お飾り公爵夫人の憂鬱

初瀬 叶

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第82話

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「流石、ステラ様ですわ」

私がポール・ダンカンの絵が手に入った事を知らせると、パトリシア様は花が咲いた様な笑顔で喜んだ。

お茶を飲みながら、私は話を続ける。

「画商がアンプロ王国まで足を運んで探してくれたお陰です。私は執務室でふんぞり返っていただけですもの」
と私が笑えば、

「ステラ様はお忙しい身であるのに……本当にありがとうございました」
とパトリシア様は私に礼を言った。

「まだ、こちらに絵画自体届いてはいないのですが、実は額縁がかなり傷んでいるようでして。きちんと贈り物として相応しい様に準備してから、パトリシア様にはお渡しいたしますわ」

「何から何までありがとうございます。王太后様もお喜びになると思うわ」

「しかし……前国王陛下がお亡くなりになって……もう15年も経つのですね」
と私が言えば、

「ええ。陛下は若くしてこの国の王になり……最初はとても苦労をしたのだと、妃陛下から聞いた事があります。
今はまだ陛下もご健在でいらっしゃるから、殿下にはその苦労は必要ないかもしれませんが。
実は……陛下が1番苦労したのは、オーネット公爵家との関係改善であったと……そう仰っておいででしたの」

「うち……ですか?」

「ええ。ステラ様の前でこんな事を言うのは不躾かもしれませんが…オーネット公爵家と王家との関係は本当に絶妙なバランスで保たれております。
どちらかがどちらかを御そうとすれば、そのバランスはいとも簡単に崩れてしまいかねません。
前国王陛下と前公爵との間柄はあまり良い関係だと言えなかった……そう聞いた事は御座いますか?」

それはギルバートから少し聞いた事がある。

「ええ。あまり詳しくは知りませんが」

「それを今の陛下は良い関係に導いた。オーネット公爵家と良好な関係を保つ事は王家にとっても重要なんです。
……ですから、私がこうしてステラ様と仲良くさせて頂いている事を両陛下共に、とても評価して下さっていて……。
あ!ステラ様、勘違いしないで下さいませ!私がステラ様と仲良くしているのは、私がステラ様を大好きなのであって、誰かから褒められたいからではありません!!」
と少し慌てるパトリシア様が可愛らしい。

それに……今の国王陛下がオーネット公爵家との関係を良好に保てているのは、公爵様の弱みである、アイリスさんとテオの事を陛下が知っているからだ。まぁ、ある意味、信頼関係があった事は伺えるが。

「安心して下さいませ。パトリシア様のお気持ちは良くわかっております。
確かに我がオーネット公爵家は強い力を持っておりますが、私は単なる繋ぎ。
私と仲良くしていた所でそんなに利益にはなりませんもの」
と私は笑った。

私はテオに公爵を継がせるまでの繋ぎ。単なる代理でしかない。テオが公爵になれば、『前公爵夫人』に名前が変わるだけの存在だ。
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