に来てもらった事に……」
という私達の会話に、アイリスさんは割って入る。
「え?客間はステラさんがお使いなのでしょう?だってディーンはそう言ってたわ。公爵夫人の部屋は使わせないって。なら、私がその公爵夫人のお部屋を使わせて貰うのはどうかしら?ディーンだって私が使う方が喜ぶと思うもの」
とこれまた可愛らしく微笑んだ。
この公爵家は広い。客間ぐらい腐る程ある。別に私が客間をこの8年使っているからといって、他の客間がない訳でも、だからといって、公爵夫人用の部屋を客人に使わせる程困ってもいないのだ。
アーロンは思わず、
「先程から黙ってきいていれば!奥様に失礼な事ばかり……!」
とアイリスさんに強い口調で詰め寄る。
すると、
「そ、そんな……そんなつもりはなかったんです。ごめんなさい!」
とその綺麗な青い瞳にみるみる涙が溜まっていった。
今回は嘘泣きではないようだ。
「泣かれても……!」
とアーロンは今だ怒りを抑えきれずにいた。
「アイリスさん。確かに夫人の部屋を私は使っていません。きっと公爵様も貴女に使って貰えば本望でしょうけど、それではこの家の者達に示しがつきません。そこは理解して下さい」
と私は静かに言った。
公爵様があの部屋に私を入れなかった理由は目の前の彼女の為だろう事は容易に想像が出来る。だからといってあの部屋を『どうぞ、どうぞ』と使わせる事が出来ない事ぐらい馬鹿でも分かるだろうに。
すると、今まで黙っていたテオドール様が、
「俺は離れでも良いよ。公爵夫人の言う通りに」
と眼鏡を外しながら言った。
きっとあの眼鏡では前が見えにくいのだろう。彼の眉間のシワの理由が少しだけ理解出来た。
私は、
「では……お2人には客間を用意させていただきます。お2人は別々のお部屋で?」
とテオドール様の言葉に甘える事にした。
テオドール様がすかさず、
「この人とは別々の部屋にして貰えるとありがたい」
と言葉少なにそう言うと、アイリスさんは顔をしかめて、
「母親の事を『この人』なんて呼ばないで」
と不快そうにそう言った。
……この2人、何かあるのかしら?
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