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第106話
しおりを挟む「ステラ、貴女なんて顔をしてるの?
大丈夫よ。カルロスはちゃーんと前国王の血を継いでいるわ。安心してちょうだい。
私の身を案じた人が手紙をくれてね。不妊にはストレスも良くないからと。
きっと私がアンプロを想ってホームシックに陥っていると思ったのね。……ちょっと待ってて」
と王太后様は席を立つ。
私はその背中を見送って、そっと息を吐き出した。
良かった~!!!現国王陛下が『実は旦那の子じゃないの』なんて言う秘密の暴露じゃなくて、本当に良かった!
そんな秘密を知った日には、重すぎて沈む。いや、物理的にも海か湖に沈められそうだ。
背後を気にしながら生きていくのは辛すぎる。
暫くすると、王太后様は小さな額に入った絵を持ってきた。その絵のタッチはどこか見覚えがある。
王太后様が持つ絵画の額縁にしては……些か安っぽいが、彼女はそれを私に見せながら額縁の裏側をそっと開く。その絵の裏には古くなって少し黄ばんだ手紙が入っていた。
王太后様はその古くなった手紙を大事そうに封筒から取り出すと、私に渡した。
「……私が読んでもよろしいのですか?」
「ええ。あの絵を探しだしてくれたお礼よ」
と言って王太后様は微笑んだ。
私は慎重にその手紙を開く。
『リシュナへ
きっと泣き虫な君の事だから、祖国を懐かしんでいる頃だろう。
王妃になった君の為に僕が出来る事は余りにも少なくて申し訳ない。
僕の唯一の取り柄である絵を贈るよ。
これを見て少しでも元気になってくれる事を祈ってる。
君は大丈夫。君は神様からの贈り物だから。僕がそれを保証するよ。
……負けないでくれ。 愛してる。 ポール』
私は手紙の最後に書かれたサインに目を奪われた。……この字は……。
私が手紙から顔を上げると、それを愛しそうに見つめる王太后様と目が合った。
「貴女が考えている通り。その手紙の主の名前はポール・ダンカン。彼は私の……許婚だったの」
そう言った王太后様は少し寂しそうな顔をした。
「許婚……婚約者だった……と言う事ですね」
「彼は元々サーリセル公爵家の嫡男でね。私の嫁ぎ先の候補だったの。候補って言い方で分かる通り、公式な決定ではなかったけれど、私と彼は自分達が夫婦になれると…そう信じていたの。2人で誓ったのよ『共に生涯支え合っていこう』と」
そう言った王太后様はとても遠くを見ている様だった。
彼女の心はアンプロ王国の……この小さな絵に描かれた場所に未だ残されたままだったのだと私は嫌でも理解してしまった。
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