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第67話
しおりを挟む「私?」
驚いて聞き返してしまった。
「……はい。あの人が不機嫌そうに貴女の事を言う度に、俺も貴女に興味が湧いてきて。
でも、此処に厄介になる事には反対してました。貴女に迷惑をかけるのは間違ってるって思ったから。それに……貴女は公爵様の奥様だ。俺達の存在は貴女にとって……不快だと思ってたから」
「テオは……アイリスさんの事をどう思ってるの?」
私はずっと疑問だったテオの気持ちを尋ねてみた。
「……ずっと苦手だった。小さな頃から『あなたは次期オーネット公爵だ』と言われて育ったけど、俺はそんなものに興味はなかったし。普通の家庭が良かった。お父さんとお母さんがいて、裕福でなくても笑い合えるそんな家で育ちたかった」
「……誰だって憧れるものはあるでしょうね。でも人は自分の持ってないものを望むものなの。両親が揃っていないなら、両親を。お金がないならお金を。権力がないなら、権力を。人は出来ない事を数えるわ。そして出来る事には目もくれない。欲深い生き物なのよ。でもそれが人間だもの」
「……俺は間違ってる?」
「いいえ。間違ってない。でも貴方が望まなくても、このオーネット公爵家を継ぐのは貴方よ。子どもは親を選べないわ。不公平かもしれないけど、それも運命と思って諦めて。
そうだ!こう考えるのはどう?きっと貴族の裕福さに憧れる平民もいるでしょう。逆に平民の自由さに憧れる貴族も。貴方はその両方を経験できるのよ?得だと思わない?」
私はそう言って微笑んだ。
アイリスさんはきっと、テオにプレッシャーを与え続けていたのだろう。その割りに教育の機会は奪っていたように思うのだが。
「得……か」
「そう。『発想の転換』ってやつね」
「でも……俺って誰の背中を追えば良いのかな」
公爵様はどうも父親としては失格だったようだし、アイリスさんも……テオの話を聞く限りでは少し頼りない背中だ。
「なら……私の背中はどうかしら?」
「え?ステラ様の?」
「そう!女だけど、結構逞しいでしょう?」
と私がおどけて見せれば、
「ほんとだ」
とテオは微笑んだ。……初めて見たテオの笑顔かもしれない。貴重だ。
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